飽和攻撃
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今回もぜひお楽しみください。
パイロットスーツに身を包んだ勇名は、永遠から状況の説明を受ける。
「敵は八洲自衛隊。おそらく偶然に互いをレーダーで捉えて、反射的に攻撃をしてきたと思われるよ。向こうが打ってきた対艦巡航ミサイルは迎撃完了してる。コーヴァン北極基地に向かう艦隊だと思われるから、こっちにとっては各個撃破のチャンス」
「了解。敵の規模や構成はメインスクリーンに表示してくれ」
「了解。八洲自衛隊の軽空母もいるから、なんとか沈めたいとこだよ」
「そうだな。艦載機はメテオールか」
「その通りだよ。対空戦支援も大切になる」
開いたコックピットに、永遠と順番に乗り込む。各種点検を手早く確実に終わらせると、フィジカルコネクタが伸びて、勇名の身体に刺さる。
素早く起動準備を終えて、すぐに起動する。残りの点検項目を終わらせると、既に準備が終わってカタパルト前にいる早ヶ瀬機の後ろに並ぶ。
早ヶ瀬機が出撃し、羽佐間機、クレール機と続く。
着水成功したところで、勇名は改めてメインスクリーンに映った敵の状況を確認する。艦載機と機甲神骸が出撃したようだ。
「レーダー周りの新しい機能、便利だな」
「うん。お兄ちゃんが見やすいでしょ」
「ああ。ソナーの情報も見られるし、戦況の把握がしやすくなった」
ヴァルタザールが用意した部品とアプリケーションだけで、ここまで性能が向上している。コーヴァン北極基地について本格的な改修をしたらどれだけいい機体になるだろうかと想像する。
「永遠、とりあえず敵航空機に対空ミサイル行くぞ」
「了解。ロックオン。セル1から4まで発射準備よろし」
「打てぇ」
「打ちー方始めぇ!」
背部ミサイルランチャーから四本のミサイルが発射される。敵の航空機にとっては、下から忍び寄るミサイルへの対応が難しいため、アーミスからの攻撃は最大級のリスクとなる。
「次は、敵アーミスから逃げつつ、空母を狙うぞ」
「了解。ロックオン。セル17から20まで発射準備よろし」
後ろに回り込んでくる敵アーミスから逃げつつ、空母をロックオンする。
「打てぇ」
「打ちー方始めぇ」
対艦ミサイルが発射される。六式はミサイルが発射された後、素早く振り返り背面滑走をしながら携行式無反動砲を連射する。敵アーミスのうち、1機の足に直撃し、そのアーミスが海面に叩きつけられ大破する。
六式はすぐに向き直し、背後の敵アーミスをロックオン、ブレット4本を真上に放つ。これも、ソフトウェア改良でできるようになったことだ。
ちょうどそのタイミングで、敵軽空母の第一甲板から巨大な炎が上がる。それにより、ミサイルひとつが命中したことがわかる。
「お兄ちゃん、軽空母は艦載機の離着陸ができなくなったよ。ラッキーだね」
「ああ。順調だ」
敵からの砲撃を微妙な軌道変更や速度の緩急でかわしながら、うまく敵の背後にブレットミサイルが落ちてきたことを確認する。
敵の相手をブレットに任せられると判断した勇名は、針路を敵軽空母に変える。悪くても中破させて、決戦の場から引きずりおろしたい。たった二隻の軽空母のうちひとつが欠ければ、八洲にとって大きな戦力ダウンになるだろう。
軽空母の海面近くに狙いを定めて、肩部無反動砲を連続で放つ。二発が命中し、水柱が上がる。うまくいけば、浸水する位置だ。
「お兄ちゃん、わだつみが、飽和攻撃をやるって」
「了解。敵から距離をとるぞ」
おそらく、待ち伏せ地点での戦闘を意識した訓練的な位置づけなのだろう。
「管制塔Cより羽佐間機、敵艦隊全体がレーダーで捉えられる位置どりを維持せよ」
「羽佐間機、了解」
恐らく、六式のレーダーを使ってミサイルのロックオンをするのだろう。数秒後、無数の艦対艦ミサイルが、わだつみから発射される。
第一波、第二波のような間隔はなく、まさに無数のミサイルが切れ目なく敵を襲う。敵艦隊も対空迎撃ミサイルを打ち返すが、明らかに数が足りていない。
「敵もネプチューンシステムを搭載してるけど、これほどの物量差までは対応しきれないのか」
「でも、ネプチューンシステムなら理論的には迎撃可能なはずだよ」
勇名はわだつみと八洲艦隊のミサイル戦を見守る。始めは八洲艦隊も迎撃ミサイルやCIWSでなんとか守り切っていたが、少しずつ命中するようになっていく。
「管制塔Cより機甲神骸部隊、八洲艦隊への攻撃を再開せよ」
「早ヶ瀬機了解。A部隊は距離を保ちつつ、肩部無反動砲で八洲艦隊を攻撃せよ」
「了解」
勇名は早速、敵の汎用護衛艦をロックオンして肩部無反動砲を連射する。敵はわだつみからのミサイルへの対応に追われ、水上型機甲神骸への対応が全くできていない。A部隊からの砲撃は、ほとんどが命中している。
「ジリ貧になって後退を始めたか」
八洲の艦隊はすべて火災が発生しており、沈まないのが不思議なほど傷んだ艦もいる。待ち伏せ地点に到着したとして、どれも戦力にはならなそうだ。
「飽和攻撃はほとんど防がれていた。課題だな」
「そうだね。相手もネプチューンシステムを導入してるからね。一筋縄にはいかないよね」
勇名はわだつみに向けて帰投しつつ、攻撃の効率をどうやってあげるべきかを考えていた。
お読みいただき、ありがとうございます。
わだつみの攻撃規模の大きさを表現できていましたでしょうか? ドキドキします。
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今後とも、本作をよろしくお願いします❗