第1話
初投稿です。
「お母さんとお父さん離婚するから」
夕食が終わり、リビングのソファでくつろいでいると、お母さんがそう言った。お母さんの隣には父さんが少しうつむきながら立っていた。2人が並んでるところなんて、久々に見た気がする。
離婚。今時珍しくはないし、うちの親もいつかはするだろうなと思っていた。だから、あまりショックではない。
「あんたたちはお母さんについてくるのでいいよね。まあ、お父さんと一緒がいいならそれでもいいけど。お母さんと一緒でいい?」
隣のソファに座っていた、兄の颯太が無言でうなづいていた。俺も同じようにうなづく。
「それで離婚したらもうこの家には住めないから、引っ越しをしなきゃいけないのよ」
そうだ。親がいつか離婚するなんてわかってたこと。俺にとって重要なのは、この引っ越しだ。
「いろいろと物件は探してるんだけど、この辺にいいのはなくて、だから1駅か2駅離れた場所になると思う」
まじかよ。ていうことは。
「颯太はもう高校生だから関係ないけど、大翔は中学生だから転校することになっちゃうわね」
「まじかよ」
自然と思っていいたことが口からでた。そして、父さんは一言もしゃべらなかった。
ー-
離婚の発表からしばらくして、いろいろと決定事項が増えてきた。
引っ越しをするのは、俺の中学校の2学期の終業日である、12月25日になった。
クリスマスに引っ越しするってなんかいやだな。絶対ケーキ食べれないじゃん。
今は9月なので3か月くらいしか残っていない。あと1か月以内で、新しい家を決めるとお母さんが言っていた。どうやら、俺の転校はほとんど決定しているらしい。最近はしょうがないなと思い始めてる。
そして、父さんは1人だけ先にこの家から出ていくらしい。荷物を段ボールにまとめていた。
「なあ、大翔。父さんの部屋にある漫画どうする。売ってもいいか?」
「え、ああ。売っていいよ。もともと父さんが買ったのだし」
「そうか。じゃあ売ろうかな」
父さんの部屋には漫画がたくさん入っている本棚があった。俺が生まれる前に完結したヤンキー漫画とか、今も連載してる少年誌の人気作とかだ。もう飽きるほど読んでるし、いいかなと思った。
それから数日後、父さんは出ていった。
いつ出ていくかとかも聞いてなっかから、荷物を持った父さんに、
「それじゃあ、元気でな」
と頭をなでられたときに、出ていくことに気づいた。俺は父さんに何も声をかけられなかった。たぶんしばらくは会わないんだろうな。何ケ月くらいなんだろう。1年とかかな? ていうか父さんはこれからどこに住むんだろう。てか、仕事は?
夫としては良くなかったのかもしれないけど、父親としては結構好きだった。
でも、今は父さんについて何も知らない。結局、父さんも他人なんだな。
ちなみに、父さんが漫画売ったこと知ったお母さんは少し怒っていた。
「どうせならもらえばよかったじゃない」
俺はそうは思わなかった。