愚か者
ノール国王都セヴル。そこは他の土地と比べとても豊かだ。結界も強固で、魔物に怯えている様子もなく、その様子に疑問を持つ者はいない。
城と教会の周りには、不自然なほど妖精が集まっていた。まるで妖精を逃さないかのように、更に結界が張られていた。
「なんだ……これは!?」
「魔力が溢れてる……でもこれは……。」
妖精は弱々しく光っている。
教会へ行くと、数人の騎士がたちはだかる。ノール国の王宮騎士団だ。
「なんの真似だ。」
「申し訳ありません。ですが、国王が何人たりとも通すなと。」
「ふざけるな!!」
エテルは怒鳴った。当然だろう。教会の人間が教会に入れないなど、聞いたことがない。ネロも頭にきているようで、表情に表れている。
「王宮騎士団が教会騎士団の真似事か?国王はいつから神官になった?」
「神官長も同意です。」
その言葉に耳を疑う。しかし、手を組んでいるのなら当然だろうとも思った。
ネロはルクスの手を引き、騎士たちの間を進もうとする。しかしそう簡単に通れるはずもなく、止められた。
「触るんじゃねぇよ!」
騎士の手を払い除け、ネロは首を掴む。
「誰を前に指図してるのかわかってんのか?」
「ぐぁっ……!」
ネロの手に力が入り、騎士の首を締め上げる。それをやんわりとルクスは止める。
「ネロ、死んでしまうよ。」
「殺そうとしてんの。」
「やめなさい。」
ネロは手を話すと、騎士は地面に座り込み、咳き込む。もうひとりの騎士はネロに剣を向けようとするも、エテルがその手を掴み止める。
ルクスはそれを見てため息をつき、騎士たちに言った。
「私はこの結界どころか、町を消すこともできるのですよ?」
「ひっ……!」
それはいつもの穏やかな表情ではなく、怒りに満ちた顔をしていた。怯えた騎士は何も言えず、ルクスたちは教会に進んでいった。
聖堂には神官長と国王が待っていた。
「ルクス様……。」
「言い訳は……聞いたほうが良いですか?」
神官長が何か言いかけたとき、国王が割って入った。
「どうですかルクス様、この町は!いやはや、私は妖精が見えませんからな、神官長に頼んで結界を強くしてもらっているんですよ!」
国王はまるで隠す気も悪びれもなく、嬉しそうにしている。
「それだけではないだろう?集魔石はどうした。」
エテルが眉間に皺を寄せながら問う。これでも怒りを我慢しているようだ。
「あれは我々の生活を豊かにしてくれる物です。いくらルクス様でも渡すことはできませんよ?」
「それがこの国を終わらせてもですか?」
「終わりません!こうして妖精は我々の手中にあるのですから!」
ルクスはその言葉に激怒した。もしかしたら初めての感情かもしれない。どこかでそう思いながら、ルクスはその怒りを爆発させた。
「愚か者め……。では私がこの国を終わらせてしまおうか?」
ルクスに魔力が集まっていくのがわかる。エテルもネロも止めようとしない。
魔力がなくても熱量が伝わってくる。国王は思わず膝から崩れ落ちる。




