表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
神の守護騎士  作者: 月岡
7/86

事件と騎士団

「うぅっ…ゲェッ……ごほっ……っ……。」


 何も食べていないためか胃液だけが込み上げてくる。地面に吐き出したそれを見て、ネームレスは食べる前でよかったとどこか冷静に考えていた。

 これは人間?もしかしたら動物かもしれない。そんな現実逃避をしたところで、目の前にある現実は変わらない。


 きっとアレが犯人なんだと、先程飛び出していった影を思い出す。それと同時に、頭痛が襲った。


「いっ……た……っっ!」


 脳裏に浮かぶ光景。黒い影。血に塗れる地面。まるで今の光景そのものだ。以前にも似たようなことがあった?そう考えていた時、背後に気配を感じた。

 勢いよく振り向くと、見知った姿があった。


「随分派手にやったなー。」

「大丈夫ですか?」


 ルクスとネロだ。ネームレスは2人の姿を見て安堵したのか、ポロポロと涙を流した。


「俺、俺……こんな……うぅぅ……。」

「泣くなよなぁ。」

「怪我はないですね?とりあえず宿屋へ戻りましょう。ネロ、後のことは任せたよ。」


 ルクスはネームレスを抱え、宿屋へ戻った。



 差し出された水を一口飲む。ルクスに背中を擦られ、まるで赤子のように扱われるのを自覚し、ネームレスは急に恥ずかしくなった。


「落ち着きました?」

「お、おかげさまで……。」


 空腹を覚えるが、あんな光景を見て何か食べる気になどならないため、ネームレスは残りの水を一気に飲み干した。


「ネロさんは……。」

「教会と王宮騎士団に連絡と、死体に誰も近付かないよう人払いです。」

「王宮騎士団に?」

「教会はあくまで精霊と自然の保護です。今回の事件も、王宮騎士団は血眼になって解決しようとしています。」


 ルクスは続ける。


「今この国の王は多くの戦争で民衆から反感をかっています。その分民衆は教会で祈り、王の人望は地へ行く一方。少しでも民衆の関心を引くために、この事件を何としても解決したいんですよ。」

「だから、何もしないんですか?」

「相手は魔物。全て駆逐しろと?非現実的だ。私には魔物から守るための結界しか張ることができません。」


 犯人は魔物なんかじゃない。ネームレスは漠然と思った。誰にも気付かれず町に魔物が入ることが出来るのか?だが、あの無惨な姿は人間なんかにできるはずもない。

 ネームレスは項垂れた。





 教会にある精霊像に、神官が震えながら祈りを捧げている。


「これは単なる見せしめにすぎない。」


 神官が小さく悲鳴を上げた。背後に3つの影が伸びる。


「次はない。」


 神官は土下座し泣き崩れるしかなかった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ