2
ネロはおもむろに銃を取り出す。銃口はエルフに繋がっている管に向いている。ルクスとアイコンタクトを取ると、そのまま引き金を引く。魔力の供給が止まるが、集魔石には十分に魔力が溜まっている。ルクスはエルフに駆け寄るが、意識はない。
「何をする!」
憤慨する王にワイスは呆れる。
「こうも阿呆だとは思わなかったな。」
「何だと……?」
「世の中全てはバランスが重要だと教えていただろう?私はできるだけ人間の味方でいたが、学ばぬ阿呆は嫌いだ。」
そう言うと、ワイスは集魔石に手をかける。壊そうとしたのだろう。しかしそれを慌ててルクスは止めた。
「触らないで!」
「!?」
石に手が触れた瞬間、ワイスは弾き飛ばされた。その衝撃で、ルクスたちも爆風に巻き込まれる。王にいたっては壁にぶつかり気絶したようだ。
「一体何が……?」
ワイスは予想外の出来事に少し困惑する。そしてすぐ冷静になり、理解した。
「そうか……私が人間だからか。」
魔力とは本来、自然のエネルギーのことで、精霊やエルフなど神由来で誕生したものに備わっているものでもある。本来人間にはないものだ。安定した世界を作るため、精霊の手助けになるよう、神が一部の人間に特別に魔力を与えた。だがそれは自然のエネルギーとは異なるものだ。そして人間の寿命は短い。そのため、定期的に魔力を持った人間が生まれるようにしたという言い伝えがある。
異なる魔力が触れ合うと拒絶反応が起こる。少量なら問題ないが、膨大な魔力になると別だ。ワイスが弾かれたのは当然である。ルクスはそれを心配していたのだ。
「ワイスさんにこの量の魔力は危険です。それに、餌だろうがなんだろうが、破壊してでも止めなければいけないんです。」
集魔石を巡る戦争、魔力を安定し供給させる研究、それは精霊にとって望んでいないことだ。確かに人間が栄えることは精霊にとっても喜ばしいことなのだが、人間以外の住む場所がなくなること……精霊はそれだけは許せないのだ。精霊に見捨てられ国全土が死ぬのも、時間の問題だろう。
「ですがそれでは駄目なんです。話し合いをして、研究を止めるよう説得し、納得してもらわなければ。」
「……私もルクス様のように人間を慈しむことができれば良かったんだがね。」
ワイスは気絶している王を起こし、城の外へ繋がるゲートを作る。
「外で待っているから、石の処理は任せたよ。」
そう言い残し、ワイスは王を連れて消えた。
「僕の研究のせいで……。」
ゾグは酷く落ち込む。それに対し、ネロは冷たく言い放つ。
「全くだな。お前のせいでルクスばかりに負担がかかる。」
「ちょっと、ネロ君。」
「本当のことだろ!こんなやつらがいるから……!」
ジュリアンが止めるが、ネロの怒りは収まらない。しかし何かを言いかけ、口を紡ぐ。ゾグはそれを気に留める気力もなかった。




