昔馴染み
ネロは皿を片付けに城の厨房へと来ていた。顔見知りらしく、軽い挨拶をしてそそくさと厨房を出る。まるで誰かに見つからないようにしているように、早足で外を目指す。しかしそれは無駄だったようだ。
「ネロ?」
突然話しかけられ、ネロは声の主がわかるのか嫌な顔をした。
「……クリス。」
「やっぱり!元気だったか?」
クリスと呼ばれた騎士はネロと同期だったらしく、彼に見つからないようにしていたが、呆気なく見つかってしまった。
クリス本人は嬉しそうにしているが、ネロはどこか気まずそうにしている。それに気付いたのか、クリスは神妙な面持ちをする。
「まだ気にしてるのか?」
その言葉に、ネロの顔色が変わる。
「違うね。俺はあいつが許せないだけだ。」
「ネロ……。」
「あんな臆病者に会ったら何するかわかんねぇから、俺は行く。二度と呼び止めるな。」
クリスは引き止める間もなく、ネロは行ってしまった。呼び止めようとした手は、がっくりと下がる。
「振られたな。」
それを物陰から見ていたブロウが、茶化すようにクリスに話しかける。
「あいつが戻ってきてくれれば、俺は嬉しいんですけどね。」
「……ネロは変わった。昔とは違うだろう。」
「変わってませんよ。今も仲間のために怒っているんですから。」
失礼します。と、クリスは業務に戻る。ブロウはその答えに少々疑問を持つのだった。
「不機嫌だね。」
合流するなり、ルクスは笑う。素っ気ない態度で返すのは、図星だからた。
ルクスの周りには住民たちが集まっている。
「ルクス様は悪くないんだからね。アタシは見たんだよ、神官長が城に出入りしてるの。」
「ルクス様が忙しいのを良いことに、あいつら好き放題してたんだ。罰が当たって当然だ。」
ルクスを慰めようとしているのか、神官長や王を悪く言う声が聞こえる。
「あまり悪く言わないで。全て私の至らなさが原因なんですから。」
慰めてくれる気持ちは嬉しいのだが、あまりいい気分ではない。それを察したのか、ネロがウベルトを呼び、今後どうするのかと聞く。
「とりあえず、ルクス様には本部へと戻っていただきたい。落ち着いたらエテルも戻させます。」
「……そうですね。長く空けるわけにはいきませんから。」
ルクスは住民たちに挨拶をすると、その場を離れた。
ゾグとジュリアンと話しているとき、ワイスが戻ってきた。
「戻るのかい?」
「はい。お世話になりました。あなたは、しばらくはここに?」
「こうなったのも、私がしっかり見ていなかったせいでもある。でもまだ仕事が残っていてね、急いて片付けてから戻ってくるよ。」
そう言い残し、再びワイスはどこかへ消えていった。ルクスは手を組むと、町に結界を張り直す。外の世界もまた、少しずつ本来の魔力に戻りつつあった。




