第130話 そして夢を見た 魔界での、あの第三の仲間いや仲魔を。
「……ラ……スロ……ラス……ロ……」
聞き覚えのある声、
もはや懐かしい、これは……!!
「リムリア? リムリアなのか?!」
「やっと、やっと逢えたわ……嬉しいっ」
「だから勝手に夢に入ってくるなと」「夢魔に何を言っているのよ」
目の前に浮かんでいるのは、
俺と魔界で一緒に戦ってくれた、
仲間の、いや仲魔だった、サキュバスのリムリアだ、相変わらず紅いセクシーな衣装。
「そうか、アストとナルガが揃ったから、それを媒介に」
「ええ、ただ人間界相手だからそこまで意識に侵入できる訳じゃないわ」
確かに良く見ると透けている、
いや服がじゃなく全身がだけど!
「あら、また夢の中でシタくなった?」
「やめてくれ、俺はこっちに婚約者が居てだな」
「そうね、解決するまで直接はナシって約束だったものね」
そう、サキュバス相手に直接やれば、
最悪死ぬし生きていても中毒になりかねない、
そのあたりのさじ加減はリムリアの方で、ある程度は出来るらしいが。
「七十三回よ」「うっ」
「私が、いえ、私達サキュバスやインキュバスが魔界でラスロに手を貸した、
その分の代金よ、終わったら全部、回数で返すって約束」「まだ終わってねえよ」
そういうことにしないと、俺が終わる。
「夢魔軍相手に逃げ切れるとでも?」
「逃げるとか、そういうつもりでは……」
「確かに魔界から人間界へはなかなか手は出せないわ、そう、魔界からはね」
恐ろしい笑みを浮かべるリムリア。
「まさか、リムリアまでこっちに」
「早く終わらせてこっちへいらっしゃい、
支払いを済ませれば自由にしてア・ゲ・ル」
……それがタチが悪いんだがな、
自由にすると言っても、俺が離れたく無いってなったら……
それだけの事を夢魔は、サキュバスはやろうと思えば、出来る。
「騙すつもりも逃げるつもりも無い、
ただ事情が変わった、また魔界から攻められようとしている」
「私達の力をまた使いたいなら、一度清算して貰うわ」「もちろん」
あっ、リムリアの身体が更に透明に!
「……このあたりが限界みたいね、
ラスロ、魔界へ戻ってらっしゃい、
人間界へは『一旦戻る』って約束だったでしょう……」
返事をしようと思ったら、もう姿が消えた。
「……ああ、すまない、リムリア、なにせリムリアは今、カミラを……」
「カミラが目覚める前にね、貴方が人間界へ戻るために、犠牲になったのだから……」
その声だけ残し、
リムリアは俺の夢から去って行ったようだ、
そして目が覚めると……天窓から眩しい光が差し込んでいた。
「ラスロおはよう、丁度到着の頃合いよ」
「ふむ、リムリアの匂いがするな、やはり来たか」
「来たかったて、アストとナルガが俺を挟んで眠らせたのって、リムリアに会わせるためだろう」
到着に備えて着替える俺、
わざわざアストが着替えを腕の枝にかけて、
渡してきてくれたからな……ナルガも水を持ってきてくれた。
「……ぷはあ、ありがとう」
「で、アタシはその大森林で再封印の手伝いをすれば良いんだね?」
「ああ、ドリアード達の話によれば、一筋縄では行かないらしいからな」「着いたわよ」
アストの声と共に、
天窓が開けられ外へと出される俺、
長い長い伸びたアストの腕、枝で地面へ着地、と。
「「「「「「「おかえりなさーーーい」」」」」」」
ネリィの子供達が並んでお出迎え、
ってここアスト城の前か、そして肝心の親は、
まずアリナとミオス、続いてヨランとロズリが降りて、エミリとナタリも……
(あっ、ハミィが引っ張ってきた!)
そして放り出されるようにネリィが。
「ママ!」「ママ―!!」「お母様!!」
「ネリィお母さん!」「寂しかったー」「ママだママだ」「まま……」
あっというまに取り囲まれてしまった。
「えと、その、戻ってきました、はい」
何とも言えない表情というか、
まだ困ったり戸惑ったりといった感じのネリィ、
ただ、子供達は本当に、もうこの母親しか頼る相手が居ない感じだ。
「ネリィ、今夜はこの子達と居てあげてくれ」
「でも、しかし、このネリィめはあああァァァ」
「とりあえずはみんなで国王陛下へ報告だ、子供達を落ち着かせて」
あっ、ナルガが降ろされてきた!
「人間の王と面会かい? 楽しみだねえ」
会う気満々だよ……さて、どうしようか。
二年半連載した『草食勇者と淫乱バーサーカー』
ついに完結しました、まだ読んでいらっしゃらない方は是非!!




