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沈黙を破ったのはソティリスだった。2人の表情がおかしかったのか、大声で笑う。
「何を驚くことがある?王の座を奪うのであれば普通のことだ。それに、私は懺悔しているわけではない。」
ソティリスは相変わらず泰然とした態度だ。
「……1つの国を贔屓するわけにはいきませんが、訪ねた際に様子は見ましょう。それに、努力を怠らなければ精霊は応えてくれます。」
「恩に着る。」
不服そうな声色だったが、ルクスの贔屓するわけにはいかないと言う言葉に、納得せざるを得なかった。努力次第なのもそうだ。いずれは良くなるだろうが、精霊と交信できるルクスに頼むのが手っ取り早い。様子を見てくれると言うのだから良しとしようと、ソティリスは自分に言い聞かせる。それに、この件とは別に頼みたいことがあって来たのもある。
「それで、ついでと言ってはなんだが、是非末の弟に会ってほしい。聖堂で待たせているんだ。」
「えぇ、喜んで。」
聖堂には従者を従えた子供と、アレスとセーアがいた。エテルは双子に厳しい視線を向けるが、知らん顔でルクスに駆け寄る。
「弟のリアンだ。」
見た目はアレスたちよりも少し歳が上だろうか。すらりとした体で、顔色が少し青白い。
「お会いできて光栄です、ルクス様。」
所作が美しく、身なりも合わせて見るものを釘付けにするほどだ。アレスがこっそりとルクスに耳打ちする。
「リアンの魔力、凄い不味いの。」
それもそうだろうとルクスは納得する。リアンの体内には毒素と言っていい程の魔力が濁っているのがわかる。アレスが頑張って吸い出したのだろうが、まだ残っている。
「リアンの体調が戻らなくてな。我が国の神官長が、ルクス様なら治して下さると言っていた。」
「……毒素が溜まって、魔力回復の妨げになっています。王弟殿下、手をこちらに。」
リアンの青白い手がルクスに伸びる。その手は冷たく、生気が感じられない。ルクスはその手を両手で包み込むと、リアンの毒素を浄化し始めた。すると、リアンの顔はみるみるうちに赤味を取り戻し始めた。
「凄い……体が軽くなりました。」
「数日すれば魔力も回復するでしょう。」
リアンの手は先程よりも温かくなっている。
「よかった……感謝する、ルクス様。」
ソティリスは安堵したようで、表情が少し和らいだように見える。
「お安い御用ですよ。それと、後日そちらに伺いますので、日取りが決まり次第連絡します。」
「ではこちらもシニスに人を送ろう。」
「ウベルト神官長に話を通しておきますので、そちらを頼って頂きたい。」
淡々と話が進み、ソティリスはルクスたちに見送られながら聖堂を出た。
「良い結果が得られたようで何よりです。」
従者がソティリスに伺うが、ソティリスは納得しているわけではなかった。
「結局、神を引き入れることは不可能だと悟っただけだ。だが来てくれるというのだから良しとしよう。それに……。」
「?」
「教会にもシニスにも恩を売ることができるのだ。文句は言うまい。」
ソティリスは、ほのかに温もりを感じるリアンの手を握り締めるのだった。




