第110話 いよいよ再封印へ その前に、七人の子供をどうするの?
「ラスロ、完璧だわ」
「ラスロ様、完成と言って良いでしょう」
「さあラスロ、これを試しに行きましょう」
聖女(仮)アリナ、
賢者ミオス、魔物姫アスト、
三人並んでご満悦、目の前には光り輝く超巨大魔石が。
(しかも、透明な文字というか術式というか、もはや模様だな、それがびっしりだ)
俺が出てきた魔界ゲート封印から一か月、
例の研究部屋でついに新しい、最新の結界が完成した、
何でも今度のは三か月から最長で一年持つらしいのだが。
「これでとりあえず、きちんとした結婚式は挙げられますネェ」
「叔母さん、正式な結婚式どうこうよりも、離婚もまだでしょう?」
「必要書類でしたら、とっくのとっくのとっくに送ってありますヨォ」
という会話をし始めた、
魔女ネリィとその姪ハミィ、
じゃあもう成立しているのか?
(だったら子供達が押しかけてきているのは……)
未だ戻ってこないエミリの時のように、
子供が親を、母を連れ戻しに来たのか、
確か最初、長女と長男が来た時はそんな感じだったはず。
「なら叔母さん、あの子達はどうなるんですか」
「知りませんねぇ、単に間違えただけですからァ」
「何度も言っていますが、ウチの実家と叔母さんの実家に押し付けっ放しなのを何とかして下さい」
そう、何でもネリィの子供は、
女の子組と男の子組を分けて王都にあるそれぞれの実家に預けているそうで、
どっちがどっちかまでは知らないが、とにかくしょっちゅう王城に来ては塩対応されている。
(エミリの時よりも酷いので、よく注意はしているのだが)
ただあまり深く言うと、
じゃあ一緒に引き取りますかという話を出してくるので、
そういう事じゃないと繰り返し言っているのだが、うーん。
「アリナ、改めてネリィに言ってやってくれ」
「はい、ではネリィ、子供達への対処をそろそろきちんと」
「平和になってから、新しいお屋敷が何人、引き取れるかにもよりますネェ、ラスロサマァ」
この状況、やはり俺も人並みに心が痛む、
いやネリィは基本的に俺しか見えていない、
ヤンデレとはそういう物なのかも知れないが、今回の事案はやっかいだ。
(ヤンデレの対象が一度消え、他所に対象を移したら元の対象が戻ってきたという)
でネリィの場合がどうなったかというと、
一度消えたヤンデレ相手が戻って来たがゆえに、
ヤンデレの気持ちも、対象も戻してしまった、一方的な『元さや』というやつだ。
「ネリィ、俺は前も何とか言ったと思うのだが、
やはり魔導都市での夫や子供について『間違えました』の一言では、
済まないような気がするのだが」「しかし間違えたのは間違えですからァ」
間違えました、の一言で全てを無かった事にしようとしている、
荒っぽいし酷いし、魔女どころか本当に人として、どうかしている。
そこに『ヤンデレだから』という理由は、通用しないと思うのだが。
「ミオスは、このネリィについてどう思う」
「言葉を選んだ方が良いですか?」「選ばなくて良い」「クズですね」
「おいおいおいおい!!」「送り返すべきはネリィさんかと、する事が終わってからですが」
大先輩しかも一緒に結界造っている仲間にこの言い様よ。
「ハミィは聞くまでもないか」
「百歩譲ってですが、きちんと、お子さんを魔導都市まで戻して父方で面倒を見る手筈を踏んで、
正式に円満に離婚すれば、まあ私とラスロお兄様との子供を世話する係にしないでも無いですが」
鼻息を荒くするネリィ。
「ラスロサマのお子様でしたら、
いっくらでも愛情込めてお世話させていただきますヨヨヨョョョ、
ヨヨヨイ、ヨヨヨイ、ヨヨヨイ、ヨイ、ア、オマカセクダサイマセェェェ」
これ、魔界ゲートの封印を全て完全に完璧終わらせてからとか、
新しい魔王を全部倒してどうこうした後でとか、平和になってからとか、
そういう風に時間をかけていたら、何だか取り返しのつかない事になりそうだ。
「ちなみにアストはどう思う」
「早く私との、ラスロと私の婚姻について詰めましょう」
「終わってからな」「早く終わらせましょう」「ネリィについては」「どうでもいいわ」
うん、こっちもこっちでヤンデレと言えそう。
「ではネリィに簡潔に聞く、簡潔に答えてくれ、どうしたい」
「ラスロサマとやり直したいデスゥ、間違えただけなんですゥ」
「間違えました、で済む話か?!」「でもぉ、間違えたのは間違えたんですからァ」
ここで口を挟んだのは、ヨランだ。
「ようは取り返しが効くかどうかだ、私はなんとかなった」
えっ、そうなの?!
初耳なんだが、まあ離縁は出来てるって意味ではか、
俺の気持ちは別にして……うーん、気持ち、なあ……
「わかった、封印の出発準備というのもあるから、
とりあえずはその間に話を整理しよう、特に子供について」
「生理はもう来ませんガァ」「おっさんかよ!」「おばさんですヨォ」
そうだった。
もちろん、俺もおっさんだ。




