初任務
朝、ゾグの目覚めは体中筋肉痛で最悪だった。基礎体力作りと称して、ジュリアンと腕立て伏せやら腹筋やら……人生でやったことがない数をこなした。
「今日もあれをやるのか……?」
気分が乗らないため、いつもよりダラダラと支度をしていると、勢いよくドアが叩かれる。それにもはや恐怖すら覚える。しかし今日はどうやら違うようだ。
何も言われず不安になりながらも、ジュリアンの後をついていく。ついていった先には、ルクスとネロが待っていた。
「早々に申し訳ないのですが、シニスまで一緒にお願いしますね。」
「シニス……もしかして、研究所へ?」
ゾグも気になっていたようだ。こうして呼ばれたのも、当事者だったからだと納得していた。
「セヴルの件がありますからね。」
ウベルトが以前調べさせたようだが、どうやら王宮騎士団が出入りしているのは確かなようだ。しかしそれ以上のことは調べるのが困難だった。リーヴィオが研究を盗み見たこともあり、現在の研究がどうなっているのか不明なため、急遽行くことになったようだ。
プルエでは良い思い出がない。ゾグは船の上で物思いに耽る。一般人だった自分が、教会騎士団として再びオリエス大陸に降り立つのだ。
相変わらずプルエは港町らしく活気に溢れている。人が死んでいたことなど嘘のようだ。しかしちらほらと王宮騎士団が見える。未だ警戒しているらしい。そんな彼らを横目に、ルクスたちは王都シニスへと向かうのだった。
道中、特に変わったところは見当たらない。魔力も妖精も、豊富と言える。
プルエからシニスまで、そう遠くはない。昼の時間から歩いても、夕刻には町が見えてくる。整備された道では、よく人とすれ違う。もし集魔石が大量に採掘されていたら、住処を追われた魔物がこの場所に現れるかもしれない。それを思うと、研究には手を付けていないのかとも思うが、それはシニスが見えるまでわからない。ルクスも特に嫌な気配はしないが、気になることがあった。
「なんだか、とても安定していて気味が悪い……。」
良いことではないのかとゾグは思うのだが、確かに以前とは違うように感じる。言葉にはできない感覚だ。
「前来たときは妖精も各地まばらだったのに、今回は魔力が行き渡っていて妖精が均等にいる感じがする。」
「変なのか?それ。」
「精霊が何かしなければ魔力は増えません。まばらだったのがこの国の精霊にとって最良のバランスだったんです。」
人の住む場所にはある程度の魔力を、自然豊かな場所には豊富な魔力を、誰も近付かない魔物のいる場所には少ない魔力を。そうして精霊自身の負担を減らしている。しかし今この大陸は安定した魔力が均等に各地へ巡っている。少ない魔力を均等になら負担などないが、自然が豊かでいられる程の魔力を均等にとなると、精霊の負担は大きい。
「やっぱり何かあるんだ?」
ジュリアンは王都があるであろう方向を、ジッと見つめる。途端に嫌な予感が駆け巡るゾグだった。




