ソティリス王
エテルたちが戻る頃には、本部も落ち着きを取り戻し始めていた。
「只今戻りました。」
エテルとゾグはルクスに跪く。ルクスは手を止め、笑顔で迎えた。エテルは恐る恐る尋ねる。
「ルクス様、書類のほうは……。」
「大丈夫ですよ。ネロも手伝ってくれてますから。」
隣の部屋に目をやると、ネロが黙々と書類に目を通していた。
ルクスが思い出したかのようにエテルに手紙を差し出す。既に開封済みだったため、自分宛てではないとわかる。
「これは?」
「先日ダロスト国王が面会したいと連絡がありまして、2週間後と知らせたのですが……。」
エテルは手紙を開き目を通す。
「急ぎの用ができたから1週間早くこちらに来ると書いてありますが……。」
「ええ、今日なんです。」
「きょっ……!」
言葉を失うエテルだが、仕方無いと仕切り直し迎える準備に移った。
「こちらの都合で申し訳ない。ルクス様もお忙しいだろう。」
ダロスト国王のソティリスは、厳格な態度で客室の椅子に座る。
「ソティリス陛下は国王なのですから、お互い様ですよ。それで、今日はどういった件で?」
と聞きつつも、エテルもルクスも大方予想はついていた。神罰だと世に知らされ、こちらに取り入ろうとしているのだろう。だが、ソティリスの口からは予想外の言葉が出てきた。
「シニスの教会の復興、我が国で支援したい。」
エテルは一瞬驚いたが、すぐ険しい顔をした。
「ありがたい申し出だが、何が目的で?」
疑いの眼差しに、ソティリスは笑うように答える。
「さすがにわかりやすかったか?そうだな、どうせ嘘などついても無駄なのは知っている。……支援の代わりに少々手助けをしてほしいのだ。」
「手助け?」
ソティリスは頷くと、悠然と話し始める。
「我が国は主に宝飾品が有名だが、鉱石なんぞ、植物のように水を与えれば育つというわけではない。」
「採れるようにしろと?」
「まさか。まぁ、前王なら言いかねないがな。」
鼻で笑うと、少し疲れたような溜息をこぼす。
「もう1つの特産品、青果物があるんだが、土壌が悪くてな。いろんな肥料を試したが無駄だった。故にルクス様に土地を豊かにしてくれるよう、精霊に取り次ぎしていただきたい。」
意外な申し出だった。ソティリスの父である前王は、ありとあらゆる鉱山を掘りつくしていた。利用できるものは何でも利用する。それで国庫金が増えればいいと言う考えだった。だが、ソティリスはその考えに反対だった。何故有限のものを無くすまで利用するのか。この国には特産品の青果物がある。観光地も有名だ。父は馬鹿だと、考えるだけで腹が立つ。
「確かに、ダロスト国の魔力は徐々に減ってきていますね。」
ルクスの言葉に、ソティリスは覚えがあると渋い顔をする。
「それは前王のせいだろう。質のいい宝石を採るために、いろいろしていたからな。」
「聞いても?」
エテルが促す。
「私の末の弟には少しだけだが魔力がある。前王は己の息子に鉱石の濁りを吸わせ、純度の高い宝石を作り上げていた。」
驚きを隠せないルクスとエテルに、ソティリスは険しい顔をする。憎しみのこもった表情だ。
「弟は体が弱るばかり。その悪事に気付いた私は、前王を……父を事故に見せかけ殺した。」
衝撃の発言に、部屋は静まり返るのだった。




