第126話 とりあえず王都へ そして魔物に挟まれて、尋問を受ける俺なのだが。
「ラスロ、無事に再封印できて良かったわね」
「アタシが戻れなくなっちゃったけど、責任は取るんでしょ?」
「ええっとだな、アスト、ナルガ、とりあえず巻きつき過ぎなんだが」
帰りの移動屋敷、
その三階つまり最上階のベッドで、
アストの腕とナルガの尾に巻きつかれた俺、うん、動けないな!
(心配して俺を見ているアリナとミオス……)
まるで俺が人質か何かで取られているみたいだ。
「あの、ナルガ様、ラスロの正妻のアリナと申します」
「申し遅れました、私はラスロ様の新しい正妻でミオスです」
「あらそう、アタシはラスロのつがい、ナルガよ」「「つがい……?!」」
そんな声を合わせなくても!!
「えっとナルガ、まずは落ち着いてくれ」
「落ち着いてるわよ? ラスロに巻きつくと本当に落ち着くわあ」
「いや、そういうのじゃなく」「確かにそうね、私も落ち着いているわ」「アストまで……」
ふたり、いや二体の魔物に抱きつかれていると、
このまま全身をバラバラにされてしまいそうな恐怖感が……
いや、そんなことは無いと信じている、わかってはいるものの。
「ナルガ様はずっとラスロを、あそこでお待ちになられていたんですか?」
「ジャイアントディグモールを追い詰めていてね、あと一歩という所で逃げられ続けて、
アタシも困っていた所へ封印が解かれて、逃げだしたのを追いかけたらラスロが居たのさ」
随分と都合の良い話だなおい!
「そうでしたか、それでラスロとの、つがい、というのは」
「魔界で協力する条件さ、アタシとの間の子を、魔王を全部倒したらって」
「ラミアと、ですか」「なんだい文句あるのかい?」「いえその、人との間に問題は」
まあアリナの疑問もわかる、
なのでここは、あえて俺が説明するか。
「実はな、ラミアという種族は牝しか産まれない」
「まあ、ではどうやって」「牡は他種族だ、極端に言えば何での良い」
「そうよ、でも相性っていうものがあって、アタシの一番相性が、とっても良いのが人間よ」
あーーー、という表情のアリナ、ミオス。
「ラスロ様は、ナルガ様とも結婚のお約束を」
「ミオスと言ったかしら、ラミア族はその『結婚』という概念はあまり無いわ、
少なくともラスロから聞いていたようなのでは、まあ『婚約』は近いかも知れないわね」
そう言いながらギリギリ絞めてくる!!
「うっ、ナルガ、だから落ち着いて、いや許してくれっ!」
「ちょっと用事で人間界へ、って、そのちょっとが随分と長いようね」
「だからまだ、その用事の最中なんだってば!!」「あのナルガ様、話を戻していただけますか」
ミオスの言葉に尾の締め付けを緩めるナルガ、
助かった……魔界だとジャレつくのが過ぎて、
ポキッと逝ってアストガ慌てて再生治療してくれた事も何度かあったな。
(ほんっとうに、魔界は地獄だっだぜ……)
肝心の数少ない見方がコレだからな。
「ではラスロは、ラスロとはどういう約束を」
「簡単よ、アタシが満足するまで子供を作って貰うわ」
「満足というと、いつまで」「満足といえば満足よ、アタシがもういいって言うまで!」
うん、これは大変だって表情で顔に手をやるアリナ、
ミオスもなんだか、あーあーあーっていう表情になっている、
魔物基準の『満足するまで』に果ては無さそうなのは、わかってくれるだろう。
「それでラスロとは、もうすでに一回か二回は」
踏み込んで来るなぁオイ!
「それがまだなのよ、アタシはラスロがどうしても行きたいなら、
まず子供を、せめて卵が複数産まれてからって言ったのにラスロが、
今、たった今にも待っている人間の婚約者を安心させたいからって……で、ちゃんと待っててくれてたの?」
ぎくり。
「そうね、そのあたりの説明は私もまだ受けてないわ」「アストまで……」
「ということでアタシとアストで締め上げて、尋問といくわ」「良いわねそれ」
「ちょ、ちょちょ、勘弁してくれ」「申し訳ありません、ナルガ様」「なんだいアリナとやら」
深々と頭を下げる。
「私達、ラスロの魔界での行動、出来事をあまりよく把握しておりません、
アスト様ナルガ様に協力致しますから、そのあたりを何卒、どうか私達に」
「教えて欲しいのかい? アタシに」「ええ、是非とも」「お願い致しますっ」
二人してそんなに、
床に頭が着きそうなくらいに……
「仕方ないわね、いいわ、説明してあげる」
尻尾から解放される俺、
ついでにアストの腕からも……
ふう助かった、さすが俺の正妻と正妻だ。
(どっちを選ぶか、まだ決めてないけど!)
そして語り始めるナルガ。
「あれはそうね、もう随分と昔の話になるねぇ、
アタシが魔王から身を隠していた時の話になるんだけど……」




