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闘い終わって(3)

 巴達五人は姉小路公磨(あねがこうじきみまろ)の屋敷を目指した。

 そこは落ちぶれた公家の()れ屋敷だった。

 「源三様の・・・」

 そこの主人は公家には似合わず、卑屈に頭を下げた。

 源三様は・・・兵衛がその公家に尋ねた。

 未だ・・・また、そこの主人は頭を下げ、こちらへ・・と五人を奥の座敷に案内した。

 「待たせましたな。」

 暫くするとそう声を駆けながら源三がその部屋に入ってきた。

 「雉殿から飯屋には来るなと連絡がありましたが、何か・・・」

 「まあ色々と・・・」

 紅蓮坊がばつが悪そうに応えた。

 「ところで源三様の御用事とは・・・」

 横からの巴の声がそれを救った。

 「ああ、その事ですか。

 私が一番隊の隊長を任じられました。

 教貫様は当初鬼木元治殿を推したようですが、何が何でも、とあの方が固辞され、仕方なしに私に話が回って参りました。」

 「一番隊ですか・・・

 まだお聞きしたい事もありましたのに・・・」

 巴はがっかりしたように言った。

 「ははは・・そのような事ですか。

 私は今までも御庭廻組の隊員でもなく、それでありながら皆様とは親しくさせて頂きました。それはこれからも変わりませんよ。」

 しかし・・・巴はまだ何か言おうとした。

 「心配ない。

 小平次は公には私の孫として連れて来ておる。山科にはその孫に会いに行くという口実で、月に三度は行ける。それを私が小平次に伝え、小平次があなた方に伝える。

 それでいかがですかの。」

 巴はそれで納得した。

 「私はそうはいきません。」

 今度は兵衛の声。

 「私はなるべく皆とは離れようとしています。そうなれば源三様の話は聞けない。」

 「私は一番隊の隊長を受任いたしました。

 私の知識はあなた方だけのものではありません・・当然一番隊にも分け与えなければなりません。その為、月に二度、塾を開きます。

 あなたはお役人の出だからか、今までも毎日詰め所に出仕していました。それ故、私の塾に顔を出しても誰も奇異には思わないでしょう。」

 そうか・・・紅蓮坊が大きく手を打った。

 「ならば後は金子の分配だな。」

 そう言って担いできた金袋をそこで拡げようとした。

 「その話には私も加えて貰いますよ。」

 何時そこに来たのか雉の声がその中に混ざった。

 「もう来たのか・・・後の始末は。」

 紅蓮坊は驚いたように声を上げた。

 「後は私の手下が片付けています。

 どうやるかは聞かぬが花でしょう。」

 巴はその言葉に少し嫌な顔をした。

 「あなた方は嫌うかも知れませんが、根は断たねばなりません。」

 雉は何とゆう事ない様に言った。

 「で、分け前ですが・・・」

 雉はそこに置いてある金袋を見た。

 「私はその中から金子十を頂きます。」

 「それだけでいいのか。

 源三様も含めて、我等六人。一人あたり金貨十六にはなるぞ。」

 紅蓮坊の声は相変わらず大きい。

 「今回の騒動・・私は晴海様を護るだけでで何もしておりません。

 それだけ頂ければ充分。」

 「私もいりませんぞ。」

 紅蓮坊の後ろから源三の声も聞こえる。

 なぜ・・紅蓮坊が振り向く。

 「私は今回は御庭廻隊の隊員ではありません。

 その金貨百は二番隊への恩賞。

 それはあなた方で分けてください。」

 となると・・・紅蓮坊は指を折りながら計算を始めた。

 「金九十を四人・・一人、二十とちょっとだよ。」

 巴がその姿に半笑いで声を掛けた。

 「お前少なすぎはしないか。」

 それを聞いて紅蓮坊は雉を見た。

 「十で結構です・・但し残りの金の中から金貨三を頂きたい。」

 なぜ・・・巴が問うた。

 「あの飯屋に迷惑料を渡したい。」

 「あなたはあの後、何を・・・」

 巴が雉を見る。

 「先ほども言ったように、まあ、聞かぬが花でしょう。

 後片付けは致しましたが、店には多大な迷惑を掛けました。

 その迷惑料が金三という事で・・・」

 雉は大きく腰を折った。。

 「金貨五枚を持って行って貰おう。

 皆もそれでいいか。」

 兵衛が代表していい、他の者達は皆頷いた。

 それでは・・・との声を残して雉はその場を去った。


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