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神の守護騎士  作者: 月岡
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「あの……。」


 恐る恐る声をかける。その反応は予想通りで、肩を跳ね上げ心底驚いているようだ。必死に言い訳を述べようとするが、慌てすぎて要領を得ない。


「とりあえず、移動しませんか?」


 ひと目の付かない場所まで移動する間、ルクスが見計らったようにゾグへと連絡をくれた。言う通りに話せ、何を言っても驚くなと忠告され、ゾグはそのまま話を始める。


「ネロさんは見つかりましたか?」


 クリスはゾグの顔をまじまじと見る。どこかで会っただろうかと思い返す。シニスで教会の手伝いをしていたかもしれないと、朧気だが思い出す。自分の行動が筒抜けだと、クリスは少し落ち込んだ。


「……まるで君も探している言い方だな。」

「探してるんです。」


 クリスは不思議そうな顔をした。それもそうだろう。ダロスト国に行った事は知っているが、帰ってきたと思ったらネロの姿が確認出来ず、教会側でも探していると言う。


「ここは1つ、協力しませんか?」


 クリスは目を丸くし驚く。何か企んでの事なのか、深い意味はないのか。


「ただでは帰れないんですよね?」

「……っ!」


 どこまで見透かしているのだろうか。クリスは体の中を抉られるようだった。目の前にいる男とは別の脅威を感じるのだ。


(……全て見られている、のか。)


 何の成果もなく帰れないのも事実だ。首を縦にふるしかない。


「いいだろう。だが、条件がある。」

「条件?」


「一連の事件の犯人を、知っているのだろう?その真実を……教えてほしい。」


 ゾグの心臓は今にも破裂しそうなほどドキドキと脈打っている。もしネロが犯人だと知ったら、クリスがネロを拘束し連れて行かれるのだろうか。世間を恐怖に陥れた犯人を処刑するのだろうか。そんな妄想が脳内を駆け巡る。

 ルクスの返答が聞こえない。やはり悩んでいるのだろうかと不安になるが、小さく笑う声が聞こえた。まさか妄想を読み取られたのかと恥ずかしくなるゾグだが、そうではないと知ると改めて背筋を伸ばした。


「わかりました。ただしこちらにも条件はあります。」

「……なんだ?」

「犯人はこちらで預かります。」


 クリスはカッと目を見開く。その威圧感に、ゾグは驚いたのか肩を跳ね上げさせた。頭の中でルクスが大丈夫だと言い聞かせている。


「何故だ!王が殺されているのだ、何故我々に……。」

「王様が殺されたのは!」


 クリスの言葉に被せるように、ゾグは必死に叫ぶ。


「……王様が殺されたのは、そちらだけではない、からです。それに、教会が責任を取らないといけないんです。」


 オリエス国だけではない。ノール国の王も殺されているのだ。同じ条件だとクリスは口を紡ぐしかなかった。それに、教会が責任を取らないといけないというのは、もはや教会の関係者が犯人だと言っているようなものではないかと、クリスは拳を強く握った。


 クリスは絞り出すように返事をする。納得はいっていない。予想する犯人とは違う人物かもしれない。まずは探さなければいけないと、自分を納得させた。


「わかった……そちらの言い分も最もだ。」


 このまま殴られるのではないかとゾグはヒヤヒヤしていた。それくらいの勢いだった。クリスに腕力で勝てるわけがないし、魔法だって未熟だ。争い事になったら負けることは目に見えている。素直に従ってもらえてなによりだと、ゾグは胸をなでおろすのだった。





 ルクスはドアをノックする音に気付いた。入るよう促す。


「失礼します。」


 入室してきたのはウベルトだった。


「シニスの教会の修繕が終わりました。」

「思ったより早かったですね。」


 跡形もなくなった教会がようやく新たに建て直された。突貫工事かと思えるほど早く出来上がり、ルクスは驚いている。しかしこれでオリエス国王の葬儀が出来るというものだが、これから準備となると今しばらく時間がかかる。


「申し訳ないのですが、そちらの準備は任せてもいいでしょうか?」

「勿論です。」


 ネロの捜索、ミスラの件、それを引っ括めての関連性。任せているとはいえ、全て自分に関わる事だ。放ってはおけない。

 それに、ネロは自ら脱獄したのではないとルクスは考えている。だからこそ、ネロを早急に探さなくてはいけないのだ。


(……仲間の動向、か。)


 部屋から出ていくウベルトの背中を見送り、ルクスは神に言われたことを不意に思い出していた。


「ついでに協力してもらいましょうか。」


 それはきっと、ルクスの前に立ちはだかる存在になるのだろう。ただ、裏切り者と呼んでいいのかわからなかった。人にはそれぞれの正義がある。それはミスラにも、ルクスにも、裏切り者にもあるのだ。


(私たちの邪魔をするなら容赦はしない。)


 ゾグを気にしつつ、ルクスは裏切り者の元へと向かうのだった。

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