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セラ大尉の要望

今回も本作を開いていただき、ありがとうございました。

今回は少しほのぼのした回になります。

では、お楽しみください!

 出撃した六式は、すぐに要救助者を発見した。救助艇から手を振る男三人の姿が確認できる。


「あれは……ヴェリテリア海軍の制服か。永遠、この辺りにヴェリテリアの艦艇や航空機はないか?」

「識別反応ではないよ。2マイル先に墜落した航空機に見えるものがあるけど……」

「なるほどな。八洲艦隊の動きは?」

「今のところ異常なし」


 勇名は離れたところで空中待機させていた救助用回転翼機(ヘリコプター)に通信し、救助の実行を依頼した。

 救助は順調に進み、幸い八洲艦隊に気づかれた様子もなく終了した。早々に撤収する。


「今の島々の様子*からして、ヴェリテリア本国に引き渡す方が良さそうだな」

「そうだね。その方が、八洲と揉めなくて済みそうだね」


 わだつみに帰投して、登場後検査も終えると、士官室に来いとの伝言を渡される。急ぎ向かうと、士官室には羽佐間一佐と救助したヴェリテリア人三人が待っていた。



◆◇◆◇◆



 士官室での会談は三十分ほどで終わった。勇名は三人の世話係に任命され、来客用の寝室や、近くのトイレ、食堂や売店なども案内した。誠十郎によると、三人がヴェリテリア軍に合流するまでの間は、衣食住と少しの現金、共用エリアでの自由行動が保証されるとのことだった。


 ヴェリテリアと八洲はGOSTOでの繋がりの他、一対一での同盟関係もある。また、血の観艦式事件では将軍が死亡しており、その責をわだつみに求めてくる可能性もある。


 敵に回る可能性がある中立国だけに、慎重に、丁重にもてなす必要があると、誠十郎からメールが届いていた。困ったときには葵にも頼っていいとのことだった。


「エデュアール=セラ大尉、つかぬことをお尋ねしますが、わだつみのクレール=セラ三尉とは何かご関係が?」


 勇名は得意とは言えないフランス語を使い、セラ大尉に話しかける。


「おや、クレール=セラは私の妹だが、羽佐間曹長の知り合いですか? あっ、そうか。アーミス部隊で一緒なのか」

「はい。では、後ほどお話できるように取り計らいますね。まずはシャワーを浴びてお(くつろ)ぎください。念のため医官の診察を受けていただくので、その手配をします。廊下で電話してるので、緊急時や移動時は声をかけてください」

「わかった」


 勇名はシャワールームを出て、着替えと、制服のクリーニングの手配を済ます。そのあとは、医官とクレール=セラ三尉に電話をかけて、スケジュールを組んでいく。


 シャワールームの更衣室に三人分の着替えを届けていると、エデュアール=セラ大尉に声をかけられる。シャワールームからの声がよく響く。


「羽佐間曹長、君はとても気が利くし、フランス語もよく勉強していて、本当に助かるよ。しかし、その年齢で士官候補生とは、すごいことだな。実は君の噂はヴェリテリアのアーミス部隊でもよく知られていて、曲芸のようなアーミス操縦ができるんだろう?」


「曲芸なんて言い過ぎです。人より感覚汚染の進行が遅いらしくて、搭乗時間が長いですから、ただその差があるだけです」


「その謙虚さも八洲人らしい美徳だな。実は俺はわだつみの随伴艦隊任務をやったことがあって、君の乗るロクシキのアクロバティックな動きを見たことがあるんだ。正直、自分の才能のなさに愕然(がくぜん)としたよ」


 随伴艦隊というのは、わだつみを護衛するためにGOSTO諸国が回り持ちする仕事だ。そうなると、セラ大尉は普通なら前にもわだつみに乗ったことがあるということになる。


「随伴艦隊任務をやられたということは、わだつみに上陸したことがあるんですね。なら、そのときのお気に入りの店とかあれば、お連れしますよ」

「本当か? ならお願いしたいことがあるんだ。お前達も行くだろ?」

 ボネ中尉とフルニエ少尉も同意する。


 セラ大尉の興奮した声に、軽く微笑む勇名だった。



◆◇◆◇◆



 セラ大尉の要望は、汐汲坂フライデーナイツのライブを見たいというものだった。勇名は、前にリリィが同じことをいっていたことを思い出し、この機会にどうだろうかと計画を立てた。


 その結果、葵が運転役、クレール=セラ三尉、勇名とリリィ、護衛にエイン、遭難者三人の計八人の大所帯で行くことになった。大型のバンを用意して、遠いところからピックアップして回る。


「私は勇名と二人きりでデートしたかったのに、なぜかこんな大人数で誘われるとは……」


 リリィが口を尖らせて怒る。セラ大尉はアハハと笑いながら、勇名の頭を撫でる。


「羽佐間曹長、こんな素敵なレディに対して失礼じゃないか。改めて別のデートに誘うべきだ。そうでなかったら、私がお相手しましょう」

「それは結構です。私は誰でもいい訳ではないので」

「残念だ。革命の女神とデートできたら夢のように素敵だと思ったのに」


 大勢でガヤガヤと向かうと、あっという間に汐汲坂の中ほどに近い駐車場にたどり着いた。そこからフライデーナイツ専用劇場までは歩いて三分ほど。


 専用劇場の中は思っていたより広く、薄暗い照明の下では、たくさんの人が目を輝かせてアイドルの登場を待ち望んでいる。

 やがて、開始のブザーがなり、幕が開く。




*今の島々の様子……この世界は一つの大陸と周辺の島々以外は、すべてが海流に乗って流れる浮島である。従って、国の場所も関係性も常に移ろう性質がある。


今回も本作をお読みいただき、ありがとうございました。

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