ダロスト国
「申し訳ありません。この子達まで着いてきてしまって。」
ルクスとネロの後ろには、アレスとセーアが悪びれもなく笑顔で立っている。
「構わん。リアンも喜ぶさ。」
ソティリスの隣に立っていた騎士が前に出る。
「これは弟のスティーグだ。騎士団を任せている。」
「お会いできて光栄です。」
握手を求めてくるスティーグに、ルクスは笑顔で返し、ネロは面倒臭そうに手を差し出した。真面目そうに見えるが、ネロはその笑顔に胡散臭さしか感じなかった。
「スティーグに案内を任せてある。本当は私が案内したいのだが、少し立て込んでてな。」
一国の王なのだから忙しいのは当たり前なのだが、ソティリスは案内にも行きたそうにしている。この日のために仕事も調整していたのだが、昨日までに終わらせるはずだった事も結局終わらせることが出来ず、スティーグに案内役を任せたのだった。
「早速案内致します。」
どうぞこちらへ。と、丁寧に接するスティーグに、ソティリスは笑いをこらえるような素振りを見せるのだった。
リアンの部屋にはアレスだけが遊びに来たようだ。最初こそブツブツとセーアに対する文句を言っていたが、セーアに邪魔されないと考えるとそれはそれで良いことだと言い聞かせた。
アレスはリアンの顔色が以前ほどではないが、悪くなっていることに気付く。確かに、ルクスに浄化してもらい体調がよくなったはずなのだが、少し青白い。
「ちょっと手貸して。」
「うん?」
リアンの手を取ると、僅かだが体内に毒が回っていることに気付く。
「何があったの?」
怪訝な顔をして問い詰めると、リアンは気まずそうに語り始めた。
「兄上が話しているのを聞いたんだけど、誰かが僕に毒を盛ってるらしくて。」
「毒!?」
「しーっ!聞こえるよ。」
人差し指を口元に当て、リアンはアレスを引き寄せる。
「周りは何もしてくれないのか?犯人は?」
「兄上が凄く怒ってるからそこは大丈夫。」
アレスは少し考え込むと、得意げにアレスに告げる。
「しょうがないなぁ、僕がいろいろ魔法教えてあげる。」
いたずらっぽく笑うアレスに、リアンは嫌な予感がするのだった。
目的地へ向かう馬車の中、ルクスたちは特に会話をすることなく、ガラガラと車輪の音と馬の足音だけが響き渡る。その間ずっと、ネロはスティーグを睨みつけていた。ルクスが嗜めるも、すぐに睨みをきかせるため、視線に耐えられなくなったスティーグが口を開いた。
「あの、何か……?」
戸惑いながらも笑顔を崩さないスティーグに、ネロは気に食わないといった態度で答える。
「はっきり言う。お前は胡散臭い。」
スティーグは顔を引きつらせる。
「腹黒で粗野で戦闘狂、猫かぶりってところか?」
「おまけに頭も悪いさ。」
ネロの罵詈雑言とも呼べる発言に、スティーグは言葉を続けた。
「やっぱ同じ臭いのするやつにはバレるのかぁ。」
今までの言動がよほど窮屈だったのか、肩をほぐす姿に、ネロは同類にするなと文句を言った。立場上礼儀を尽くすのが当然なため丁重な対応をする他ないのだが、普段の姿を知っているソティリスからして見れば、笑いをこらえるほどおかしな姿なのだ。
ネロとスティーグは気が合いそうだとルクスが思っていると、目的地についたのか馬車が止まった。御者がキャリッジの扉を開けスティーグが先に降り、ネロ、そしてルクスが降りる。
「おそ〜い。」
そこには何故かセーアが待っていた。ネロと一緒ではなかったのかと聞こうとしたが、それを聞いたところで戻るわけにもいかない。ニコニコと笑顔のセーアに大人しくしているよう注意すると、改めて目の前の果樹園を見渡す。
柑橘のいい匂いが鼻をくすぐる。それと同時に、ルクスには腐臭のような悪臭が微かに鼻を刺激するのだった。




