それぞれの夜
荷物を下ろした青年は、眼鏡をかけた少年と共にゾグに自己紹介をした。
「俺はリオス、こっちの眼鏡はジェニ。」
「リオスさんとは先程会ったんです。」
2人共出身国が違うようで、田舎から上京してきたと説明した。
ゾグは試験の内容を知っているのか聞いた。しかし知らないと一蹴された。どうやらゾグと違い、試験内容は気にしていないようだった。
「ゾグばビビリだなぁ。」
「リオスは楽観的すぎじゃない?」
「それはありますね。」
こうして3人の話は弾み、夜が老けていくのだった。
ウベルトは教会の戸締まりをしていた。鍵を閉めたあと、物音がしたのに気付く。
「子供は寝る時間だ。」
「見つかっちゃったぁ。」
アレスとセーアが物陰から現れ、その後ろから少年も顔を出す。少年はアレスの服を着ていて、少し大きいのが目に見える。そしてその手には、クッキーが握られている。
「この子、お菓子食べたことないって言うのよ?」
「可哀想じゃん。」
このクッキーはウベルトの部屋にあったものらしく、ウベルトは双子にしょっちゅう部屋にあるお菓子を盗まれるため顔をしかめたのだが、先手でこのようなことを言われたら何も言い返せない。
「……腹が減っているなら食堂に行きなさい。まだ開いている。それと案内なら明日にしろ。」
「はぁーい。」
素直に返事をし、アレスに引っ張られながら少年は慌てて走り出した。
ルクスは自身の部屋で本を読んでいた。ルクスは読書が好きだ。人の考える創作物は、自分の知らない知識を埋めることができてとても面白いからだ。
部屋から外を見ると、子供たちが走っているのが見える。ルクスは優しく微笑むと、再び本に目をやるのだった。