負い目と後悔
「……後を追いますよ。」
沈黙を破ったのはルクスだ。珍しく不機嫌な表情をしている。見たことのない表情に、ネロもジュリアンも何も言えず、ゾグに至っては話を理解していない。
「師匠は任せろと言っていました。」
「ワイスさんなら可能でしょう。しかし所詮は人間です。……あなたならこの意味がわかりますよね?」
「…………。」
アネルは険しい表情のルクスに言葉が返せないのではない。その意味を理解したうえで、何も言い返せないのだ。
ルクスはワイスがしていたように、その場にシニスを映す。
「ごちそうさまでした。」
そう言ってルクスはシニスへと向かう。ネロとジュリアンもそれに続き、ゾグも一礼し続く。1人残されたアネルは、少し困った顔をすると、カップを片付け始めるのだった。
シニスに1人入ったワイスは、城門で立ち往生していた。どうやら騎士団に止められているようだ。
「何故入れてくれないのかな?」
「今日お越しの予定ではなかったはずです。」
「うーむ。じゃあしょうがない。」
そう言うとワイスは先程と同じく、ゲートのようなものを作り直接城へ入っていく。騎士団は何が起きたのかわからず慌てるのだった。
「全く。きみは昔から、私の忠告を聞かない子だったね。」
ワイスは暗がりから現れた。オリエス国王は突如現れたワイスに驚き声をあげるが、理解したのかすぐに態度を変えた。
「ふんっ。あなたにはもう期待しない。」
「だからといって、こんな非人道的なことをすることはないんじゃないかな?」
国王の背後には、たくさんの管に繋がれボロボロになったエルフがいた。既に虫の息で、おそらくは助からないだろう。管の先には集魔石が光輝いている。
「なるほど。魔力を強制的に集魔石へ送り込み、魔力が豊富になった集魔石で国の魔力を安定させていると。」
冷静に分析するワイスに、国王は得意気になる。
「エルフでも十分国を満たす魔力がある。ただ、いつ駄目になるかわからないのが問題だ。」
それを聞きワイスは頭を抱える。
「だそうだが、ルクス様には聞かせたくなかったよ。」
「何?」
ワイスの後ろから、怒りの表情をしたルクスが現れた。ネロはそれを見て思う。
(最近のルクスは……ずっとこんな顔だな。)
ネロは王とエルフを交互に見る。こんな倫理観に欠ける人間のほうが、魔物よりよっぽど恐ろしい。
ゾグはその光景にショックを隠せないでいた。目の前に広がるのは現実なのだろうか、と。自分がしてきた研究が、1つの命を消費しているようなことをしている。否、妖精だろうがエルフだろうが変わらない。なんて愚かな研究をしていたのだろう。ゾグは改めて、自分の行ってきたことを悔やむのだった。




