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ソティリスは咄嗟にリアンを庇う。刹那、アレスがマイルズに向かい泡を1つ放ち、静かに体内へと入っていった。
「なっ……!?」
動きが止まった瞬間、ソティリスはマイルズの頭部を掴みテーブルへ打ち付ける。鈍い音と、食器同士がぶつかる音が響き渡る。
「な……にを……!」
苦しそうに藻掻く姿を、アレスは面白そうに眺めている。
「それね、リアンにあった毒だよ。」
「!?」
「凄いね。いろんな種類の毒、よく集めたね。でもさ、こんな少量ずつじゃあ逆に耐性ついちゃうよ?」
毒が自らの体に入ったと知りパニックになるが、頭を押さえ付けられ自由に身動きが取れない。ソティリスがメイドに騎士を呼ぶよう伝える。
リアンは呆気にとられている。今更命を狙われていると実感し、腰が抜け身動きが取れないでいた。
「暴れないほうがいいよ?僕も魔法勉強中だから、いつ中の泡が弾けるかわかんないよ。」
その一言が効いたのか、マイルズはピタリと動きを止めた。
数名の騎士に捕らえられ、マイルズは部屋を出ていく。恨めしそうに此方を振り返るが、それはソティリスやリアンに向けられたものなのか、アレスに向けられたものなのかはわからない。
部屋は静まり返り、嵐が去った後のようだ。メイドが急いで散らかったテーブルの上を片付ける。蜂蜜の入った壺を手にしようとした時、ソティリスがそれを止めた。
「これは私が。」
蜂蜜を見て溜息をつく。
「どうして蜂蜜に毒が……?」
疲れたような、安堵したような、どちらともとれる表情をしたソティリスを珍しいと思いつつ、リアンは手に取られた物を気にする。
「この城の物は全て私の許可がなければ持ち込み禁止だ。食材も例外ではない。うちで使っている蜂蜜は色も香りも濃い。だが、この蜂蜜は真逆だ。許可をした覚えもない。」
殆ど憶測でしかなかったが、マイルズが用意したのなら確実に何かあると踏んだ。
「毒花の蜂蜜なんて、よく考えたよねぇ。」
どこからか仕入れてきたのか、この国では恐らく作られていない物だ。精霊の言っている“毒”との因果関係はわからないが、わざわざ毒花の蜂蜜を仕入れたとなると、誰かが意図的に作っていることになる。
(入手元を調べさせるか。)
「アレスと言ったか。リアンを助けてくれて感謝する。」
「ありがとう、アレス。解毒してくれたうえに命を助けてくれて。」
2人の感謝の言葉に、アレスは照れる。
「すまないな、こんな事に巻き込んでしまって。」
「楽しかったからいいよ、別に。それより外行こうよ。」
アレスは座っているのに飽きたのか、リアンを外へと誘う。元気に部屋を出ていく2人を見届けると、ソティリスは安堵した後、厳しい表情に戻るのだった。




