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ハーレム崩壊、十二年後  作者: 風祭 憲悟@元放送作家
第三章 ヤンデレ魔女のやり直し 間違えました、で済む話では無いのだが。

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第135話 お城の庭で訓練 勇者vs剣聖vs剣士vsおいおいそれは反則だろう

「はっ、はあっ!!」

「そうだ、懐かしいなヨラン、その切り返し」

「ラスロも昔より、熟練度が段違いではないか!」


 例によって魔法組が封印の打ち合わせに行った後、

 俺は王城の庭でヨランと剣を交えて特訓をしていた、

 ラグラジュ大森林に備えて……今回は奥の方まで行く予定だ。


(どんな敵が出て来るか、わからないからな)


 そう、昆虫も、魔物も。


「では、これはどうだ!」

「うおっ、その角度からの(ひるがえ)しは珍しい!」

「ロズリとの戦いで身に着けた、学習させて貰ったものだ」


 それを見て、

 剣を持っていない方を腰にあて、

 ふうっ、と大きくため息をついたロズリ。


「勝手にコピーしただけですよね、私に勝てないからって」

「模擬戦で、稽古で学ばせて貰っただけだ、剣聖に教えているんだ、誇れ!」

「私はラスロ様に褒められるのが一番うれしいです、次は私と、お手合せを」


 俺はヨランと礼をしあって、

 今度はロズリと向かい合う。


「よし、好きにかかってこい」

「お願い致します、とあーーっ!!」


 うん、若い、

 これは戦いで肌を合わせた感覚だが、

 いかにも全てが若さの良い部分と悪い部分で出来ている。


(いやほんと、これは今後の成長が楽しみだ)


 なにせ若いがゆえに、

 悪い所は直して良い所は伸ばせられる、

 俺やヨランみたいに良くも悪くも一度『行き着いてしまった』人間にとっては、ある意味でうらやましい。


「今の打ち込みは中途半端だな!」

「うっ、場所を迷いましたが、どっちに来られても良いように」

「そういうのは二択なら良いが、もし下から来られたらどうする!」「あうっ!!」


 やはり若い騎士団員は、

 与えられた修練の延長線上でしか戦えない、

 そうなると対魔物といった、本当の意味で何をしでかしてくるかわからない相手だと……!!


「ではこれはっ!!」

「うおっ、なんだその剣のずらし方は!」

「最新の剣術です、対人には効果大ですよっ!!」


 とはいえ小手先の誤魔化しだ、

 もちろん目くらましやワンクッションとしては使えるが、

 ここ一番で使うには、このままでは……ただ応用もおそらく多種多様。


(若いと本当に、可能性は無限大だ)


 なんだろう、模擬戦なのに面白れえ。


「……よし、わかった」「ヨラン?!」

「ラスロ交代だ、私とロズリで決闘だ」

「再戦ですか?」「……決闘方式の訓練だ」


 まあ、一度すでに俺を賭けて負けたからね、

 次ヨランが勝てばあの負けは取り消し、だなんて都合の良いことは言えないだろう、

 だったら前の負けを清算してからみたいな話になるし、連敗したらそれこそ取り返しがつかなくなる。


(俺とヨランも互いに礼、と)


 そして今度は俺とロズリが入れ代わる。


「どうぞ先輩、お先にお仕掛け下さい」

「では……はーーーーっっ!!」「その出所は読めますよ」

「しかし手数で勝負ならどうだ!」「持久戦なら体力が上のこちらが……ううっっ?!」

「何も体力の削り合いとばかりは限らぬ、全体を疲れさせるのではなくな、これならば……」


 ロズリの剣を叩き続けるヨラン、

 これは痺れさせて剣を落とさせる作戦か、

 こうなると斬り合いではなく叩きあいだな、さてどうなるか……?!


(熟練度と若さの戦い、その結果はいかに?!)


 とはいえ俺も傍観していないで、

 俺と戦う時に備えて両方の分析、対策を……


「あら、面白い事をシテるわね、アタシも混ぜてよ」「「「?!?!?!」」」


 その声に一斉に目を向ける俺たち、

 王城の庭から生えてきているのは……

 ラミアのナルガだ、上半身がこっちを見ている。


「おいおいおい、良いのかナルガ!!」

「地下から勝手口を作ってたら、ここに出ちゃったわ」

「掘る許可とか得てないだろう」「勝手口って勝手に作って良いのではなくて?」「お前なあ……それは反則だろう」


 これには決闘という名の模擬戦も中断だ。


「ここの湖は大して大きな魚が居なくてね、

 ドリアードが大森林とやらで大きな獲物を定期的に持ってきてくれているのさ、

 それが届くのを待っている間が暇でね、動いてお腹を空かせれば何でも美味しいのさ」


 そういや王都から毎日、

 結構大きな家畜を丸ごと一匹貰ってるらしいが、

 それでも全然足りないんだろうな、魔界での大食いは凄まじかった。


(いや、逆に喰わなくても長期間持つんだが、辛いは辛い訳で)


 タフ過ぎるのも困りものだ。

 とか思っていると大きな剣を二本、

 両手に持って構えた、いよいよ本当に対戦するつもりのようだ。


「さあ、どっからでもかかって来るといいさ、

 ハンディとしてここから動かないよ、まとめて来な!」

「ラスロ、どうする」「ラスロ様」「行くしかないだろう」


 模擬戦とはいえ、

 今や魔王クラスと言って良いナルガとの対決、

 このチャンスを逃す訳にはいかない、フォーメーションを決めて……


(俺の左右にヨランとロズリ、そして先に行かせて挟み撃ちの間に中央突破だ!)


 よし、俺の剣の振りを合図に二人が走った!!


「「でえやあああああ!!」」


 そして遅れて俺もナルガへ向かう!


「いくぞーーーー!!!」


 しかし、進んだその先に待っていたのは……!!


 ドザザザザザーーーーッッ!!!


「うあっ!」「きゃあっ?」「おうっっ!!」


 地中から転がって来た、

 長くて大きなナルガの尻尾!

 それがまずヨランとロズリを払い、その返しで俺を吹っ飛ばした!!


「あらあら、アタシはまだ剣を振ってすらいないさね」

「ひ、卑怯だ、反則だぞナルガ!」「本番に反則もないさ、訓練なら尚更ね」


 ……うん、どうやら俺は平和ボケしている場合じゃ無いらしい。


「ヨラン、ロズリ、再び行くぞ!」「はいっっ!!」


 こうして剣の特訓は、

 ドリアードがナルガに巨大な焼きトンボを持って来るまで続いたのであった。

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