第十一話 超えて行く
U 23
ワイルドケープリは強風に飛ばされてきた紙面の内容を覗き見ていた。
ウマの画が乗っかっており、びっちりと小さくニホンゴで文字が書かれている。
細かい文字ばかりでそれほど読む気にならなかった。 脚で踏みつけて破いて捨てる。
シャシンのおかげでブッチャーもどきとスターのガキがナンブハイに出る事は分かった。
それだけ判れば十分だ。
しかし、以前からちょっと思ってはいたが、ニンゲンとウマは意思の伝達方法の差が大きいな。
俺はウマであるから、ニンゲン同士の意思の交換という事柄に思考のリソースを割いてこなかったが、改めて思いを馳せると意思を伝える方法の種類というのは、示唆に富んだ題目であると言えよう。
何が言いたいのかを噛み砕いていえば、ニンゲン同士での意思の交換がとてもスムーズに為されている事に驚いたという話だ。
俺達ウマは例えばだが、地面に脚を叩いて掻いてみたり、首をぶんぶんと振ってみたり、耳や目で訴えてみたり、嘶いてみたりという、大雑把な表現を表わすのがせいぜいだろう。
それはニンゲン相手にした時もそうだし、同じウマを相手にした時も変わらない。
俺やちび、ブッチャーといった言葉を交換できるウマは珍しい。
ニンゲン達からすれば、俺とちびの会話は、唸り合っているようにしか聞こえていないのかも知れない。
なんなら、小動物や鳥や虫を相手にしても同じような行動を起こして感情を表現している。
しかもだ。
俺達ウマは相手がその場にいないと意思を交換することさえ出来ないのである。
ところが、ニンゲンは違う。 文字を使う。 道具を使う。 発声に多様な意味を持たせ、それをダイレクトで処理して返信している。
スマホという物に目を落とす、或いはウマに向けるニンゲン達は、あの道具一つで遠近どこのニンゲンとも意思のやり取りが出来るみたいなのだ。
それはちょっと、信じがたいが途轍もない事だと俺は思う。
そもそも話す事一つとっても、ニンゲンの発声そのものが他の生物と違ってあらゆる音を奏でる事が出来て、それに意味を付与するのだからガイジンって奴等のように人によって言語の幅が無限に広がっている。
身体の構造的に最初から意味のある声を出すという事が出来るように、何かしらの進化を遂げたのだろう。
エイゴが主流になっている場所もあると聞くし、数多の言語が開発されているらしい。
当然、その場に居なくても映像を見れる機械や、文字を飛ばす小さな箱、さっき風で俺の脚元に飛んで来た新聞など、道具を用いた意思の伝達に多様性があり、またその伝達速度が尋常では無いほど早い。
視覚情報に文字の情報を複合して、先ほど飛んで来た紙っきれみたいに様々な表現すら演出している。
必要な情報を整理し、発信し、受け取ることができる生物はニンゲン以外には今のところ遭遇したことがない。
俺が小さかった頃にニンゲンの声が煩わしかったのは、理解できない音の奔流―――情報量という意味で精確に人間の出す音を処理しきれなかったのが原因の一つだった。
そう考えると随分と、俺はニンゲンの言葉そのものが上手にできるようになったと自分でも思う。
まぁ、身体の構造が違うからだろうから、自分からは喋れないわけだが。
解読は単語を切り分け、表情と仕草、そして雰囲気で判断を曖昧につけるところから始まっているから、割かし気長に構えて紐解かなければならなかった。
文字に関しては未だに正確性は怪しい。
だいたい判るようになったが、ここまで読めるようになったのは苦労したぜ。
まぁハヤシダキューシャで生活する上で、人間の使う言葉の意味や文字を解読するのは暇つぶしに最適だったから出来るようになったんだが。
でだ、何故こんな事を話しているかと言うと、オールカマーというジューショーを勝ってから、俺の周りをうろつくニンゲンが目に見えて増えたからだ。
そして、キュームインなどを捕まえては話しかけたり、ハヤシダキューシャで俺を中心に写真を撮っていったりした。
ちびについてもそこそこ関心を呼んでいるようで、この前イワオが能力試験を受ける段階まで持ってこれたと話しているのを聞いた。
いよいよと判ったからか、最近のちびは掛かり気味だ。
レース走ってもあれじゃ負けるのではないだろうか。
ついでに今まで何処に居たんだってくらいに見ず知らずのニンゲン達も、俺を見かけては声をかけていった。
例えば、応援している、みたいなそう言う感じの事だ。
俺が思ったのは、ぐるぐるに居ないニンゲン達も、ケイバの情報を追える態勢がニンゲン達には備わっていると確信を深めたことくらいだ。
俺達ウマが走ったぐるぐるは、恐らく全て情報として残されて、ニンゲン達はそれを参考に人気を決めている。
もしかしたら一頭一頭、全てのウマ達を管理しているのかもしれない。
注意深く周囲を観察すれば、カメッラと呼ばれる道具は様々な場所に多数配置されていることが判る。
それを映すモニタもあらゆる場所で散見できる。
興味深い映像も良く表示されるので、ウマの知らない世界をニンゲン達は踏破している事になるのだろう。
それはなんともまぁ、羨ましい事である。
とにかく、そうしてカネを賭けてオッズを計算し、そこから馬券といった形で応援する馬を中てて行くのがニンゲンの作った競馬という娯楽である。
勝ったら嬉しい、カネも増える、応援していたという感情を満足させる。
だから次も人気になる。 ぐるぐるで勝てば勝つほどニンゲンの中でそのウマの価値は上がる。
そして―――歴史に残る。
歴史に残ったウマ達はいつまでもニンゲン達の情報の中に留まり、時に参照し、今でも話の中で比較したり、参考にしたりしている。
これは推測ではなく、ニンゲン達を見て来て理解した確信だった。
俺はちびが目指しているところのゴールは、この競馬の歴史に名を刻むことなのだろうと思った。
ちびは此処まで詳細に理解はしていないだろうが、到達すべき頂きという意味で同義であろう。
そして、俺はというと、そこまで感情を揺さぶられなかった。
特に歴史に名を残したいわけでも、ニンゲン達にとっての特別になる気も、ぐるぐるで名を挙げて栄誉が欲しいわけでもない。
それよりも見た事の無い、知った事の無い未知を視ること、識ることの方が何倍も心を惹かれるというものだ。
走る という事そのものが俺達ウマには本能として備わっている。
それは実体験でもそうだし、恐らくぐるぐるを走らせているニンゲン達もそれを利用して競馬を成立させている。
ニンゲン達にとっては仕事でもあり娯楽でもある。
俺達ウマにとっては本能であり、快楽でもあった。
だが何よりも重要なのは 『走る』 ことそのものではなく、そこに意味があるかどうかだ。
俺はオールカマーで本能と快楽の狭間で、光を見た。
それはレースを走らないニンゲンには決して到達できず、レースを走るウマでも簡単には達成できない領域と言って良いと思う。
光の領域。
ニンゲンだけでは到達できず、ウマであっても容易ではない、ぐるぐるで命を揺らした先に在るナニカ。
俺はウマだからニンゲンがモニタに映しているような場所、自分から未知なる世界へ行くことはできない。
ニンゲンがウマを世話し、管理をしているからだ。
だからこそ今、俺が最も期待を抱いている世界は、あの光の領域を越えた所にある。
もしニンゲンがそこに到達できる可能性があるとすれば、俺と共に『走る』ことができるシュンだけだろう。
ぶるり、と身体を震わせてフンスっと鼻息が荒ぶる。
誰も到達したことのない世界に、俺は行ける。
自由自在に飛び回ることが出来る。 それこそ、この自分の脚で切り拓けるのだ。
心臓の中に火鉢が突っ込まれたかのように熱くなる。
おいおい、まだぐるぐるを走る日じゃないぜ。
そう頭の片隅で冷静さを保とうとするが、どうしても落ち着かなかった。
発汗が多かった為か、キュームインやイワオが心配している。
またひとつ、ぐるぐるの日が近づいてくる。
なぁ、ニンゲンは俺にどんな夢を乗せて見に行こうとする。
俺はどれだけ勝てば、競馬を走る俺に期待を膨らませたニンゲンは満足するんだ?
それは多分、果ての無い望みだ。
ちびが勝ち続けたらどれだけのニンゲンがちびに夢を託す?
ブッチャーもどきやスターのガキ、あいつらが背負ってる夢はどれほど大きいのだ?
それはウマにとって重荷になるか?
ニンゲンの為に走るウマにとってはそうだろう。
ニンゲンの為に走るのは果てが無く困難だ。 良くそれで走る気になるなと俺は思う。
『ついで』 で良ければ、ニンゲンの夢を運ぶのも悪くはないがな。
オールカマーでは何よりも得たかった、競馬に勝つという想い。
それは本物だった。
だが、今は。
今は 『勝ち』 にこだわるより、 『光の先』 へ俺は行きたい。
またひとつ、陽が昇り星が瞬く。
マイルチャンピオンシップ南部杯。 ダートのマイル戦。 10月9日 1600。
砂のぐるぐるに戻って、ブッチャーもどきとスターのガキが相手になる。
挑戦、リベンジ、決戦...などと煽られ、イワオはインタビューってやつを受けていた。
勝つ自信しかないとイワオは豪語していた。
シュンは、ローテーションの事ばかり突っ込まれて苛立たし気に文句を言っていた。
勝ったことのある馬が居るんだから、ワイルドケープリに出来ない道理はない、などと向けられた質問に腹立たしく答えている。
勝手なもんだぜ。
勝つ、負けるなんて実際に走ってみてから分かる事だっていうのに。
アイツ等と走ることになるのなら、間違いなく命を揺らす場所へ行けるだろう。
そこから先の世界を、俺は見に行ける。
それだけ分かれば、十分だった。
またひとつ、陽光浴びて鳥が騒ぎ、夕焼けに虫が鳴く。
シュンが俺の傷痕を撫でながら気合をいれ、バボウから消えて行った。
イワオが俺を見て、さぁ勝ちにいこう、と期待を胸に首を叩いて。
ウマヌシのヒイラギが神妙な顔をして両手を合わせ、俺を見送った。
そしてまたひとつ、夜を超えた。
ぐるぐるを走る時が来た。
キュームインと共に馬体検査を行う為に、装鞍場へと引かれて行く。
中に入ると真っ先に飛び込んできた漆黒の馬体。 ダークネスブライトと呼ばれるブッチャーもどき。
澄ました顔をして一瞥してきて、僅かに威嚇してくる。 少し前までは俺の事など、歯牙にもかけなかった奴が、ちらちらと視線を寄越す。
視線を巡らせば少し先には栗色の馬体を揺らし、装具の準備をしているネビュラスターのガキ。
何時でもどこでもアイツは変わらないな。 相変わらず鼻息荒く、周囲に自身を強く誇示しているのは己を奮い立たせる為なのかい?
小さなぐるぐる、パドックへと入っていく。
やや暗かった室内から陽の入口に照らされた外へとキュームインが俺達ウマを引っ張っていく。
太陽の眩さに目を細め、俺はニンゲンの集まる下見所をぐるりと眺めた。
赤焼けの光がニンゲンとウマを照らす。
昔と違って随分とニンゲンは俺へ向ける視線に熱がこもっていた。 シバのジューショーを勝てばこうなるようだ。
スターのガキが俺を見て、ブッチャーもどきを見て、ふんぞり返った。 相変わらず誰が相手でも自分が一番だと主張する。
ダークネスブライトの目が鋭くなって、俺とスターのガキを睨む。 かつて見た時よりも、その身体から立ち昇る黒の気炎を意思を持って揺らして威圧する。
俺はそいつらを無視し、ニンゲンの方へ顔を向ければウマヌシのヒイラギが真剣なまなざしで俺達の様子を伺っていた。
止まれ。
聞き慣れた掛け声と共にイワオとシュンが近づいてくる。
俺は大きく息を吸い込んで、ゆっくりと吐き出した。
「ブルルッ」
ニンゲン達よ、俺の背中に好きなだけ夢を乗せていけば良い。
ウマたちよ、俺を威嚇してぐるぐるを競うのも好きにしな。
勝ち負けの星を勝手に追っていれば満足するなら、そうしていろ。
―――俺は命を揺らすその先の光にしか、興味はない。
「行こう、ワイルドケープリ」
あぁ、始めよう。
俺だけが知る世界へ、行くために。
jpn1 / マイル CS 南部杯
盛岡競馬場 ダ1600m 晴れ/良 全12頭 16:10 発走
1枠1番ネビュラスター
1枠2番ネイヨンマウンテン
2枠3番ヤミノシカク
2枠4番ダークネスブライト
4枠5番ホワイトシロイコ
4枠6番シンディナイス
5枠7番パラソルサン
5枠8番ワイルドケープリ
6枠9番ウェディングコール
6枠10番 テンポダルテカシ
7枠11番フェイスボス
7枠12番ディスズザラポーラ
「さぁ、発走まであと僅かになりました、メインレース第10R、夕影に映し出されるのは集いましたる優駿12頭です、盛岡競馬場。
歴史あるこのレース、古くは戦国の世、レース名にもなっている南部杯の名を南部家の末裔の方へ許可を取って名付けられ、その名が連綿と続いて競争が行われております。
今年もまた、盛岡競馬場のGⅠ競争として第××回マイルチャンピオンシップ南部杯。
今のダート戦線を走る有力馬、いわばダートのトップ層がずらりと並びました。
錚々たる面子です。 レース前からもかなりの話題を攫って世間の注目も非常に強く集めております。
パドック、返し馬が終わり、態勢整えばいよいよ発走となります」
解説として呼ばれている保井 佑志は長年、地方の競馬を見てきている。
さきほど全頭のパドックの解説を終えてアナウンサーの言葉を聞きながら、息を吐き出していた。
胸の内で思う事は、感嘆の一言。
自身で今しがた解説を行っていたパドックのことに対してだ。
jpn1、いわゆるGⅠ競争となれば何処の陣営も馬の能力を完全に引き出せるように仕上げてくるのが常である。
勝利をする為に、できる限りの努力を行い、レースに勝つことを命題として鍛え上げ、体調の管理をしてくるのだ。
それは今まで見て来た事と何も変わらない物だったが、今回はそれに加えてレースを走るという馬達のやる気と緊張感がモニター越しでも迫真に感じられた。
最も歩様や態度で目立ったのはネビュラスターだ。
明確にダート競争に三冠レースが設けられてからどれほどか。
10年ぶり史上2頭目となるダート三冠馬は目立つ明るい栗毛の馬体であることを差し引いても、解説していて喉がなるほど素晴らしい仕上がりだった。
間近でネビュラスターを観察することは保井は初めてだったが、これほどダート界で馬体が映えた馬は記憶にない。
威風堂々たる佇まい。 心配された気性面での激しさは鳴りを潜め、ただただレースそのものに集中しているやる気が感じられる。
夏よりも一回り膨れ上がった美しい筋肉が、決して大柄ではない馬体を大きく大きく見せている。
激しく厳しい調教を課すことで有名を馳せる雉子島厩舎が、自信をもって送り出すだけあって、馬体の厳つさは飛びぬけていた。
闘争心を胸の内に秘めているのが判るほどギラついた目。
零れ出そうなほど漲る気迫が、歩様となって表れていた。
前評判に違わず、このマイルチャンピオンシップ南部杯を征していくかも知れない。
言わずもがな、前人気でも今日のオッズでも一番人気、帝王賞でそのネビュラスターを半馬身差で圧倒した大本命のダークネスブライトもまた、抜群と言える。
本当にこれが体調面に不安を抱えている馬なのか、と思わずにはいられない。
昨年の南部杯でも黒々とした青鹿毛の迫力のある馬体に圧倒されたものだが、今年はそれに輪をかけて大きく見える。
築き上げた実績と世界を走ってきた結実か。
貫禄の様な物がその大きな身体から発せられ、夕暮れ間近の赤の日差しに溶け込み滲み出ているような錯覚さえ覚えた。
モニター越しでさえ、保井はその威容にただただ圧倒されるだけであった。
ネビュラスターやダークネスブライトの影に隠れがちだが、ペースを作る逃げ馬のパラソルサン、ディスズザラポーラの二頭も足取りが非常に軽く、気合乗りが素晴らしい。
展開次第では逃げ馬であるこの二頭が他を出し抜いて、そのまま簡単にゴールをしてしまうかもしれないと予感してしまう。
南部杯にだけ的を絞ってきたというネイヨンマウンテンは陣営の気迫が乗り移ったかのようで見劣りしない。
どこを見ても、どの馬を見ても、ただただその状態の良さに息を吐き出すしかなかった。
感嘆と、称賛を込めて。
長く競馬を見て来た。 パドックも数えきれない、レースもどれほどこの目で見て来たか。
そんな保井でも間違いなく言えることは、このマイルチャンピオンシップ南部杯は過去でも類を見ないほど、全ての馬が万全の状態であった。
珍しいだろう、馬は生物だ。
調子の良し悪しは必ず出てくるものだ。
メンタルの部分で、フィジカルの部分で。
それらが完調であるというのならば、後は本当に展開と騎手の腕による事になる。
そんな保井が予想をするとなれば、ただ一頭、強いて挙げるとするならば。
「ワイルドケープリ……」
全ての馬が好調な様子を見せる中、泰然とパドックをゆっくりと回る姿が異様に映った。
別に他の馬と比べてパドックでおかしな所は何もない。
何なら、一番に絶好調なのはこの馬なのかもしれないと思うくらい、その動きは滑らかで迫力があった。
普段ならばパドックで物見をする集中の無さが、今日はまったく無く、淡々とレースが始まるのを待っている様にすら思える。
芝のレースを走って何かが変わったのか、それとも元からそうだったのか。
あまりにもレース前だというのに自然な様子が景色に溶け込み過ぎていて、他の馬と比べていっそ不気味に見えたのだ。
とはいえ、言ってしまえばパドックはその馬のお披露目会場に過ぎない。
実際に走ってみる迄は分からない所があるのは確かだ。
保井は水を口に含み、目を閉じる。
楽しもうじゃないか。
おそらく、マイルチャンピオンシップ南部杯の中でも稀有な、最高の馬達が揃った最高峰のレースを。
目を開けてゲートに収まりつつある優駿たちを見据える。
保井の口元は、自然と弧を描いて仕事であることを忘れそうになりながら、期待に胸を膨らませていた。
「さぁ、ゲートに続々と各馬が収まっていきます。
一番人気は連覇を狙うダークネスブライトと川島、築き上げてきた勝利と紡いできた人馬の絆をここでも見せつけ期待に応えるか。
さぁ、ネビュラスターが入ります。 二番人気のダート三冠馬、完全に仕上がった馬体を引っ提げ、ダークネスブライトとの決着に臨みます。 世代交代を為すことができるか。
テンポダルテカシ、ホワイトシロイコ入っていきます。
オールカマーを勝利し競馬界を騒がせたワイルドケープリも、ただいま入りました。 この馬の末脚は本物です、3番人気です。
最後にディスズザラポーラが入ります。
農林水産大臣賞典、マイルチャンピオンシップ南部杯、まもなく発走です。
………
……スタートしました!
揃ったスタート、綺麗に並んだ。 さぁ先行争いです。 前に行ったのは勿論この馬です、ディスズザラポーラ、外から外からぐんぐん前に前に押して行きます。
追って追ってパラソルサン、ディスズザラポーラの後を追いかけて2番手に。
その後ろは混戦している、⑥シンディナイス、⑨番ウェディングコール、ダークネスブライトはここに居ます。
ダークネスブライトは今日は5番手~6番手、中団先行集団で競馬を進めそうです。
②ネイヨンマウンテンがその後ろにぴったりと、ダークネスブライトを見るようにマーク。 ③ヤミノシカク、⑤ホワイトシロイコと続きまして⑩のテンポダルテカシが居ます。
さぁ、これは作戦でしょうか、最後方には定位置となっているワイルドケープリ。 それを見るようにネビュラスターが併走する様に走っております」
ネビュラスターの鞍上、田辺勝治には一つの不安があった。
粉塵舞う砂の世界でネビュラスターを脅かす馬が居るとすれば、それは現ダート王者と呼ばれるダークネスブライトではない。
この年老い始めているワイルドケープリという馬の末脚の方こそ、最も恐れなければならない存在だと思っていた。
かしわ記念、帝王賞という前走がJRAリーディングに常連となる名ジョッキーの確信させる材料に至ったからだ。
それはワイルドケープリという馬がオールカマーを獲ったからではない。
田辺は結果だけで判断するほど、自身の経験と直感を軽視はしない男である。
それに―――ワイルドケープリのヤネである林田駿。
かしわ記念、帝王賞と走っているが、その頃に比べてジョッキーとしての肝が据わってきた。
顔を見ればわかる。
ワイルドケープリという馬と出会った事で、騎手として成長したのだろう。
同じ騎手だからこそ、名馬と関わり成長する姿を自他問わず多く見て来た田辺だからこそ、発見できた事実だ。
ダークネスブライトを甘く見ている訳ではない、如何にネビュラスターが最高の能力を持っていたとしても、この南部杯に向けて限界まで鍛え上げてきたと言っても、仕掛けどころを間違えれば間違いなく届かない二の脚がダークネスブライトにはある。
だが、真に恐れるべきは最後の爆発力で0コンマ数秒で馬身差を縮めて迫ってくるワイルドケープリだ。
この馬の加速と速度は異常だ。
その切れ味と迫力は、日を追うごとに迫真に迫っている。
かつて見てきた名馬と、このワイルドケープリという馬に差が無くなっている。
手綱を振るい、ネビュラスターを若干ワイルドケープリの前に出るように調整。
吐く息が荒くなった。
田辺は自らを落ち着かせるように深く息を吸う。
仕掛ける場所を間違えられず、ワイルドケープリを御する位置にいなくてはならない。
ネビュラスターが勝つための最善を手繰り寄せる。
この尊大で闘争心溢れる馬には勝利こそふさわしいからだ。
ネビュラスターが率先して有力馬をマークするのはダメだ、変幻自在のブライトの脚質に対抗するのが難しい。
帝王賞ではブライト鞍上の川島にしてやられた。 前に追っつけすぎると末脚が伸びずにネビュラスターの勝負根性に頼り切りになってしまう。
「さぁ、上手くいけよぉ……?」
ワイルドケープリの速度がぐんと一段階上がる。
田辺は即座に反応して右手に持っている鞭をネビュラスターの目の前に差し出し、一つだけギアを上げて対応する。
林田駿、手に負えなくなる前に、ワイルドケープリは潰させてもらう。
ここを勝たせてしまったら、本当にネビュラスターの大きな壁として君臨してしまうだろう。
視界の奥でダークネスブライトがネイヨンマウンテンに食らいつかれ、徹底マークを受けながら最初のコーナーに入っていくのが見えた。
そうだ、一番人気のマークは他に任せればいい。
まずは一番の脅威を封殺させてもらう。
想定通りの滑り出しに田辺は上唇を一つ舐めた。
駿は今までに無いほど馬上において冷静さを保てていた。
オールカマーを獲った時もそうだったが、不思議なほど落ち着いてレースを俯瞰できていた。
ワイルドケープリを完全に信頼し、その邪魔をしない事を至上命題にした時から、本当の意味で腹が括れたからだろう。
だから判った。
ネビュラスターがワイルドケープリをマークしていること。
ワイルドケープリの外に位置して、コーナーで内に閉じ込めるつもりであることを。
ゴーグルの奥で目を凝らす。
ワイルドケープリのリズムに同調しながら、この夏に篠田牧場で鍛え上げた体幹でバランスを取りながら、最善を探す。
視覚で、そして脳の中で態勢展開を明確に描く。
先頭争いはディスズザラポーラが勝ち取った。 パラソルサンは既に二番手に居ながら意気が落ち込んでいる。
ダークネスブライトとネイヨンマウンテンが競り合ったまま先行勢の中では抜けだしそうな勢い。
前に居るのがヤミノシカク、テンポダルテカシ。
ワイルドケープリのすぐ外にいる田辺さんには見えているはず、蓋をするならこの前から垂れてくる馬をコーナーで使ってくる。
そこが限界のはずだ。
いかにネビュラスターが圧倒的な爆発力と加速力を持っていようと、それ以上付き合えばダークネスブライトには届かない。
そうだ、ワイルドケープリだって400から仕掛けなければ難しい。
手から伝わる感触にちらりと自分の馬、ワイルドケープリの様子を窺えば耳を左右に振ってハミを噛んでくる。
進路の要求。
視界を遮られたワイルドケープリの視野では状況の把握に限界がある。
「ああ、分かってる」
自らがワイルドケープリと走る為にやらねばならない事は分かっている。
この砂嵐叩くゴーグルの奥でワイルドケープリの眼となって、邪魔をしないこと。
やるべき事さえ判っているなら、恐怖や緊張、不安や焦燥と無縁で居られることに駿はワイルドケープリから教わった。
ただワイルドケープリの邪魔をしないことこそが答えなのだから。
「ナベさん、前なら何も俺は出来なかった」
最後のコーナーを抜けて、加速すると見るや田辺はネビュラスターでワイルドケープリの蓋をするように動いてくる。
垂れてきたテンポダルテカシ、内を走るワイルドケープリの減速を確信したんだろう。
右鞭を唸らせてネビュラスターにゴーサインを送るのが、まるでコマ送りのように視界の端で確認できた。
さすが、トップジョッキーだ。
見事としか言えない展開づくりと、仕掛けどころだ。
こんな所で帝王賞の前に夢に出てくるほど、ワイルドケープリと走る可能性がある馬のこと、騎手のことをしこたま調べていた情報が、知識が生きた。
リーディングを争うジョッキーを出し抜くことが出来た。
加速している―――だが、ワイルドケープリとネビュラスターの前では垂れてくる形で進路をふさいでいる内③ヤミノシカク。
そして外の⑩テンポダルテカシ。
かしわ記念でもネビュラスターの進路を塞ぎ、この南部杯でも俺とワイルドケープリの進路をふさごうとしている。
だが、この③ヤミノシカクには一つの特徴がある。
スパート時に必ず、外に一つ。
1頭分の隙間を開けて外に膨らむという特徴がある事を、駿は知っていた。
「誰だろうがワイルドケープリの邪魔はさせねぇよ!!」
駿の意思が感情を乗せて首を押す。
一欠けらの躊躇いすらなく、ワイルドケープリが駿の指示に応えて更に内々に切り込んだ。
田辺の見開いた目が、ゴーグルの奥から覗けた気がした。
金具と鐙、ラチと馬体が擦れ合い、コーナーを異音の残響を残し高速で駆け抜ける。
挟まれた左足に痛みの信号が駿の脳裏に走るが、意に介することなくスパートを指示。
外からネビュラスターが、内からワイルドケープリが、二筋の流線となってダートの舞台に砂塵の弧線を描いた。
―――ったく、簡単に仕掛けられやがって、毎回無茶する羽目になるじゃねぇかシュンの野郎
ほんのちっとだけビビったぜ、と首を深く下げて鼻息を荒くする。
内も内。
擦れ合うアブミの音に、③が驚いて斜行したくらいだ。
余りに強引かつ覚悟のいりそうな道を示されたのだから、少しくらいアンジョウに文句を言っても良いだろう。
だがまぁ、上等だ。
俺はこの命を揺らす場所にまた、身を沈めたかった。
強引に掬ってぶち開けた視界に捉えたのは歩いているかの様なウマ達を抜き去って開いた先。
薄雲を透かして赤く輝く斜日の砂道。
直線を向いて真正面に浮かび上がった空に輝く太陽の影。
前を行くのは黒のアイツだ。
ダークネスブライトが背負っているんじゃない。
この直線を向いてようやくダークネスブライトが背負っている様に見えた影の正体が理解できた。
かつての記憶を映し出していたのは俺自身だった。
命を揺らす場所。
そしてウマたちがそこに到達することの意味。
―――ブッチャー……
そう。
此処こそが命を揺らす場所。
砂の舞台で俺はこの場所を知った。
芝の舞台で俺は走る事を知った。
その色が混ざり合った世界の中で俺達ウマはゴールを目指す。
誰よりも速く、誰よりも強いと証明する為に。
ダークネスブライトが少し先を走る。
漆黒の気炎を砂塵に纏わせ、真っ黒にこの砂の大地を塗りつぶす。
何物も寄せ付けないかのように、前に走った分だけ黒色がどこまでも伸びて行く。
そんな黒に呑みこまれていくウマたちの中。
ネビュラスターが揺れていた。
栗色の流星となって、塗りつぶされた漆黒の砂塵の中。
ネビュラスターの馬体の色と同じ、ハッキリと判る栗の黄色が、弾丸のように真っすぐに真っすぐに突き抜けて漆黒を切り裂いていく。
命を揺らす混ざり合った色の中で、ハッキリと視認できるほどの輝きを放つダークネスブライトと、ネビュラスターの色彩。
そんな奴らの先に。
遥か先に。
真っ白に染まる視界が、俺を埋め尽くして。
黒くたくましく、そして俺がひたすらに追っかけてきた背中が何馬身も奥に先頭で駆け抜けている姿を映し出す。
あのゴールを目指して。
この砂の世界で、命を揺らす世界で。
ブッチャーが走っている。
―――あぁ 俺の憧憬よ
俺をぐるぐるの世界へ導いた偉大な背中よ
そのタフで大きな背を、俺はずっとずっと追いかけていた
目を逸らさないように、その背中からはぐれない様に、見失ってしまわない様に。
遅かったかもしれないけれど
待たせてしまったかも知れないけれど
何度も何度も必死に脚を伸ばして、やっとここまで辿り着けたよ
だけど、もういいんだ
その背中を見せて、俺を引っ張ってくれなくても大丈夫だ
ほら、俺はもうちゃんと自分の脚で走れる
ぐるぐるを走ることを。
シュンを乗せて走ることを、俺はもう出来るようになった。
なぁ、見えているかブッチャー
なぁ、見えているか、この場に集う、命を揺らす全ての者たちよ
見えているか
見えているか、あの眩耀の空が―――
赫灼たりて何もかも呑みこんでいこうとする、あの輝きが!
知らないのなら、仰ぎ見ろ
遠く遠く蘇るその在りし日の駿影を追い越して
どこまでも遠くまで世界の全てを白く灼き焦がす光の
その先の――― 『領域』 へと
ブッチャーッ! 俺は、アンタを超えて行く!!!
大きな鹿毛の馬体が、白く染まった世界で漆黒の追憶を抜き去っていった。
「残り300を切った南部杯! 先頭はダークネスブライトだが、ネビュラスターがここで捉えるか!
2馬身開いて後ろからワイルドケープリ! 内からワイルドケープリが凄まじい加速! オールカマーで見せた猛烈な末脚が、この南部杯でも爆発しているぞ!
頭一つ抜き出たか、ネビュラスター力強くダークネスブライトを交わしたが粘る粘る!
内でダークネスブライト粘っていく! アタマ一つ分譲らないネビュラスター! ダークネスブライト! ネビュラスター! ネビュラスターか!? ダークネスブライトの意地の粘りだが突き出た! アタマが突き出た!
ネビュラスターだ!? ネビュラスターで決まったか!? ダート王者を破るか、ダークネスブライトの更に内からワイルドケープリが突っ込んできている!! どうだ!? ネビュラスター世代交代決まったかぁーーーーー!?
これは! これは! これはどっちだ!? 分かりません! まったく分かりません!
ほとんど同時にネビュラスターとワイルドケープリがゴール板を通過しました!
内ラチ沿いのワイルドケープリか!
それとも外のネビュラスターか!
悍ましいほどの切れ味で馬身差を縮めて強襲したワイルドケープリ! 最後に一つ力強く伸びて猛追を凌いだかネビュラスター! ダークネスブライト必死に粘りましたが頭一つ遅れました!
ああっと、吠えている! ワイルドケープリとネビュラスターが大きく嘶きながら駆けております!
マイルチャンピオンシップ南部杯、凄まじい直線勝負になりました。 写真判定です。
電光掲示板には3着ダークネスブライト、4着にはホワイトシロイコ、5着にはディスズザラポーラが確定しておりますが……一着となったのは一体どちらでしょうか。
これは際どい勝負になりました。 どちらが勝っていてもおかしくない大接戦。
タイムは1.31.1……1.31.1!? とんでもない時計です! 1.31.1です! レコードです!
ダートの1600で凄まじい時計を叩き出しました!
振り返りますと第3コーナーで先行抜け出したダークネスブライトがそのまま決めるかと行った所でネビュラスターとワイルドケープリが追うような形、結果粘れずにダークネスブライトは3着でした。
そして……おっと、ワイルドケープリの鞍上、林田駿ジョッキーが下馬しています。
大丈夫でしょうか? 激しいレースだっただけに心配です。
ただいまゴール直前の様子が大型モニターに映し出されておりますが……これは……これはネビュラスターが凌いでいる様に私には見えますが、果たしてどうでしょうか」
………
……
心臓が跳ね上がって身体全身から血の気が引く。
林田巌は立ち上がって震える手で双眼鏡を掲げ、覗き込んだ。
向こう正面半分まで緩やかにペースを落としていったワイルドケープリのヤネ、息子の林田駿が、ワイルドケープリから下馬したからだ。
最後の直線、ネビュラスターが一足先に突き抜け、それを内から追いかける形になったワイルドケープリ。
場内アナウンサーが実況で叫んでいた通り、ホースマンとして40年も馬を見て来た巌でも、この世のものとは思えないほどの脚でゴールめがけて突っ込んできた。
まさか。
かつてのトラウマが鮮度を持って脳裏に蘇る。
駿はワイルドケープリの足元を見ていない。
見ているのは顔だった。
ワイルドケープリの馬具を支え、顔を見ている。
なんだ?
巌はワイルドケープリの顔へと視線を這わせた。
その瞳から汗とは違う。
涙を流し、レースを終えた身体を震わせていた。
双眼鏡を下ろして、胸をなでおろす。
少なくとも、早急な処置が必要な怪我ではなさそうだ。
眼鏡の奥に指を差し込み、熱くなった両眼を押す。
良かった。
顔を上げて巌はもう一度、砂のトラックでワイルドケープリと林田駿を見守るように視線を向ける。
ワイルドケープリは顔を上げ、駿はその首を優しく撫でていた。
陽が沈んだ盛岡競馬場の砂の上で、容易に見て取れる発汗した鹿毛の馬体が、人口の光に照らされて輝いているようだった。
「出ました、約6分間に及ぶ写真判定の結果!
ワイルドケープリだ!
一着はワイルドケープリ確定! 二着はネビュラスターだ!
ダート王者を、そしてダート三冠馬を、遂に撫で切った驚異の7歳追い込み馬!
ワイルドケープリが一着です!
砂の大舞台、マイルチャンピオンシップ南部杯の盛岡競馬場の秋空に沈んだ太陽と入れ替わるように。
GⅠ制覇という大きな大きな、ワイルドケープリという日の出が上がりました!
ワイルドケープリ、堂々の勝利です!」
どこまでも、走ろう。
ウマとしての生き方を教えてくれた。
偉大なるアンタの命を、背に乗せて超えていこう。
踏みしめた大地から音が轟く。
蒼と黒に染まった空が、夜を報せ、また陽が昇って明日が来る。
震えた身体からは、抑えられない感情が全身の皮膚を伝ってあふれ出す。
今すぐにだって構わない。
―――いつでもまた、俺は走れる
ブッチャーでさえ知らなかった。
他のウマ達でさえ届かない。
追憶を振り切って、命を揺らす光の先へと。
どこまででも走ろう。
自らの脚で担おう。
この先の未知を切り開いく為に。
―――さぁ、次の俺のぐるぐるは何処だ
ワイルドケープリはようやくそこで上げていた頭を下げて、盛岡競馬場のスタンド席へと向けて脚を回した。
jpn1 / マイル CS 南部杯
盛岡競馬場 ダ1600m 晴れ/良 全12頭 16:10発走勝ちタイム 1.31.1 レコード
1着 5枠8番 ワイルドケープリ 牡7 林田 駿 人気3 厩舎(園田・林田巌)
2着 1枠1番 ネビュラスター 牡4 田辺 勝治 人気2 厩舎(東京・雉子島健) ハナ
3着 2枠4番 ダークネスブライト 牡5 川島 修二 人気1 厩舎(栗東・羽柴 有信) アタマ
4着 4枠5番 ホワイトシロイコ 牝4 町田 尚哉 人気5 厩舎(東京・吉岡真治) 1馬身
5着 7枠12番 ディスズザラポーラ 牡4 牧野 晴春 人気3 厩舎(栗東・鯨井恭二)ハナ
5着 ディスズザラポーラ(牧野 晴春)
「メンタル的に先の帝王賞でもそうだったように、先頭は絶対に譲れない馬なので、パラソルサンと競る事になりました。
ダークネスブライトやネビュラスターなどが後ろから追ってくるのでリードを取っておきたかったんですが、パラソルサンに上手く粘られて
後続との距離を取るには難しいコーナーへ入ってしまいました、外枠だったのが最後まで響いてしまいました」
4着 ホワイトシロイコ (町田 尚哉)
「大きなところで掲示板をしっかり確保できる実力は、間違いなく一線級であることを証明していると重います。
切れ味勝負ではやや不利であることはそうですが、長く使える脚でスパートさせられれば1着を獲れることもあるかと思います。
展開に泣かされていますが、そこをついて行けるようになれれば勝ち星は遠からず手中にできると期待しています」
3着 ダークネスブライト(川島 修二)
「激しいレースでした。 スタートからネイヨンマウンテンに削られ続け、ブライトがそちらに意識を割かれてしまい余力がありませんでした。
何度か馬体もぶつけられて、ブライトの集中力が乱れてしまった。 結果的に苦しい競馬をブライトにさせてしまい申し訳なく思っています。
自在性の脚質を活かして、私がもっと判断を早くできれば違ったかもしれません。 次の課題を見据えて頑張りたいと思います」
2着 ネビュラスター(田辺 勝治)
「勝ったと思いました。 大変なレースでしたが、一番大変だったのはネビュラスターがウィナーズサークルに向かおうとするのを止めることでしたけど(苦笑)
展開や作戦は想定通りに進みましたが、ワイルドケープリの切れ味に屈しましたね。
今回は初めからワイルドケープリが怖いと思っていたので、コーナーで内に刺さった時は行けると思ったんですが、林田ジョッキーの肝の太さには参りました。
勝ったワイルドケープリが一枚上手だったと思います。 ネビュラスターは本当に頑張ってくれましたよ、勝ち時計が証明していると思います……ええ、悔しいです。
ネビュラスターの為に、どうしても勝ちたかったので……首の上げ下げがなぁ……不運でした」
1着 ワイルドケープリ(林田 駿)
「ナベさん(田辺 勝治)が積極的に絡んできたので何とかしなければとは思いました。
苦しいコース取りをしてしまったのは承知しています。 まだまだ未熟な自分を馬が助けてくれていますね。 ワイルドケープリを助けられるように乗るのが私自身の課題です。
勝ったことに対しては特にありません。 自分がミスをしなければワイルドケープリが勝つと最初から思っていました。
下馬したのは、ワイルドケープリの様子が普段とは違ってレース後に動きを止めてしまったので確認する為でした。 これから精査するかと思いますが、足元や馬体に異常は特にないと思います」