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神の守護騎士  作者: 月岡
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「やっぱりあの時、追いかけてでも殺しておけばよかった。」


 その言葉に、ゾグは何を言っているのかと考える。そして脳裏に浮かぶのは、初めてネロに会い感じた底知れぬ恐怖、時々見せる表情、そして研究室で襲われた時の事。


『調べ物も程々に。』


 そしてエテルの忠告を、漸く理解した事。


「どうして……僕を見逃していたんですか?」


 ただの時間稼ぎかもしれない。しかしゾグは気になったのだ。数々の事件から、容赦のない事はわかっていた。だから何故、再会した時に殺さなかったのか。


「……殺そうと思ったさ。でも、記憶喪失の奴を殺っても、意味ないだろ?」


 記憶喪失だと嘘をついていると疑った。だから様子を伺っていた。だが、記憶が戻って今までの価値観が変わったゾグを、ルクスが教会騎士団に誘った。いつでも手を下せる所にいる。それに、ルクスがゾグの何がいいのか、何かと気にかけていた為、ネロは猶予を設けた。このままルクスのため、精霊のために教会に殉ずるのならそれでよかったのだ。


「お前はルクスを裏切った。」

「違う!僕は精霊にも妖精にも頼らない方法を……!」


 ネロは話を遮るようにゾグの脇腹に蹴りを入れ、ゾグは勢いよく倒れ込む。突然の痛みと衝撃に、激しく咳き込むが、それでも構わずネロは激昂する。


「お前は変わらない!結局研究者は結果だけが全てだ!途中の過程に何の犠牲があっても、お前は結果だけを見るんだ!」

「ネロさんに何がわかるんですか……!」


 銃口を向けられ、ゾグは怯む。が、ネロの言葉に反論をするも、向けられた銃口に意識が向いてしまう。


「わかるさ。見てきたんだから。」


 ゾグには意味がわからなかった。まるで未来にでも行って見てきたような言い方だ。憶測で物を言っているのが許せないとも思うが、激昂した相手に何を言っても無駄だろうと口を紡ぐしかなかった。


 静かに引き金に指がかかった。ゾグは目を瞑る。その時、部屋の扉が開いた。2人しかいないはずの建物に、一体誰が?と、ゾグはそっと目を開け確認する。


「もう止めないか、ネロ。」


 優しく諭すような言い方をしながら、エテルが現れた。

 助かった。そうホッとするゾグだったが、この状況に驚いていないところを見ると、やはりネロが行ってきたことを知っていたし、だからゾグに忠告もしたと納得できる。

 続けてシニスにいるはずのウベルトと、セーアも部屋に入ってくる。教会ぐるみかと、ゾグは愕然とした。それを見て、ネロは小さく「いないと思ったら、余計なことを……。」と、呟く。


「今までの事件も、国王の殺害も、全部ネロさんだと知っていたんですか……!?」


 研究所で襲われた時の事を、鮮明に思い出していた。暗がりで見えなかった。しかし、崖から落ちる瞬間、こちらを見下ろしていた姿がネロだと、今漸くハッキリしたのだ。


「ルクスさんもそれを知っていたんですか!?」


 ――ドンッ……!


 爆発音と共に、ゾグの頬を掠めた銃弾が壁にめり込む。ゾグの頬と耳は、掠めた銃弾のせいで血が出ていた。

 撃たれるという恐怖はあった。しかし、実際に撃たれると思わず、ゾグは放心状態になる。


「俺は全てルクスのために行動してるんだ!それなのにお前たちのせいで、ルクスの負担ばかり増えていく!」

「落ち着けネロ!」


 再び銃口を向け、今にもゾグに放ちそうになるのを、エテルが羽交い締めにして止める。抵抗するネロだが、エテルにとっては容易に拘束出来るようだった。


「どうして止めるの?さっさと殺っちゃいましょうよ。」


 しかし、そこでセーアが口を出す。


(何であの子供がここにいるんだろう……?)


 ゾグは不思議とそう思うと同時に、いままでの死体は獣に襲われたような姿だったと思い出していた。あれをネロがやったとも考え辛い。


 ニヤリとセーアが不敵な笑みを浮かべた。ネロを止めているエテルの代わりに、ウベルトがセーアを止めようとするが、次第に変わっていく姿に為す術もなく、獣のような姿に変わってしまった。アレスと同様に、翼の生えた狼のような姿だが、セーアは少し薄い灰色をしている。

 ゾグはただ驚くしかなかった。エルフだと思っていた子供が、獣に変わったのだ。


「ま……魔獣!?」

合成獣(キメラ)だ。様々な魔獣や種族が混ざり合っているんだ。」


 ウベルトが説明する。そう言えば以前、ルクスから飼われていたと聞いたことがあると思い出す。ゾグは目の前のセーアに腰を抜かしている。今度こそ死ぬかもしれない。それをどうにか長引かせられないものか。無意味だろうと、今自分が生き残るためにどうすればいいのか必死で思考を巡らせる。


「ネロさんは……見てきたと言ってました。僕の何を見てきたんですか?」


 なるべく刺激しないよう、なるべく長引かせるために、ネロに話を聞く。それに気になってもいたことだ。


「本当に聞きたいのですか?私たちの真実を。」


 突如としてゾグの後ろの窓が開き突風が吹き抜け、色褪せた資料と思われる紙が舞う。背後の窓台に、ネロと同じくダロスト国にいるはずのルクスとアレスが、ゾグを見下ろすように座っている。

 ルクスを確認して、エテルはネロを離す。ウベルトとエテルはどこかホッとした様子だが、ゾグはこれでこの場が収まるとは思っていなかった。真実を聞いてしまったら、自分はどうなってしまうのだろうと不安になるが、ゾグの心は決まっていた。


「僕は知りたいんです。ネロさんの言動理由、貴方がどうやって出来たのか、全部知りたい。」


 その目は真っ直ぐだった。


「わかりました。……どこから話しましょうか、困りましたね。」


 いつの間にかセーアは元の姿に戻っていた。ルクスは満月を仰ぎ、語り始める。

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