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エテルに会う機会はあれど、なかなか写真についての真実を問うことはできなかった。いきなり不老不死なんですか?と聞くなど、あまりにも不躾だろう。そのまま写真も持ってきてしまった。ため息をつきながら写真を眺める。ずっと持ち歩いているのもおかしな話だと、ゾグは変な気持ちになっている。
「……お腹空いたな。」
いくら考えたところで、自ら行動に出なければ解決しない。夜も遅いが、空腹を満たすためゾグは食堂へと向かった。
シニスで余裕が出来たため、戻ってくる騎士たちが多くなり、食堂は賑わいを取り戻しつつある。今は主に酒を飲む人たちで混み合っている。ふと部屋の隅を見ると、エテルが静かに酒を飲んでいた。噂をすれば、ではないが、まるでエテルに引き合わせられている気がしてならない。
「よしっ……。」
意を決してゾグはエテルに話しかけた。
「あのっ。」
「ん?あぁ、珍しいな。一緒に飲むか?」
案外あっさりと受け入れられ緊張も少し解れてきたが、どう切り出すかが問題だ。
一口一口酒を口に運ぶが、一回のため息が大きい。
「お疲れですね……。」
「あぁ……。明日は久々に休みだから有難い。まぁ、ルクス様に無理矢理休みを与えられたんだがな。」
そう苦笑すると、また一口酒を飲む。暫く沈黙が続くが、先に口を開いたのはエテルだった。
「何か悩みがあるんじゃないのか?」
ゾグは驚くが、態度に出ていたのかと少し反省した。
「最近、何か聞きたそうにしていたからな。」
「その……。」
テーブルに例の写真を差し出す。エテルを見ると、少し酔っているのだろうか。いつもより目元の鋭さがない。写真を手に取ると、エテルは少し微笑んだ。
「この写真は、賢者が気紛れに撮ったものだな。懐かしい。」
こんなふうに笑うこともあるのかと、ゾグは意外に思った。普段接しているエテルは常に忙しそうに各地に飛び回り、それ以外は騎士たちの訓練、そして今はルクスと共にいつも以上の書類を相手にしている。ゾグはエテルの笑みなど見たことがなかった。
「ジュリアンさんから聞いたんです。」
「……そうか。まぁ、ここにいる限り疑問に思ってくるだろう。」
ポツリポツリと、エテルは語り始める。
「資料室のものが新しい事に違和感を覚えているだろう?」
「はい。でも、降臨祭で起こった事故で消失したから新しくしたものだと……。」
エテルは皮肉に笑う。
「そうだな。あれは作り直した物だ。ただ、詳しい年代がわからないものは書き直した年になる。」
「じゃあ僕が読んだものは50年前に書かれただけの可能性も?」
「そうだ。何年に何があったか細かいことを覚えているものは少ないし、更に膨大な資料をまとめるのが大変だからな。大きな出来事しか今の資料室にはない。」
エテルは写真をテーブルに放り投げ、ゾグの近くに滑り込ませる。
降臨祭自体いつから行われていたのか不明らしく、資料は本当にただまとめたものらしいが、知らないことがあるのも確かなため見る価値はありそうだ。それに、エテルの写真が昔のものというのは変わらない。
「俺がこの体になったのは。降臨祭で神降ろしをしたからだ。その降臨祭の事故の原因が、俺だからな。」
ゾグは当時起こったことを、エテル本人から聞かされることになる。




