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アオダイショウ

あるところに二人の男がいた。

名前はそれぞれ、茂八と一八と言う。

茂八は時代の自由をもって、己の行動の抑止の一切をしないような男で、こと女、酒を金にものを言わせて道楽の限りをつくすような者である。

対して、一八はそれに比べれば非常に小心者であったが、茂八とは打って変るその立ち居振る舞いと出で立ちは、上下の人の心の隙間に入りこみ、白アリのように蝕み、卓越した巾着切りでも取りえない、腰ぎんちゃくとして生きることに秀でた男だった。


茂八もこの男の一つの立て看板であったが、茂八自身もそれについては百も承知であり、それでも切らない関係である。


それもそのはずで、茂八の欲の限りを満たすことは一八無くしてありえなかったからであり、それは上記の一八の能力よりの情報通のなせるところである。


こうした互恵関係にある二人の男はこの晩もふらふらと町を歩いていた。


「最近はどうも満ち足りないでいけない。うまい飯を食おうとも、女をいくら抱こうとも変わらない。心の病、悶々というものか。解決策として何かありはしないか、一八。」


「こんな話を聞きましたよ。アオダイショウなんて呼ばれる男の話なんですが。」


「アオダイショウ。聞かないな。それがどうした。」


「いや、これがですがね。私も又聞きに又聞きをしたような本当か分からない話ではあるんですけれど、友人の友人が言っていたそうなんですが、その男の体のある部分を浴場で見た人々がこぞってそう銘打ったということなんですと。」


「なるほど、それほどまでに立派でか。」


「足まで着かんところで、竜ではない、蛇だとされてるようで。そうはいっても男たちはみんな縮こまっちまう。」


「それは確かに恐ろしい。」


「そのアオダイショウ、そんななりしてるからもちろんいい女を嫁にもってるって話だ。」


「そんなにいい女かい。」


「ああ、そんなにだ。だが、止めたほうがいい。話はしたが、危険すぎる。」


「一八、おれぁ茂八だぞ。欲しいもんは何だって手に入れる。奇麗な女と聞いて引けるような男じゃない。身はどうであれ、肝っ玉は十分にあるつもりだ。」


「そんなものあったってアオダイショウにはさすがに敵いまいよ。万が一がある。」


「それほどかい。ではそうすればいいか。」


「技はどうだい。一つでもあれば少しは太刀打ちできるやもしれん。」


「寝技なら負けはしない。表の四十八なら網羅している。」


「表じゃいけないよ。アオダイショウは裏の人だよ。表の技でもってどうするっていうんだ。」


「大丈夫だ。表でもおれが使えば、相手はみんな鳴いて、堕ちるんだから。」


「みんな鳴いて、堕ちるんですかい。それほどまでとは知らなかったな。」


その夜はそこで会話を切り上げた。

次にあったのは、数日の後であった。


「アオダイショウの住処を聞き及んだ。今日、行くつもりだ。」


「本当に行くんですかい。」


「本当に行く。なんなら一八も来るか。顔の知る男を3人ほど呼んだ。抜かりはないぞ。」


「いや、行かないよ。」


一八は男たちを見送った。



数日後、一八は男たちが鬼籍に入ったことを知った。

一八には話を聞きにくるものが多かった。

「いや、私は止めましたよ。茂八がそれほどまでに悶々に本気だったと知りえなかったんです。」

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