精霊
魔力は薄いがかろうじて妖精は存在していた。だがルクスは、何か大きな力を感じていた。大きな力の源は精霊だろうが、それは禍々しい力のような、胸がつかえるような。エテルもそれを感じているようで、冷や汗をかいている。
「……早く団員たちを探しましょう。」
エテルは先頭を切り進んでいった。
人々は変わらず生活している。曇天の下、羊の放牧をしている。
一月ほど前、エテルはこの地を訪れていた。その時はまだごく一部の地域だけが調査対象だった。だが、たった一月で国全土にまで渡るのはさすがに早すぎる。
「結界もギリギリだ……。」
「教会にだけ寄っていきましょう。」
教会では祈りを捧げる神官がいる。ルクスたちに気付くと、慌てて駆け寄ってきた。
「あぁ……ルクス様!」
ただの神官では結界は張れない。いつ結界が無くなるかわからない恐怖に、神官は怯えていたようだった。
「なぜこんな状態になるまで何もしなかった!」
エテルは怒鳴るが、ルクスが止める。
「本当に急だったのです。私は急いでノール国教会に報告しました。しかし神官長が結界を張るからしばし待てと……。」
肩を落としながら神官は語る。エテルは変わらず憤っている。
「とりあえず結界は張りましょう。魔力が薄いのでどこまで出来るかわかりませんが。」
そう言うとルクスは結界を張る。魔力が薄いと言う割に、とても強固な結界だった。しかし魔力も妖精も変わったところはない。ルクスは立ち上がったが、少しふらついたのがわかった。
「大丈夫か。」
「これは……早々になんとかしなければ……。」
いくら結界を張り直したところで、それを維持させる魔力がなければ意味がない。
ルクスたちは本来の目的地へと向かった。
あたり一面黒い霧のようなものが視界を奪う。あちこちに教会騎士団員の死体が転がっている。その中心には揺らめく青い炎のようなものが揺らいでいる。
「………………。」
“それ”は何かに気付いたようで、移動を始めた。
「……主よ、申し訳……ありません。」
繰り返すようにそう呟く“それ”は、黒い霧に消えていった。




