第102話 新ハーレムと緊急会議 いや急にハーフエルフの子供をふたり、俺と引き取ろうと言われても
グレナダ公爵邸、
とりあえず旧ハーレムの面々に、
エミリ関連の事を押し付けての新ハーレムと緊急会議だ。
「ちょっとまずい事になったのだが」
「はいラスロ様、味方とは言え、それだけ強い魔物が来るとなると」
「ミオスそっちじゃない、エミリの子供、ハーフエルフが俺の子になるとか言っているんだが」
あっ、そっちですか、という表情のミオス。
「どうせ捨てるのですから、好きにやらせておいては」
「いやいやいや、尚更まずい、心が痛い」「でも仕返しなら、これくらいは」
「ミオス、仕返しって……」「これでそのお子さがエミリさんを恨めば、なお」「俺が恨まれる」
ロズリもキリッとした表情だ。
「そのくらい人生経験では、婚約者を裏切るとこうなるという事を心に刻みつけるかと」
「いや俺は無理してそんなこと教えるつもりは! 嫌だぞ王都を歩いていて矢が飛んできたら」
「では私が警備致しましょう、もしくは王都から追い出す手筈を」「いやいいから別に、そんな」
それにしても、
俺たちが居ない間はどうしていたんだろ、
わずか数日とはいえ……まだまだ母親が必要な年齢だろうに。
「ラスロ様、私達がラグラジュ大森林へ言っている間の情報ですと」
「ナタリ、そんな情報網が」「そこまで大した話ではありませんが」
「それで?」「はい、出張中と聞いていても、こまめに城まで出向いて待っていたそうです」
健気というかなんといか、
それしかする事が無いのだろうか、
エルフの森の学校とかはどうなんだろうか。
(そもそも、ちゃんとしたのがあるのかどうか)
王都に住むエルフは、
その子供は普通に通っていそうだが、
いや長寿であるエルフは別か? ハーフエルフならまだしも。
「うーん、痛々しいな、ちなみに旦那さんは」
「今になって結婚の手続きをしているようですね、
正確には『しようとしている』とはいえ、一方的な物ですから」
今更になって書面的な部分を解決しようとしているのか、
エルフは口約束でどうにかなる、してきた的な種族らしいから……
とはいえ、そんな今更なアリバイ作りみたいなこと、効果があるのかどうか。
(むしろ、俺との婚姻のが優先されそうな気がする)
だからこそ、
あがいているのか。
「ちなみにラスロお兄様」「ハミィ、結界の研究ありがとうな」
「いえいえお兄様のお嫁さんになるためですから、それはそうとですが、
そのエルフの姉弟、やはり顔色が優れなくなってきていますね、私も見ました」
それはやはり、
体調的な物なのだろう。
「王都の水が、空気が合わないということか」
「あとエルフの住むあたりにマザーツリーの若木がありましてぇ、
そのおかげでエルフでもここに住めるのですがぁ、あの子達の借りてる家は遠い場所にあってぇ」
住居が早い者勝ちなら、
まあそうなるよな、可哀相だが。
「マザーツリーが遠いと調子が悪くなるのか」
「そうですねぇ、もちろんハーフエルフですから、
普通のエルフよりもはマシでしょうが、息苦しい感じは見せてますぅ」
もし俺がエミリを貰わない、
復縁しないと決めるのであれば、
ファミリーごと、丸ごとさっさと森へ帰すべきだなこれは。
「んーーー、ミオス」「はいっ」
「ここまで話を聞いて、どう思う……って、
ミオスとハミィにはエミリの旦那の、求婚した理由を言ってなかったか」
だよな、俺が聞いたのは道中の行きだし。
「あの、それは」「すでにナタリさんから話を」
「そうか」「申し訳ありません、その方が手間が省けると」
「いや合っている、おかげで話が早い、それで、それを踏まえてミオスの意見を聞こう」
こんな、ここまで年下の女性に投げるのは申し訳ないが、
一応は婚約者、パートナー、国王陛下が認めて用意した正妻ということで、
あくまでも参考のひとつにしか過ぎないからな! 真面目に考え込むミオス。
「……そうですね、これはひとつの読み水、
いえ、池に石を投げいれて波紋を広げるような方法かも知れませんが」
「なんだ、言ってみてくれ」「エミリさんに、その旦那さんに詰めて貰ってはいかがでしょうか」
詰める……だと?!
「それは、すなわち」「最初から騙していたのか、そうでないのか」
「あえてそこを、はっきりさせると」「はい、その結果の真実を知れば、
ハーフエルフの子達にラスロ様が恨まれる線は、おそらく薄まるかと」
……正直、このあたり、
俺も興味が無い訳では無い、
エミリにとってはもう、どうでもいい話らしいのだが。
(しかし、そこをクリアにしないと俺と一緒になれない、と言ったら……!!)
これが決定的な亀裂になるのか、
それとも互いが『真実の愛』に結ばれて、
まとめてエルフの森に帰って幸せに暮らしてもらう事となるのか。
「ギャンブルだな、もしこれがエルフの夫と完全離縁の方向に転んで、
エミリがふたりの子供を連れて『解決したわ、貴方の子よ』『パパ!』『パパー!!』ってなったら」
「その母と子をまとめて捨てれば、さぞかし絶望するかと」「いや俺、恨まれない方法を聞いたつもりなんだが!!」
まーた悪そうな顔でニタァと笑うミオス。
「恨まれる選択肢しか残っていない、という可能性もありますから」
「いや俺、刺されちゃうよ!」「安心して下さい、私達が護ります」
「ラスロ剣はラスロ様をお護りする剣です」「不意打ちの対処は得意です」「叔母なら先に始末しても良いですよぉ」ちょ、お前らっ!!」
……とにかく、
エルフの夫に真実を突きつけるのは、
やってみても良い気はするな、エミリがその場に居るにしても、居ないにしても。




