第122話 ドリアードのしばしの休憩 頼んでないのに、豪華料理をご馳走になってしまう。
「あれ、これ馬車もといドリアード屋敷、止まったよな?!」
ドアが開き見てみると、
ここはアレだ、村へ行く途中のキャンプ地だ、
僕らの乗った屋敷が地面に降ろされると、ドリアード達がわらわらと湖へ……!!
「ヤスンデモヨイトキイタノデ、ココデヤスムゾ」
「ソンナニナガクハカカラナイ、ヒルメシデモ、モッテキテヤロウ」
「ミズウミノスイイガ、スコシサガルカモナ」「ヨウガアッタラヨンデクレ、ヨウガシタイナラヨンデクレ」
集団休憩か、
三日三晩休まず走り続けられるらしいが、
それはあくまでも、無理をした場合なのだろう。
(アストも休憩かな、って何もやってないけど)
と思ったら三階の屋根がパカッと開き、
そこからアストが両手両足いや樹の幹や枝を伸ばして降りてきた、
天窓じゃ狭いからな、っていうかあそこ開くんだっていう……そして地上へ到着。
「私もお水をいただくわ、良い湖ね」
「そうか? 魔界の水のがあっているんじゃ」
「一番愛称の良い水はラスロの体内の水よ」「干からびるのは勘弁」
俺たちもせっかくだから野外で料理、
昼飯の段階でここまで来てしまうとなると、
夜には、いや日が沈む前には再封印場所に到着してしまいそうだ。
「ダンジュくん、ここまで乗って見てどうだい」
「快適というか、寝たり外を眺めたり眠ったりで、もうここまで」
「ほとんど寝てるじゃないか」「昨日は緊張して、なかなか眠れなくて」
ダンジュくんでもそんな感じか、
魔物と一緒にって普通に考えれば怖いもんな、
俺はもうさんざん世話になった、勝手知ったる相手だから……
「ラスロ、火の調整を」
「おう、ネリィの火魔法を」
「あのぉ、ドリアードさんの前で木を燃やすのはァ」「何の心配もいらない」
逆にそこ気にするか? っていう、
俺の頭上の芽もコクコク頷いている、
こうして食事の準備をしているとハミィから疑問が。
「あの、ドリアードさま達のお食事は」
「基本は水と日光、腹が減ったら土や虫を食う」
「ではこちらは何も」「ああ、水場さえ案内すれば良い」
怒らせたりしなければ、
手間のかからない気の良い連中だ。
「ああっ、この芽!」
「アストの種がどうした、大丈夫だ頭に寄生していたりは……」
「芽なのに、目が!」「今更かよ、ドリアードのには無いがアルラウネのにはあるんだ」
だから見えているはず。
「ヤクソクドオリ、ヒルメシダ」
「おお、魚を獲って来てくれたのか!」
「サア、スキニヤイテクエ」「こんなにも、ありがてえ、感謝する」
頼んでないのに一気に昼食が豪華になるな、
じっくり焼いているとミオスが俺を手伝ってくれる。
「ラスロ様、魔界では料理は誰が」
「ええっと、なぜかリムリアが上手だったな」
「それはどのような種族で」「サキュバスダゾ」「お前が答えるのかよ!」
あっ、新ハーレムのみんながジトーとした目で!
「ひょっとしてラスロ様、そのサキュバスと」
「いやいやいや、そんな安易に想像するようなことはしていない」
「ではどのようなことを」「キモチヨサソウダッタゾ」「お前は黙れ!」「あら、何の話かしら」
アストがざばぁーーーっと湖からあがってきた、
いや俺の頭上に仕込んだ芽で観てた聞いてただろうに、
だから上がってきたのだろう、相変わらず植物の魔物なのにセクシーな身体しやがって、巨女だけど。
「アストさん、そのリムリアさんという方とラスロ様の関係は」
「魔界に居る間は夫婦とか言っていたわね」「じょ、冗談でリムリアが勝手に言っていた事だぞ」
「あらリムリアは本気だったわ」「それでラスロ様には、どのような気持ち良い事を」「生命力を少し貰っていたわね」
ああっ、また四人して新ハーレムがジト目に!
「説明するとだな、サキュバスは眠っている間に夢を見させて、良い夢だと心身ともに無防備になる、
その間に抱きしめて、全身から生命力を吸ってだな、もちろんその気になれば吸い尽くして殺す事もできるが、
リムリアはあくまで俺の魔王討伐を手伝うために一緒にいたから、そこまでは」「吸う方法を具体的に」「だーかーらー」
少し離れて旧ハーレムも真剣に聞いてるし!
ということで俺は誤解のないように必死に説明した、
いやみんなサキュバスに対してイメージが先行し過ぎなんだよ……。
(一応は、旧ハーレムにフォローを入れておこう)
ということで、リムリアに見せられた夢は、
旧ハーレムのみんなが待っていてくれて幸せになった夢、
その夢を見られた事で、なんとかこっちまで戻って来られた、という事にした、もちろんそういう夢も見たし。
「……なるほど、ラスロ様の言い訳はわかりましたが、アストさんとしては」
「大体あっているわ、後はまあ、ラスロを信じてあげて良いと思うけど、真実はリムリアに聞かないと」
「いや、わざわざ会うつもりは」「今でも待ってるわよ、やはりラスロの味が一番だって」「誤解されるような事を言うなー!」
そんな和気藹々? とした会話ののち、
焼き上がった昼食をいただいて魔界ゲート再封印に備えたのだった、
それにしても、本当に湖の水位が下がった気がする……どんだけ飲んだんだ。
「あっ、確かお前だったな、もう喋っていいぞ」「ソウカ」
「ラスロ、どうしたの」「アリナ、ドリアードの連中は真面目すぎてな、
一体に『黙れ』と言うと、俺がそのドリアードに命令を解かないと、おそらく永遠に黙ったままだ」
まったく面倒臭い。
「じゃあ戻りましょう」「おうアスト」「一緒にね」
そう言って移動屋敷の天井を開けるアスト。
(戻るって……魔界へ、じゃないよな?!)
こうして移動式ドリアード屋敷は、
再び疾走し始めたのだった、さあ……再封印だ。




