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その刹那、空気が重く震える。ネロがルクスを見ると、それは見たことのない、知らない表情をしていた。
「ルクス……。」
ルクスの手が前に出ると、指先が光り、リーヴィオが崩れ落ちる。急所は外れているようだが、致命傷なのに変わりない。
「ふふ……凄い。これが……。」
リーヴィオは恍惚とした表情をしている。
「世界の驚異に、人間もエルフも関係ない。そう言ったはずだ。」
明らかにルクスではない者が喋っているのを、リーヴィオ以外固唾を呑んで見守る。リーヴィオは出血が酷く、さすがにまずいと思ったのかふらつく足取りでゆっくり立ち上がる。
「いっ……の……はなし、だよ。」
「……王が愚鈍なら民もまた同じか。」
そう言うとルクスはおもむろに手を上げ、指を鳴らす。
「!!!」
ルクスを中心に、世界が白くなる。
ワイスの結界で守られ、ネロたちは無事だ。しかしあったはずの建物は無く、周辺も更地になっていた。リーヴィオの姿もなく、今の衝撃で消し炭にでもなったのだろうか。
ゾグは恐る恐る目を開ける。町は無事だが、建物内にいたはずなのに、夜空が広がっている。
「ルクス!」
ネロが駆け出す。そこにはルクスが倒れており、気を失っているようだ。
ガチャガチャと鎧の音をたて、城の騎士団たちがやってくる。さすがに今の衝撃を無視できないようだ。
「なっ……これはどういうことだ!?」
騎士団長のブロウが部下を引き連れやってきた。
ネロが落としたであろう集魔石に、ワイスが気付く。それを躊躇なく手に取り、破壊した。
「大丈夫なの?」
「魔力がなくなっている。……しかし。」
騎士団に囲まれてしまった。住民もちらほらと集まり始める。ざわつく周囲に、ワイスは注目を集めさせる。
「王の愚かな行為によって、たった今神罰が下された!それに神官長が手を貸し、神の怒りをかったのだ!」
そう叫ぶと、ブロウを呼ぶ。
「そういうわけで、これから私たちは王に話がある。部屋を用意しておきなさい。」
「賢者殿……しかし……。」
「一刻を争うのがわからないのか?」
混乱するのも無理ないのだが、ワイスはそれを一喝し、無理矢理その場を収める。
城へ移動する最中も周りに何もなく、見晴らしがよくなっている。幸い教会周辺に建物はなく住民に怪我はない。
ルクスの中にいる神が目覚める方法。それは、ルクスの今の意識をなくすことだった。今の人格が邪魔をし、神が出てこれない情況だ。己をただの人形だと自覚させ、認めさせる。リーヴィオが行ったことは、ルクスにとって効果的な行為だったのだ。だが不完全な状態での覚醒だったため、被害も少ない方で、力を使い果たしたのか再び眠りについている。だが次に目覚めるとき、ルクスの人格かどうかはわからない。
「でも、神様が目覚めるのはいいことじゃないんですか?何故皆嬉しそうにしないんです?」
ゾグは不思議に思うが、ジュリアンが少し驚き答える。
「え?あーそっか。あのね、ゾグが教わったことは表向きの目的ね。」
「表向き?」
「そう。本当は、神様が目覚めないようにルクス様を守ることなんだよ。」
エテルから教わったことと真逆のことで、ゾグは余計に混乱するのだった。




