第114話 やっと戻ってきたエミリ ただしそれには、エルフ国からの条件があるらしい
「ラスロ、戻ったわ」「エミリ!!」
王城の立派な会議室、
出発前最後の打ち合わせという事もあり、
近衛長やら大臣やらも交えて真面目に話していたら、旧ハーレムのエミリが入ってきた。
「良かった、間に合ったようね」
「やはり引きとめられていたのか」
「ええ、口に出せないような方法でね」
なんだよそれは……
何となく触れちゃいけない気がする。
「じゃあ逃げてきたのか」
「いいえ、それがこっちの王様とエルフ国の王と、話がついたらしいのよ」
「珍しいな、まあ世界の危機再び、だからな」「それが、そういう感じじゃないの」
座って落ち着くエミリ、
メイドにお水を貰ってごくごく飲む、
本当に急いで来たんだな、汗をかいて……
「ならば、どういう感じなんだ」
「何でもエルフの王から持ちかけたそうよ」
「じゃあ何を対価に」「聞いた話、王都のマザーツリーが、グレードアップしたと」
あっ、そっちかぁ。
「エルフの森にも、病気のマザーツリーが」
「それはもう沢山、昔は『精霊を呼ぶ儀式』で少しだけ回復させていたそうだけど、
十二年前からそれも出来なくなった、正確には全て召喚を失敗していたと、何本かはもうすでに枯れたそうよ」
うーん、十二年前ってことは、
魔王が全てのゲートを閉じた事と関係していそうだ。
「じゃあ治してくれと」
「その引き換えとして、エルフ国からエルフ扱いの私を献上すると」
「エルフの王からすると足元見つつ損は無いな、むしろ徳しか」「ハルラさんは災難でしょうけれどもね」
しかし、そこでネックになってくるのは……!!
「それで、ふたりの子供は」
「時間をかけて、ゆっくりきちんと説明しているわ、説得中よ」
「現在進行形か」「早く終わらせたい、と思っていた所へエルフの王から手紙が来て」
エミリの以前言った話からすると、
エルフが書面をよこすっていうのは、
よっぽどの事のはずだ、つまり正式に奪い返せる。
「ハルラさんは、どうなるんだ」
「特別に本来の、エルフのみが住む区域に戻れるそうよ」
「子供達は」「無理でしょうね、その時は……」「どうなる」「どうするラスロ?」
俺に振るのかよ!
「ふたりの、あの子達の意思は」
「エルノはもう、人間の国はこりごりみたい」
「マザーツリーが強化されてもか」「こういうのは精神的なものもあるから」
いや知らねえよ、
とか言うのも酷い話だよな。
「とにかくエミリが戻って来てくれたのは、戦力的に凄く助かる」
「私もこういう形でとはいえ、ラスロのハーレムに戻れて嬉しいわ」
「お、おう」「もう離れない、後で抱きしめてあげる、それよりも……」
俺の頭頂部に目が行くエミリ。
「どうした」「その、つむじのあたりから生えている芽は、なあに?」
「これはだな、別に寄生されている訳ではなく、種が乗っていてそこから芽が」
「どういう事情かしら」「エミリがいなくなった直後に来た仲間、いや仲魔の話なんだが……」
とまあアストやドリアード族について説明、
最近は王城に魔物を入れるなと苦情が出ているため、
この種(芽)でアスト城からアストやドリアードが会議の音声だけを聞いているという話だ。
「ではそのアストさんにエルフ国から依頼が」
「もう行っているのかな、話は来ているのか?」
ヒョコヒョコと芽が頷いている。
「そうか、それでそうするんだ」
首を、いや芽をかしげている。
「迷っているのか?」
芽を左右に振っている。
「断るつもりなのか?」
またもや芽を左右に振っている。
「なら俺に従うとか」
芽が上下に、コクコクと頷いている。
「わかったアスト、後で話そう」
「ラスロ、私のために」「エミリのためというより、みんなのためな」
「そうよね、平和最優先って言ってたものね」「ちなみに治療希望の樹ってどれくらい」「二十七本よ」
ううーむ、
これってあまりに重労働だと、
俺がアストに何か要求されても、おかしくないぞ?!
「まあいい、今は作戦会議、打ち合わせだ」
とまあ話を詰めつつ、
俺もある意味で追い詰められているのであった。
(……いやほんと、これどうすればいいんだよ)
そして、どうなるんだろうか。




