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ハーレム崩壊、十二年後  作者: 風祭 憲悟@元放送作家
第三章 ヤンデレ魔女のやり直し 間違えました、で済む話では無いのだが。

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第127話【ナルガ回想】突然、魔界に現れた人間 共同作業でお互い助かった末に

「くそっ、まったく迷惑な話だわ、魔界で戦争だなんて……」


 我々ラミア族は過去にない魔族同士の大戦争の中、

 数を減らしながら各自、穴を掘って潜んでいた……我々は攻撃力が強い、

 ただ防御となると弱い、幸いにも生命力、タフさといった所はしぶといと言われているが……


(もうどのくらい、穴に籠っているのか……)


 初めは群れで行動していたものの、

 他の魔物との戦闘で別れたり、数を減らしたり、

 追われたりして気が付けば私はいま、単独で潜んでいる……。


(腹が減った、水だけは奥で流れているが)


 上からの穴は崩れて塞がり、

 横穴は崖だ、さすがにこの高さは助からない、

 いかにラミアといえど崖を這うとドラゴンに見つかり捕食される。


「……途中でドラゴンの卵を喰った、バチが当たったかしらね」


 そう言いながら外の様子を見ようと這っていると、

 前方から何かが転がってきた、こっ、これは……人間か?!


「ぐあっ!!」


 アタシの胸に飛び込んできたそれに、

 あまりの衝撃に私はうめき声を漏らした!

 見ると血だらけだが、意識はあるようだ……私を見上げる人間。


「ううう……済まない、ってラミアか!」

「人間か、どうした、まさか餌になりに来たのではあるまい」

「ドラゴンと闘っていて、その、親玉みたいな奴と相討ちになって、飛ばされた」


 ボロボロになりながらも、

 私の胸に甘える人間……ひょっとして、もう死ぬのか?!


「助からないのか」

「いやその、なんとなく人恋しくてだな」

「人では無いぞ」「そ、それより喉が渇いた」「水場なら奥だ」


 がぶがぶ飲む人間の男、

 種族としては知っているし、

 他の魔物が死体を持ち帰ったのを見たが、生きているのを見るのは初めてだ。


(……美味しそうだ、だが……)


 ここで空腹を満たすのも良いが、

 話が通じる相手のようなので聞いてみる。


「改めて聞く、どうしてこんな所へ」

「魔王に引きずり込まれたんだ、もうかれこれ、

 何年ここで生きているか、何より元の世界へ戻れるのか……」


 聞くとこの魔界で一番強かったであろう魔王が、

 人間界も征服に乗り出したもののかなり押し込まれ、

 結局、この人間を魔界へ引きずり込んだあげく、敗れたようだ。


「話はわかったわ、相当強い人間のようだな」

「ああ、さっき倒したドラゴンには殺されかけたが」

「ドラゴンは」「多分、上で死んでる、俺は尻尾に投げ飛ばされた」


 その言葉に、私はひとつの考えが浮かんだ。


「上へ戻りたくはないかい?」

「戻れるのか、道があるのか?!」

「塞がってるけど、崖は登れるさ」「あの絶壁を?!」「ただ、ドラゴンがちょっかいをね」


 水場で身体を洗う人間、

 光る苔でその肉体が見え、

 アタシは思わず生唾を飲んだ。


「俺がそれを防げば良いのか」

「そうだね、アタシの首に両足をかけて、

 ドラゴンが襲ってきたら払うなり斬るなりしてくれれば」


 これなら落ちずに脱出できるかもしれないわね。


「わかった、ただ、今は少し休ませてくれ」

「いいわ、その間、アナタの事を教えてちょうだい」

「俺の名は、ラスロ」「アタシはナルガよ、途中でラミアは見た?」「ドラゴンの巣にし……いや何でもない」


 こうしてラスロのそれまでを聞き、

 アタシもアタシでこれまでの事を話した。

 そして夜になり、いよいよ穴から崖の途中へ……!!


「おいおいナルガ、本当に真っ暗だが大丈夫か」

「ああ、アタシたちは匂いで見る事ができるからね、

 それよりドラゴンは音に敏感、アタシたちが登り始めたらすぐに来るよ!」


 アタシの両肩に足を乗せて、

 敵に備えるラスロ、そしてしっかり両腕で崖を登るアタシ、

 慎重にあえて時間をかけてでも、ゆっくりと……するとしばらくして!!


「来たな、せいっ!!」


 剣で、おそらく一撃で倒したラスロ、

 暫くしてドラゴンの羽音が複数になる!


「せいやっ! でいっ! おっとと」

「落ちそうになったらアタシにしがみつきなっ」

「ありがてえ、って下から!」「ふんっっ!!」


 今度はアタシが尻尾でドラゴンをなぎ倒す!


「なんだ勝てるじゃないか」

「一匹程度ならね、こんなに一気に来られちゃ」

「そうか、なら上や横からは俺に全部任せてくれ!!」


 そうこうして、

 なんとかやっと久しぶりに、

 崖の上に登れた頃には朝焼けが迎えてくれていた。


「……ふう、ラスロのおかげだわ」

「うっぷ、酷でえ匂いだ」「これは……!!」

「ああ、俺が倒したドラゴンだが半日でもうこんなに腐るのか」


 アタシはヨダレを垂らす。


「じゃあ食べていい?」

「待て待て、とりあえず焼いてやる」

「いいの?!」「俺も食える部分があったら喰いたい」


 こうしてアタシとラスロの、

 種族を超えた冒険が始まったのだった……


 ====================================================


「とまあ、始まりはこんな感じね、ねえラスロ」

「ああ、最初はそうだったな、その後、色々とあったが」

「私との三人になる前の話、結構聞いたと思うけどまだ話してない事は無いわよね?」


 アストのその言葉に、

 ミオスが横から入ってきた。


「それで、ナルガさんは、つがいというのは」

「アタシはラミア族を助けたい護りたい安息地が欲しい、

 ラスロは元の世界へ戻りたい、その利害が一致したんだけど……」


 アストを見るナルガ。


「アルラウネ族の族長に鑑定して貰った結果、

 実はアタシが一番、子を産める種族が人間だってわかって、

 それで取引を……それがいつまで待っても帰ってこない! ラスロ!!」「ひいいいぃぃぃ……」


 また絞められるうううぅぅぅ……

 さあ、どう言い包めてやり過ごそうか。

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