接触
ルクスの部屋の前で、アレスとセーアがウロウロしている。しかしエテルに見つかってしまう。
「こら。ルクス様の部屋には立入禁止だ。」
ミスラの件があり、ルクスは敢えて自室から出ないようにしていた。誰かに迷惑がかかるなら、建物に人が少ない場所がいいと自ら部屋に篭る事にしたのだ。それに1人の方が考え事も捗ると言うものだ。
エテルは双子の首に鉄の首輪をはめる。騒ぎ出す双子だが、それは取れそうにない。
「何よこれぇ!?」
「しつけ用の首輪だ。まぁ、多少弄ったがな。」
何かすればエテルが電気を流し、無理に取ろうとすれば爆発し首が飛ぶ。変身しても首が締まり、例えその影響で破壊されてもただでは済まない。
「だからルクス様に取ってもらおうとしても無駄だぞ。」
「子供相手にやることかー!?」
騒ぐ双子を尻目に、エテルは冷静に告げる。
「お前たちは子供だから特別に出したが、監視がついている事を忘れるな。」
監視とはジュリアンの事だろう。監視が1人だとも限らないが、渋々部屋へと戻るのだった。
扉の向こうの会話をルクスは耳に入っていないのか、集中しているようで本に夢中だ。それは城の図書館で読んでいた物と同じ本だ。どうやら帰り際に勝手に持ち出したようだが、誰が見るわけでもなく、問題ないと判断したのだろう。
塗り潰された項目を眺め、そのページへ飛ぶ。しかしそこは破られていて読むことは出来ない。既に破棄されたのか、誰かが所持しているのかはわからないが、現時点で読むことは不可能だ。
「何を考えている?」
不意に声がする。破れたページを見つめる。それは他の人物のページよりも多く、その功績の大きさを表している。
「聖人は神の力に適正がある。あなたの力を奪われたらと、少し懸念しています。」
「それよりも心配したほうがいい事があるのではないか?」
ルクスの胸を指差す。精霊の結晶の気配からルクスを生まれ変わりだと思っているのか、結晶がルクスの心臓として使われているのを知っているのか。もしこの結晶がミスラに狙われてしまったら、それこそ死活問題だ。
「彼は生まれ変わりだと信じ込んでいた。それが違うとわかった時……。」
ルクスは言葉を詰まらせる。珍しく眉間に皺が寄っているのをからかわれる。
「そう悩む必要はない。お前は私でもあるのだから。」
これから起こる事がわかっているのだろう。そのまま神の気配が消える。まるで危機感がない。それとは逆に、ルクスにとっては心配事が尽きない。
(まずはゾグさんのお遣いが無事終わるのを待つしかない、か。)
何かあれば妖精を通じて連絡をすればいいし、ルクスはその様子を見ることが出来る。本当はネロの居場所も知っているのだが、それを言わないのは、ネロが脱獄した事にも関わる。それに、これ以上ゾグに秘密を押し付けても耐えられないだろうと、あえてこの場から離したのだ。
ゾグはルクスから言われたことを思い出していた。
『シニスで会った騎士が潜伏しています。まずは彼を探しなさい。彼もまた、ネロを探しているはず。見つかったら連絡してくださいね。』
――さぁ、いってらっしゃい。
ルクスが何を考えているのかわからない。それに、その騎士が誰なのかもわからない。でもやるしかないのだ。
(シニスの騎士……誰なんだろう。)
特に話をしたわけでもなく、果たして自分にわかるのだろうか?と、ゾグは路地裏などに目を向ける。
(……あ。)
すると、キョロキョロと落ち着きのない人物が目に止まった。怪しいと観察してみれば、それはシニスですれ違った騎士だと思い出した。
ルクスは彼の事を言っていたのだと、ゾグは確かにこれはバレバレだと思いながら、声をかけるのだった。




