変わらぬ朝、変わる国
翌朝、宿屋から出たところを神官長に捕まった。見送りか、と思いきやその表情は青ざめている。有無を言わさず連れていかれた場所は、教会だった。しかし城の方が騒がしい。深刻な表情で神官長が口を開く。
「王が亡くなりました……。」
一行は騒然とした。話を聞くと、世間を騒がせている魔物に襲われたような状態で発見されたらしい。しかし魔物が出れば騎士たちが気付くはずだが、誰も気付いた様子もなく、内部の誰かの仕業では?と憶測が飛び交っている。
城では亡くなった王に代わり、第一王子が急遽指揮をとっている。その他にも3人の子供がいるが、1人はまだ小さいため上の兄弟2人も協力しなんとかしているようだ。
「葬儀などのお話もあるので呼ばれているのですが……ルクス様もぜひ来ていただきたいと。」
城では第一王子が忙しそうに家臣たちに指示している。神官長が申し訳無さそうに話しかける。
「バタバタして申し訳ない。」
「仕方ないです。いきなりですから。」
そしてルクスたちに気付くと、丁寧に自己紹介をする。
「初めてお目にかかります。ノール国第一王太子のハンネスと申します。お会いできて光栄です、ルクス様。こんな状況なのが残念ですが。」
「こちらこそ。急なお話で驚いてます。」
応接間へ通され、ハンネスが口を開く。
「単刀直入に言おう。私はあなたを疑っている。」
ハンネスはそう言うと、ルクスを見る。ネロとエテルは抗議しようとしたが、ルクスに止められた。
「理由を聞いても?」
「まず昨日の件があります。父が憎いはずだ。それにあなたなら、人知れず父を殺すのも可能なはず。」
「なるほど。」
1人納得するルクスは否定することもなくそれを聞く。
「否定しないんですか?」
「そうですね……。昨日の件は既に解決したので私は何も感じていません。それにいくら何でも、見張りのいる城に侵入するのはさすがに無理ですね。」
冷静に答えるものの、ハンネスは納得していないようだった。しかしルクスは昨夜、宿屋の食堂にしばらくいたため証人がいる。それを伝えると諦めたようで口をつぐむ。
「殿下……今は犯人探しよりもやるべきことがあるはずです。」
神官長がそう言うと、ハンネスは落ち込んだ様子で返事をする。父親が死んでやることが多く感情がついていかないようで、相当参っている姿に神官長は心を痛めた。
「準備するものもたくさんあります。しっかりしていただかないと。」
教会は政治に口を出さない。そのため、言い方は悪いが無事葬儀が終わればそれで良いのだ。淡々と話を進めるあたり、神官長も教会の人間だと思わされる。
長いこと話し込んでいたが、ハンネスも忙しく話も進まないため、ルクスたちは城を後にした。
「本当に手伝わなくて大丈夫ですか?」
「はい。ゆっくり準備できそうなので……。それにルクス様もお忙しいでしょうし。」
「そうですか……。」
しばらくは王が亡くなったことは伏せ、病気で伏せっていることにするらしく、その間は政務に専念し落ち着いた頃に公表すると言う話だった。
「うっかり口を滑らせないように。」
「エテルの誠意次第かしら。」
「誠意みせろー。」
口外しないようアレスとセーアに言うが、素直に聞く気はないようだ。
後ろ髪を引かれながら、ルクスはセヴルを後にするのだった。




