2
翌朝、教会のあった場所には人だかりができていた。王宮騎士団が誰も入らないよう壁を作る。教会本部からも、数人の騎士団とウベルトがやってきたが、教会が跡形もなく消えているのを見て、しばらくあ然としていた。
城の前にも人だかりができている。それは王に対するものだった。
「なんでも人体実験してたらしいわよ……。」
「お前のせいで俺たちも巻き添えになるところだったんだぞ!」
「あぁ、神よ……。」
怒号が聞こえる中、城内も慌ただしい。
「陛下!誰か陛下を見なかったか!」
「自室にもいない。全部の部屋を探せ!」
どうやら朝から王の姿が見当たらないらしい。逃げたのでは?と、誰かがこぼす。王の子供はまだ幼く、この情況を宰相が仕切るが、王も見当たらず、住民たちも落ち着かせなければならず、困り果てている。
教会跡地では、エテルが息を切らしながら遅れてやってきた。
「すまない、遅れた。」
周囲を見渡し、ため息をつく。
「集魔石のみの魔力だったからこの程度で済んだのか……。」
「この程度、ね。」
ウベルトは引き気味に呟く。普通の感覚では、建物が跡形もなく消滅していること自体ありえないことだ。
「王が行方不明らしいが、城はあっちにまかせるしかない。私たちは私たちの仕事をしようか。」
ウベルトは周囲の様子など気にせず、教会騎士団に指示を出す。とにかく整地してしまおうと、急がせる。
「後は任せた。私はルクス様の様子を見てくる。」
そう言い残し、ウベルトはエテルにその場を任せ、混乱する城へと向かう。
騒がしい中、ルクスはまだ眠ったままだ。何度も部屋に陛下を見なかったかと家臣たちが訪ねて来たが、起きる気配がない。
「王様どこいっちゃったんだろーね。」
「やっぱり逃げたんですかね?」
ジュリアンとゾグは、ルクスを見守りながらも退屈そうだ。ネロは鬱陶しそうに言う。
「いいからお前らは手伝ってこいよ。」
「やだよー。絶対エテル団長にこき使われるんだもん。」
「……僕、いってきます。」
じっとしていると余計なことまで考えてしまうため、ゾグは少しでも助けになればと部屋を出ようとした。だが、それと同時にウベルトと鉢合わせしてしまった。
「む、すまないな。」
「い……いえ、ごめんなさい。」
固い胸板にぶつかり、ゾグは鼻を押さえる。
「ルクス様はまだ目覚めぬか。」
眠るルクスを見て、ウベルトは心配そうにする。それはただ眠りから覚めないからか、目覚めるのが本当にルクスなのかわからないから不安なのか、ウベルト本人にもよくわからない感情だった。
「……ここはいいから。」
「そうか。」
ネロとウベルトはそれだけ会話すると、ゾグとジュリアンを連れて出ていった。




