第131話 陛下に意外な場所で報告 さすがに顔が引きつっているようで
「そうか、報告はわかった、よーーくわかった」
「はっ、少し時間を頂いた後、ラグラジュ大森林の再封印へ向かいます」
「うむ、それも期待しておる、皆の者、平和のために封印の維持、頼んだぞ」
その言葉に声を揃える俺たち。
「「「「「「「「「ははっっっっっっっっっ」」」」」」」」」
ただし、人間だけだ、
俺と新旧ハーレムの九人。
(その後ろに余計なのが……いや、そんなこと言ってはいけない)
最後方で高みの見物をしている魔物達が。
「相変わらず強そうには見えない王ね、魔力も感じないわ」
「それはそうとお腹空いたわ、何でも良いから焼いてちょうだい」
うん、アストもナルガも背が高いからな、
おまけにずらりと並んで取り囲んでいるのは……
「ソレヨリココハツチガアマリヨクナイ」
「イッソスベテ、ホリオコシテヤロウカ」
「ヨイカンガエダ、ニンゲンヲイキタママウメルト、サラニヨイゾ」
おいおい物騒な事言うなドリアード達は!
「その、陛下、魔物の冗談を真に受けないでいただければ」
「そ、そうであるな、ここは笑っておいた方が良いか?」「いえ無理には」
普通に顔が引きつっているな国王陛下、
それもそのはず、ここはアスト城の広間だ、
いや王城に魔物を入れるなって話だから逆に陛下に来て貰うしか無いだろう!
(そのせいでアストもナルガも、上から目線だ)
いや顔の位置とかの話じゃなくて!
……まあ一応、陛下としては『俺が飼ってる魔物』扱いらしいから、
なんだかよくわからない、人語に似た鳴き声でも発していると思って貰おう。
「ところでラスロよ」「ははっ」
「エルフの国から要請が来ている、
なんでも森のマザーツリーを全て治して欲しいそうだ」
いや俺を真っ直ぐ見て言われても!
あくまでもアストは、飾りというかペット扱いか。
「その、えっと、もう少し、打ち合わせを」
「先方は急いで欲しいそうだ、ラグラジュ大森林のついでに行ってくれぬか」
「は、ははっ、陛下のご命令とあらば」「よし決まりだな、安心した、では早速、使いを出そう」
あーあーあー、
良いのか俺は!
安請け合い所の話じゃないぞ。
「では失礼する、エルフ王には『近日中に』と伝えておくからな!」
「ははーーーっっ」「ねえラスロ、近日中っていつなの?」「アタシの知識だと『二、三日後』だけど」
そそくさと衛兵に護られ出て行く陛下、
元騎士団員のヨランとロズリが丁寧に外までお見送り、
さあさあさあ、いよいよ追い詰められてきたぞ、二重の意味で!
「ラスロ嬉しいわ、抱きしめさせて」
「いやエミリ、まあこれはだな、そのなんだ」
「私を働かせる以上は、きちんと婚姻を詰めてくれるのでしょうね」「アスト、まあそれはだな」
ええっと、おさらいするとだな、
エルフ国の要請によりマザーツリーとやらを四十何本だっけ?
治療する事によって、正式にエミリは俺の婚約者へと取り戻せる。
(いや、戻すってまだ決めてないぞ!)
そして治療にはアストの魔力が必要であり、
俺が頼めば、もっと言えば命令してしまえば、
手間暇かかってもドリアード達と一緒にやってしまうだろう。
(ただし、もちろんそれ相応の対価というかなんというか)
そもそも俺は人間の婚約者が居て、
しかも旧ハーレム新ハーレムで揺れ動いてるんだ、
利用するだけして捨てたら新旧ハーレム全員が植物にされかねない。
「えっと、まず世界を平和にするには、魔界ゲートを閉じ切るには、
世界中の協力が必要だ、よってエルフの国にも顔を利かせておく必要がある」
「長々とした言い訳は良いわ、やってあげる、そのかわりラスロ」「全てが終わったら、話を詰めよう」
やべえ、変な汗が止まらねえ。
「じゃあラスロ、アタシの方は」
「そういえばナルガはどこに住むんだ、ってここだよな」
「地下を掘らせて貰うわ、どう? 一緒に寝ない?」「魔界で会ったばかりの頃じゃあるまいし」
でも実際に助かった、
地下でナルガに包まれて眠れば、
人間の匂いとか気配とか漏れなかったらしい。
「ならラスロ、今夜は一晩中、抱きしめさせて」
「すまないエミリ、今夜は順番ではグラナダ公爵家だ、
あそこもあそこで報告しないといけないからな、色々と」
……今夜は眠れない夜になりそうだ。
(いや、変な意味じゃないぞ!)




