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神の守護騎士  作者: 月岡
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2

 日が昇り、町に活気が出てきた。だが別の賑わいもあるようだ。


 昨夜死体のあった場所には王宮騎士団と、人集りが出来ている。


「まさかここにまで魔物が……?」

「怖いわ……。」


 騎士たちは人を近付けないよう、盾を前に出し壁を作る。


「人払いしているんじゃなかったのか?」

「してたっつーの。でも団体で堂々と騎士団が来れば何事だって思うだろ?」


 騎士団の1人とネロが言い争っている。ネロは早くこの場から去りたいのか、何度も話を切り上げようとするのだが、相手の騎士がそれを許さなかった。


「こっからはテメーら騎士団の仕事だろうが!俺は早くルクスのとこに戻りてぇんだよ!つーか来るのおせーんだよ眠いわくそが!」

「おい!まだ話は終わってないぞ!」


 その声を無視し、ネロは中指を立て人混みに消えた。


「ったく、港の夜は寒いんだぞ。ルクスの命令じゃなきゃ即酒場行きだっつーの。」




 ルクスとネームレスは教会へ来ていた。事件があった後だからなのか、大勢の人が教会に祈りに来ている。

 ネームレスは周囲を見渡す。昨日と違い、妖精が見える。だが片手で数えるくらいにしか見当たらない。

 ルクスは精霊像の前に祈りを捧げる。結界が張られた後も、しばらく祈りを続けていた。教会にいる人々もそれをならってか、祈っている。ネームレスは綺麗な光に包まれるルクスに見惚れていた。


 神官はルクスと目を合わせない。


「何があったのか、聞いたほうがいいですか?」

「……いえっ。大丈夫です。ありがとうございます。」


 神官は震える声で答えた。ルクスの何もかもを見通すような目を、ネームレスも恐ろしいと思うのだった。




 教会から出たところで、ネロと合流した。


「騎士団の連中に押し付けてきた。」

「お疲れ様。じゃあ、少し予定を変更して帰りましょうか。」

「帰る?」

「本来このまま王都に行くんですが、このまま船に乗って本部に帰ります。」


 事件があったとは思えないほど、今日も市場は賑わっている。船で食べるためサンドイッチを買っている時だった。騎士団の1人がこちらにやってきた。


「ルクス殿、少しよろしいか。」

「おや、王宮騎士団長のブロウ殿。私に何か?」


 つい先程ネロと言い合っていた騎士だった。あからさまにネロは嫌な顔をする。


「ここではなんですから、こちらへ。」

「こっちは帰るとこなんだ。船が出ちまうだろ。」


 ネロが睨みを聞かせる。


「まだ時間はあるだろう。」


 そう言うと、数人の騎士がルクスたちを囲った。襲いかかりそうなネロを制し、大人しく着いていった。




 小さな喫茶店に入り、隅にある席に一同は座った。店員が注文を聞き、それが飲み物だけだったため、さほど時間もかからず全員分の飲み物が揃った。


「最初に発見した者を教えて欲しい。」


 前のめりになりながら、ブロウは迫る。紅茶を片手にルクスは表情1つ変えず、代わりにネームレスが恐る恐る答える。


「僕です……。」


 やれやれと言った様子で、ルクスとネロはブロウに言う。


「彼は犯人を見てはいませんよ。」

「トラウマになってんだから思い出させんなよ。サイテー。」


 ブロウは苦虫を噛み潰したような顔で2人を見るが、負けじとネームレスに聞く。


「本当に見ていないのかね?」

「一瞬何かが去っていくのを見ただけで、後はそれどころじゃなかったので……。」

「そうか……。」


 残念そうにブロウは頭を抱える。相当参っているようだ。

 ルクスは飲み終えたカップを静かに置き、ブロウに言い聞かせる。


「安心してください。あなた達の仕事を取るようなことはしません。」

「……お心遣いどうも。」


 ふと、ブロウは思い出した。彼らは教会本部に帰るところだったと。それと同時に疑問に思った。巡回途中なのでは、と。


「そう言えば、王宮へ寄るはずだったのでは?」


 その問いに、ルクスはまるで知らなかったのかと言いたげな表情をした。


「昨夜王都の方から来なくていい、と連絡がありましたので。」

「なんだって!?」


 ブロウは声を荒らげ、テーブルをたたく。それもそのはずだ。ルクスに来てほしいと頼んできたのは他でもない、王と教会の神官長なのだ。それが昨夜突然、来なくていいと言う連絡が入ったため、本部へと戻ることにしたのである。


「それほど結界が弱っていないのか、神官長が結界を張るだけで充分なのか、それとも私に来てほしくないのかはわかりませんけどね。」

「…………っ。」


 そう言うとルクスは席を立ち、それを追いネロとネームレスも続いて席を立った。


「団長さんが払ってくれるって。」


 ネロは店員にそう告げると、本日2度目の中指を彼に立て出ていった。

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