第3話 少女
短めです
少女は心配していた。
育ての親の事もだが、1番の心配は弟の事だ。
たまに深夜に出掛けている事は、とっくに気付いていた。
それでも、翌朝にはケロッとした顔で食卓に現れる。
それも私に心配をかけないようにしているのだという事にも気付いていた。
何か危ない事をしているという事には気付いていた。
だが、それが彼の仕事なのだと察していたのだ。
自分が祖母から薬師の仕事を受け継いだ様に、弟も何かしらの仕事を受け継いだのだ、と。
祖母は謎が多い人だ。自分の事は全く話さない人だった。正直な話、名前も年齢も知らないのだ。
ほとんど稼ぎがないスラムの薬師が、何不自由無く2人も子供を養って行く為の金の出処さえ、少女は知らなかったのだ。
弟が何かしら知っているはずだが、少女は確認出来なかった。怖かったのだ。
それでも、こんな思いをするくらいなら聞いておくべきだったのかもしれない。
今更ながらに後悔していた。
「ねぇ」
「なんだよ?」
朝の食卓で弟と向き合って、その事を追及しようと何度も思って、それでも·····。
「なんでもない」
「なんだ、そりゃ」
怖くて聞けないのだった。
そして、少女が恐れていた事が起こってしまったのだった。