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ゾグたちが部屋から出ていってしばらくした後、ルクスはようやく目を覚ました。
「寝坊だな。」
「……うん。」
ルクスは起き上がると、それと合わせたかのようにドアがノックされる。
「おはよう。」
どこへ行っていたのか、ワイスが戻ってきた。
「住民には神罰が下ったと説明したからね。」
「…………。」
「教会の復旧は彼らに任せておけばいい。今はゆっくり休みなさい。」
まるで見張りだと言わんばかりに、ワイスは居座る。
「……君のせいではない、といっても、慰めにはならないね。でも、立ち止まってはいけない。わかるね?」
「はい、大丈夫です。」
「君の自我は脆い。少しでも迷いがあれば、すぐ飲み込まれてしまう。」
「私にはネロがいます。」
その眼差しは強いものだったが、ワイスはどこか気掛かりでいる。
(……ネロ、か。危ういな。)
互いに依存している。そう思いながらも口には出さず、ワイスは部屋を出ていった。
跡地では教会騎士団と、住民たちも協力して整地作業をしている。王宮騎士団も手伝っているが、さすがに対応することが多いのか数は少ない。ゾグとジュリアンも、黙々と土を運ぶ。
「ゾグ、すまないがルクス様の様子を観てきてくれないか。起きていたらおしえてくれ。」
「わかりました!」
ウベルトに頼まれ、ゾグは土埃を払い、城へ走る。
「迷った。」
入って早々、ゾグは部屋がわからず迷子になる。誰かに聞こうにも、皆忙しく走り回り聞けそうにない。手当り次第の部屋を開けよう。そう決意した時だった。
「何やってんの?」
片手にサンドイッチを乗せた皿を持つネロがいた。
「迷子になっちゃって。」
「まぁ普通は迷うよな。」
ネロの向かう先は当然、ルクスもいる部屋だ。ゾグは大人しく後ろをついていく。迷いなく歩くネロに、ゾグは関心する。
「よく迷子になりませんね?」
「あれ、言ってなかった?俺、昔はここの王宮騎士団にいたんだ。」
「初耳ですけど!?」
ふぅん、と興味なさげにするネロをよそに、ゾグはいろいろと聞きたくてソワソワする。しかしネロは話す気がないらしく、目すら合わせてくれない。
そうこうしているうちに、部屋についた。部屋ではルクスが静かに佇んでいる。ゾグは目が覚めたのか、と安心した。ネロはサンドイッチを乗せた皿を、テーブルに置く。
「あの、ルクス……様……。」
どこかよそよそしいゾグに、ルクスは少し不機嫌な顔をした。
「前のほうがいいですね。」
「え?」
「前は気軽にルクスさん、と呼んでくれてたでしょう。」
「それは!記憶がなかったし、それにこんなに凄い人だと思わなくて……。」
慌てるゾグに、ルクスは悪戯に笑う。からかわれたのかと、ゾグは小さなため息を漏らす。
「でも、本当に気にしないで。私もそれに慣れてしまったから。」
「……はい。」
渋々了承をするが、ゾグ本人はあまり納得はしていない。
ルクスとゾグは、騎士団たちが作業する教会跡地へとやってきた。ウベルトが直接部屋にくるだろうと言う話になったのだが、ルクスが二度手間だと言い、強引に部屋から出たのだ。ネロは皿を片付けてから行くと言い残し、部屋を出たあとに別れた。
ルクスは現場を初めて見る。言葉を失うしかなかった。
「ルクス様、もうお体は平気なのですか?」
「ご迷惑をおかけしました。」
教会騎士団たちが作業の手を止め、ルクスのもとへと駆け寄ってくる。全員がルクスの身を案じていた。ゾグはそれを見て、どこか安心するのだった。




