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第4話 裏にいる者

 笠取荘の隠し部屋に5人がそろっていた。霞は気を落としてため息をついてばかりいた。その姿を見た半蔵が尋ねた。


「どうしたのだ?」

「実は・・・」


霞は今までのいきさつを話した。彼女にはどうしてもこの件は解せぬことが多かった。


「お頭。おかしいとは思いませんか? だいたいゴーヤクなんてこの地球に入ってきていないはず。そんなものが美弥ちゃんの体から出てくるなんて!」


霞の言葉に半蔵はうなずいた。


「その件は確かにおかしい。この裏には何かある気がする。」

「裏が?」

「そうだ。ムラス舞踊には以前から多くの利権が絡んでいると聞く。美弥はそれに巻き込まれたのかもしれぬ。」


半蔵がそう言うと、疾風も横から口を出した。


「確かにそうです。いろいろと取材をしていますが、美弥の本大会出場には内部で色々あったようです。もしかすると・・・」

「調べてみる必要があるな。関係者を洗え。児雷也と佐助も手伝ってやってくれ。」


半蔵の言葉に児雷也と佐助は大きくうなずいた。




総督府ではサンキン局長がリカード管理官に報告に来ていた。それは例のムラス舞踊の選手の薬物の件だった。


「検査の結果、藤山美弥の体内からゴーヤクが検出されました。調べて見たところ、控室に置いてあった彼女のスポーツドリンクの水筒からも検出いたしました。美弥が水筒から自分で飲んだことは確かのようです。」

「他からはゴーヤクが見つかったのかね? その出所は?」

「それが・・・家宅捜索などを行いましたが、いまだに発見できておりません。入手経路もわかっておりません。美弥がまだ口を割りませんので。しかし昼夜を問わず攻めたてていますので吐くのは時間の問題でしょう。」


サンキン局長の言葉にリカード管理官は苛立ったように立ち上がって机を叩いた。


「君はそれで解決すると思っているのかね?」

「い、いえ、それが・・・」


サンキン局長は思わず、冷や汗を流した。この捜査をこれ以上続けるとまずいことになる。あの組織がついているかも・・・サンキン局長にはそれがわかっていた。しかし目の前にいるリカード管理官の目は威圧するかのように鋭かった。事件の真相を探るようにと。


「これには何かある。でなければゴーヤクのような危険な薬物が出てくるはずがない。」


リカード管理官はまた椅子に座り直し、じっと頭を巡らせていた。サンキン局長は、


「私はこれで・・・」


逃げるように管理官室を後にした。彼はこの事件は大ごとにせず、美弥の代表取り消しという線だけで幕引きを図りたかった。




地球代表部の執務室では夜遅くなっても明かりがついていた。そこで大山参事はいつものように書類に目を通していた。


「半蔵か!」


大山参事は人の気配を感じてそう言った。すると部屋の陰から半蔵が姿を現した。大山参事はちらっと半蔵を見ただけで、また書類に目を戻した。半蔵はそばに寄っていきなり尋ねた。



「藤山美弥の件についてお聞きしたい。」

「もうそろそろ来ると思っていた。いいだろう。」


大山参事は引き出しからファイルを取り出した。それを半蔵にポンと投げ渡した。


「ゴーヤクと言う薬物が検出されている。美弥の体内と彼女の飲み物からだ。しかし他からは見つかっていない。入手経路も不明だ。」

「ということは・・・これは臭うな。」

「そうだ。彼女は何者かによって水筒に入れられたゴーヤクを飲んだことになる。」


大山参事は半蔵の顔を見て言った。


「だとすると彼女がムラス舞踊の本大会に出るのを快く思わぬ者が犯人ということになるな。」

「それはたぶん、控室近くにいて彼女の水筒に近づける人物ということになる。だとしたら限られる。」


大山参事の言葉に半蔵は大きくうなずいた。さらに大山参事は言葉をつづけた。


「それには多分、『星間友好会』のカラジ星人が関わっている。彼らはムラス舞踊の大会で利権を得ている。ちょうど地球に来ているはずだ。表向きは地球のムラス舞踊に関する調査だが、陰で何をしているかわかったものではない。」

「なるほど。そういうことか。」


半蔵には今回のことが見えてきていた。それならば彼のとる道は一つ・・・


「ならば見過ごせぬ。」

「待て! 半蔵。多分、地球取締局もそれに気づいている。だが『星間友好会』には手が出せない。彼らは各国に利権を持ち、各星に圧力をかけられる存在だ。マコウ人でもなんとかできる相手ではない。とにかく藤山美弥は水筒に混入された薬物を摂取しただけだ。すぐに釈放するようにこちらから働きかける。『星間友好会』にはかかわるな。」


大山参事が念を押すように言った。だが半蔵は納得したわけではなかった。


「美弥の本大会出場はどうなる?」

「それは・・・できまい。グレーな解決であるかからだ。しかしそれは致し方あるまい。」


それを聞いて半蔵は大きく首を横に振った。


「いいや。それならば我らが解決する。どのような手を使っても・・・」


そこで半蔵の姿は消えた。


「半蔵! 半蔵!」


大山参事官が立ち上がって声を上げても返事は帰ってこなかった。


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