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とある若い夫婦が、聖堂の長椅子に腰掛け談笑している。奥からアレスと共に、少年が顔を出す。夫婦はそれに気付き迎え入れるが、アレスは少年の背を押し前にやり、自身は後からゆっくりついていく。
「まぁ、アレスも来てくれたのね、嬉しいわ」
そう言うと女性は少年とアレスを座らせた。夫のフェデリコと妻のサラは、ニコニコとしながら2人を見る。どうやら昔事故に逢い、サラは子供が産めなくなってしまったと言う話だ。
楽しそうに話をしている少年を見て、アレスはつまらなそうな顔をする。
「あのね、今日はお願いがあって来たの。」
サラは少年の目を見る。
「ずっと小猫のままじゃないだろう?だから今日は、名前をプレゼントしたいんだ。」
「名前……。」
少年はアレスを見ると、その瞳は輝いていた。
「……僕、行くね。パパが呼んでる。」
「行っちゃうの?」
残念がる少年に、アレスは不機嫌さを見せずに返す。
「次会うとき教えてよ。」
ルクスの部屋には、ネロとセーアもいた。何故セーアまでいるのか不思議だったが、どうせ文句でも言いにきたのだろうとアレスは思った。
「今日はもう、あの子に会うのは控えなさい。」
「わかってるよ……。」
つまらなそうに返事をすると、セーアがため息を付く。
「あんた、ペットを取られたからって不貞腐れないでよ。」
「そんな事思ってない!」
「思ってるわよ。」
「セーアに何がわかるのさ?」
アレスの問いに、知らなかったの?と言った表情をしてセーアは答える。
「わかるわ。だって、私がそう思ってるんだもの。」
アレスはムッとした。反論しないのは、心のどこかでそう思っていたのかもしれないからだ。この不快な気持ちが何なのかわからなかった。
「私にはママがいるもん。独り占めしちゃうもんねー。」
「あー!ズルい、僕も独り占めする!」
しかしその気持ちもすぐになくなった。
(あぁ……本当に気味が悪いガキ共だ。)
ネロはルクスに抱きついている双子を、蔑んだ目で見つめていた。