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神の守護騎士  作者: 月岡
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5

 何度も、何度も、エリアーシュが死ぬところを見てきた。何度戻っても、エリアーシュは死んだ。もう魔法は使えない。もう、戻れない。


 この力を与えたのは誰だ。神ではないのか。神を信じる己が馬鹿なのか。



 今までに見たことのない大きさの魔物が、エリアーシュを襲っている。何としてでもエリアーシュを殺そうとする意思を感じる。

 もう戻れない。何故、何度もエリアーシュの死を見なければいけない?結局、死ぬ運命なのか。


 魔物の爪が振り下ろされる。




 光に包まれた瞬間、誰かを見た気がした。


 辺りに魔物の姿はなかった。あるのは数名の生き残りと、無惨に死んでいった仲間の死体だけ。エリアーシュは見る影もない。その場に崩れ落ち、人生で初めて泣き叫んだ。


 恐らく、この時点で既におかしくなっていたんだろう。精神が限界を迎えていた。ありもしない存在に縋り、力を使い続けた結果、状況は悪化しただ自分の首を締めるだけ。



 それを救ってくれる存在が現れた。俺が望んた神。俺が目覚めさせた神。俺だけの神。

 そう思うだけで俺の気持ちは保たれたし、生きていける。


 ルクスは1つの国に結界を張っている。しかし、他の国の結界が何かの拍子で消えてしまわないよう、定期的に結界を強固なものに維持している。それはルクスの力と、周囲の妖精からの魔力で出来ている。しかしそれを良いことに、悪用する輩が増える一方だ。人間を守ることはついでにすぎない。魔力の維持がルクスの意思であり、教会の仕事。それを知ってか知らずか、人間は魔力を食いつぶすのを止めない。このままではルクスの魔力を無駄に消費するだけ。


 だからルクスを俺から奪う存在は徹底的に排除した。それが身内や仲間、国王だろうと。




 ある日合成獣(キメラ)を拾った。双子の子供はルクスを親だと、そして俺と同じく神だと心酔した。


「面白いことしてるね。」

「僕たちもまぜてよ。」


 合成獣(キメラ)の飛ぶスピードはとても早く、魔力を読むのも上手い。移動が楽になり、相手を逃がす事もない。何よりこの化け物は人を喰らう。魔物の仕業に見せかけるのに、丁度良かった。


 ただ、俺はこいつらが嫌いだ。幼い頃のマルクを見るようで……重ねてはいけないのに、純粋な子供の内に秘める魔物を見て、反吐が出そうだ。







「俺はルクスがいない世界で、お前が研究を続けて1つの国の魔力を吸い取る様を見てきた。でもルクスがいる世界でも、お前は研究を続けようとしている。」


 ネロは話し終わると、ゾグに再び銃を向けた。


「でもそれは今の僕じゃない!」


 ゾグは思わず声を荒げる。だが、ネロの視線はもはやゾグを見てはいない。


 その時、ルクスが銃を優しく下げた。ネロの視界に入った瞬間、その瞳には光が射し込む。本当にルクスしか見えていないのかと、ゾグは驚いた。


「もういいんだよ、ネロ。」


 何かを言いたげに口を開くも、ルクスに止められる。


「私もネロがいないと存在できない。それくらい、あなたが大切なんだよ。」


 ルクスがゾグをチラリと見る。ゾグはそれに安心した。ルクスが止めてくれるのだと、そう思ったからだ。


「私は決めたんです。大切な(ネロ)が住むこの世界を守ると。」

「でも、そうしたらお前がいつか壊れるだろ!だから俺は、余計な事をする奴らを殺してるんだ!」


 これはもう、意地になっているとしか思えなかった。ルクスのために殺してきたのに、ルクスに否定されたら、一体今まで何のためにやってきたのか。

 それを感じたのか、ルクスはネロを優しく抱きしめる。


「あなたのおかげで、これ以上精霊に害をなす者もいなくなる。もう、無理をしなくていいんだよ。」


 神の怒りに触れた事は世界中に知れ渡ったのもまた事実。下手に手出しもしなくなるだろうと、ルクスは諭すように語りかける。

 ネロはルクスの胸に顔を埋める。


 太陽が顔を覗かせる。もう夜明けだ。ネロはエテルに連れられ、部屋を出ていく。暫くは教会の地下室にある牢屋に入れられるのだろう。


「これは他言無用だ。」


 ウベルトがゾグにきつく言い聞かせる。ゾグは隠蔽するのかと一瞬怒りを覚えたが、直ぐにそれは間違いだと気付く。

 もし犯人が捕まったと知れば、天罰だなんて嘘だとなり、再び妖精や精霊を使った研究が始まってしまう可能性がある。それを防ぐためにも、その研究によって天罰が下ると思わせていた方が都合がいいのだ。


「お前たちも暫くは地下室だ。」

「はぁ〜い。」

「つまんないの。」


 アレスとセーアもまた、等しく罪がある。子供といえど、それは許されないことだ。



 もうこれで解決したと、ゾグは安堵した。


 だが、面白くないと思っている者がいることを、まだ誰も知らないのだった。

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