第115話 馬車ならぬ移動式住居 三階建、いや走るドリアードを一階とすれば四階建てか?!
「うわ、なんだこの大きな、ちょっとした家は!」
アスト城の裏庭、
ドリアード二十四体が担いでいるのは、
三階建てのちょっとした塔みたいなものだ。
「サア、ワレノアシニノレバ、ナカヘハコンデヤロウ」
「ラスロ様、ここは危険がないか確かめるため最初はアサシンの私が」
「いやそこまで警戒しなくとも、って入って行っちゃったか」
にしても入口が高いな、
これドリアードの身長を考えたら、
全体的に四階建ての建物と言えなくもない。
(こんなのが走るのか)
いやほんと知らない衛兵に攻撃されそうだ、
ドリアードの連中なら簡単に防げそうだが……
続いてエミリも、アリナ、ミオスも続いてドリアードの足で運ばれる。
「ラスロハ、コッチダ」
「おう、って俺だけ色が」
「キニスルナ、サア」「わかった、っておわわわわ?!」
ぐいーーーんと、
なぜか一気に三階、いや四階、
屋上まで運ばれる、あっこの足、アストのか!
(そして天窓が開いて、中へ……)
降ろされるとアストが横になって待っていた!
「待ってたわ、ここは私とアストの部屋よ」
「なんだか豪華な乗り物だな、いやこれもう移動要塞か」
「ラスロのために作ったのよ、全て終わったらこれで魔界へ帰りましょう」
怖いな、
ここに閉じ込められて連れ去られそうで……
自業自得といわれれば、まあそうなるのだが。
「それにしても本当に窓が少な目……おっと動き出した」
「全員乗ったわ、どのくらい揺れるかテストしましょう」
「……全然揺れないな、やはりドリアードがしっかりしているからか」
さっき入って来た天窓から、
足場を作って貰って顔を出す、
湖の周りをすげえ速さで走っているな。
(アスト城からネリィの子供達がこっち見てら)
いやこれアスト城のミニ版みたいな感じ、
これなら馬車どころじゃない快適な旅っていうか、
もう旅どころじゃない速さで目的地に到着できそう。
「わかったアスト、降ろしてくれ」
アストの伸びた腕が俺を捕獲する。
「会議は全て聞かせて貰ったわ、
私はラスロのためなら何でもするから」
「お、おう」「だから遠慮なく何でも言って頂戴」
ひょっとして、
これもこれでまたヤンデレなのか?!
「ありがとう、では他の階を見てくる」
「下はお風呂よ」「えっ」「あとベッドもあるわ」
アストを置いて階段を降りると、
まず寝室か、二段ベッドが四つある、
そこまで大きくは無いが十分な広さだ。
「そして風呂かぁ」
こっちはこっちでまあまあな広さ、
ていうか普通にお湯が出せるんだな、
ドリアードが体内にしこたま溜め込んでいる水を、魔法で温めているのだろう。
(……なんだろう、なんとなくだけど)
アストと俺が一緒に入って、
丁度良いっていう大きさな気がする、
魔界でさんざん世話になった時を思い出すな。
「あの時はナルガやリムリア、あと……いや、今はいい」
階段に戻り一階へ、
ドリアード達を一階としたら二階か、
面倒臭いからもう一階でいいや、ここは三階建てということで!
「ラスロ、これ、これ!」
「なんだアリナ、ってこっ、これはあああ!!」
「トイレよ、ちゃんとトイレがあるの!!」
入るときちんと俺用なのか、
小便器もあるな、そして奥は大、
木製の蓋を空けて見ると、その奥には……!!
「ヨウ」
ドリアードが見上げていた!
「ええっと、垂れ流し?!」
「ソチラデイウ、ヒリョウダナ」
「ドリアードのか」「ソウダ、イマハオレノダ」
……下は見ないでやろう。
(ていうか走りながら器用に見上げやがって)
まだ動いていたのか、
っていうくらい揺れないなこれ。
トイレの確認が終わって居間へと入る。
「大きいテーブルまであるな」
「ラスロ様、奥にはキッチンまで」
「ミオス本当か」「はい、ここで食事も作って出せます」
いたれり尽くせりだな。
「こんなに広くて快適な移動手段、
すぐに終わらせて戻って来られそうだ」
「ラスロ、最後にこの部屋を」「ヨラン、そこは……あっ」
一階最前部、
室内だが馬車で言う運転席か、
窓からずっと前を座って見張っていられるな。
(寝るスペースもあるからダンジュくんはここか)
いやこれ交代で見ているだけの簡単なお仕事になりそうだ。
「ラスロ様、下が空きます」
「おっ、ロズリ、ちょっと開けてみてくれ」
「……ドリアード達と話が出来るようですね」
俺が話し掛ける。
「長距離移動中、休憩はどのくらい必要だ」
「ソウダナ、ミッカハシッタラ、ヒトバンヤスミタイ」
「おいおい三日三晩走り続けるつもりか」「サイコウデナ」
タフどころの話じゃないぞこれ。
「わかった、ところで下から風が入ってきているが、ここはどこだ」
「ニンゲンノ、オシロノ、テッペンダゾ」
「えっ、ええっ、えええええ?!?!」「ラスロサマァ、衛兵が慌ててますネェ」
(どこ走ってるんだよおおおお!!)
この後、普通に怒られた。




