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神官長と研究者の数人が、空を見上げ感嘆の声をあげる。教会へ再び戻ってきたが、中には入らずしばらく空を仰いでいた。
「精霊様が見捨てるのも納得ですね……。」
ネロは曇天の空を見る。町の人々は何があったかも知らず、これからも変わらず過ごすのだろう。
ルクスたちが城から戻ってきた。王はそのまま残ったらしく、ルクスとエテルだけだった。不安気な表情で研究者たちは様子を伺っている。
「集魔石の研究は構いませんが、新たな採掘や妖精などを使った実験は禁止です。おわかりですね?」
「良いのですか?」
「やったものは仕方ないですから。後は自己責任、ですよ。」
研究者たちは複雑な顔をしていた。今までやってきた研究を止めるのはやはり不満だろう。しかし研究は続けて良いと言われれば、嬉しいものだ。
「何かあれば、即連絡を。」
「もちろんです。」
神官長に釘を刺すと、ルクスたちは今日の宿屋へと向かう。
宿屋に入ると、暖炉の暖かな空気に包み込まれた。
「お連れ様がお待ちですよ。」
笑顔で宿屋の女将に言われ、ルクスたちは不思議に思う。連れなどいないはずだと宿屋の一室に行くと、教会本部にいるはずの双子が待っていた。
「何でお前たちがここにいる!」
「だって暇だったんだもーん。」
ルクスに抱きつき、エテルに向かって舌を出す。だが、追い返すわけもいかず用事も済んだため、アレスとセーアはそのまま宿に泊まることになった。
陽が沈み町が静けさに包まれる中、城での王は寝室で暴れていた。手当り次第に物を投げ、部屋は散らかり放題だ。部屋の外では、見張りの騎士が呆れていた。
「くそっ!あんなガキに邪魔されるなど!」
息を荒くし投げるものもなくなると、ベッドへ座り込む。
「……?」
落ち着きを取り戻すと、カーテンが揺れているのに気付く。窓は開けていないはずだ。不思議に思い窓を閉めに行く。
「開けていたか?」
窓に手をかけたその時、背後に視線を感じた。ノックの音も、ドアを開ける音も聞こえなかったはずだと考えていた時だった。
「馬鹿なやつ。おとなしく戦争だけしていればよかったのに。」
冷たい声がした瞬間、王は声を上げる間もなくその場に倒れ込んだ。喉が大きくえぐられ、文字通り皮一枚で首が繋がった状態だ。夜の風が冷たく唸り、雪が部屋に吹き付け血溜まりに雪が溶ける。
凍りついた王の死体が発見されたのは、翌朝の事だった。




