第8話 「邂逅、前世の友」
タロウとアリスは王都からの脱出に成功し、新たな目的地を定めるべく旅を続けていた。
「この先、馬喰いの森が広がっているそうよ。注意が必要わね」
とアリス。
「うん、心して通過しよう」
森に入ると、馬の悲鳴が聞こえた。駆けつけると、馬喰いモンスターが馬を襲っていた。
タロウとアリスが撃退すると、少年が駆け寄ってきた。
「助かった! 僕の馬だ」
少年は自分をリードと言い、旅の少年修行中だと話す。その雰囲気が、匂いが、姿が何故かタロウの懐かしさを誘った。
「リード、俺たちと一緒に旅を続ける気はないか」
タロウが誘う。リードも快諾し、3人で旅をすることに。
その頃、ゼノンはタロウの死地である地球に到着していた。
「ここでタロウを引きずり下ろせば、我が教団は世界を手に入れる!」
ゼノンは転生前のタロウが事故に遭った場所に魔物を召喚。辺り一面は騒然となった。
一方、タロウとアリスはリードと街道を歩いていた。すると、盗賊団に囲まれてしまう。
「金品を引き渡せ。そうすれば命だけは助けてやろう」
リードが怒って反抗すると、盗賊団は刀を抜く。アリスが前に出る。
「邪魔するな!」
盗賊団はアリスの力を恐れて引き下がる。タロウがリードを抱え、3人で盗賊団を振り切って逃げた。
タロウたちは盗賊団の襲撃を振り切り、リードとともに街道を進んでいた。
リードは懐かしさを感じるタロウに、自分のことを話し始める。
「僕は村の孤児だったんだ。ある日、旅の騎士に助けられて弟子入りを許された」
リードの話を聞く内に、タロウは過去の記憶を思い出していく。
「そうだ、俺も前世ではリードの友達だった!」
リードは、タロウの前世で飼い猫だったのだ。
ある日、迷子の子猫だったリードをタロウが拾い、可愛がって飼うことになる。
二人は飼い主とペットとして深い絆を築く。しかし、交通事故でタロウがこの世を去ると、リードも後を追うように命を落とす。
そんな運命的な出会いから、リードは今世でもタロウとの再会を果たす。前世の記憶を取り戻し、タロウを護ることを誓うのだった。
驚くリード。アリスも
「運命的な邂逅ね」
と言う。3人で旅をする約束をふたたび交わした。
一方、ゼノンは地球で交通網を乱していた。その影響でタロウの転生した世界にも異変が起きる。
タロウは頭痛と震えがする。
「何だろう、ちょっと調子が悪い」
「前世との繋がりの影響かしら」
アリスが心配する。
リードが
「僕たちが力になるから大丈夫!」
と声をかける。
タロウはリードとアリスの言葉に力づけられ、立ち直る。
「ありがとう。みんなのためにも、落ち込まないで戦うよ!」
3人の絆が強まったその時、メルザ率いる教団の刺客が現れた。激しい戦いが始まった。
タロウたちの前に、メルザ率いる黒の教団の刺客団が立ちはだかった。
「ゼノン様の命令だ。お前らを生け捕りにする!」
メルザたちが一斉に襲いかかってくる。タロウとアリスはリードを護りながら戦う。
アリスの剣技とタロウの魔法が刺客団をなぎ払う。追い詰められたメルザは、奇襲に出た。
「ぐあっ!」
タロウが背後から斬られ負傷する。
アリスとリードが悲鳴を上げる。怒り心頭に燃える二人が反撃すると、メルザたちは辛うじて逃げ去った。
「タロウ、大丈夫かしら!?」
アリスがタロウの傷を心配する。
「うん、何とか...」
傷は深かったが、一命は取り留めた。
近くの村で傷を手当てしてもらい、3人は休息する。今後の対策を練らねばならないと、タロウは思った。
一方、ゼノンはタロウの死地である地球で、新しい計画を実行に移そうとしていた。
「次はタロウの過去を狙おう。タロウを支配下に納めるための材料を得る時だ」
ゼノンの命令で、メルザたちはタロウの住んでいた町へと向かっていた。
過去を変えられるとしたら――。タロウはその可能性と危険性に胸を痛めているのだった。