表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

19/52

仲間の戦死

今回もこの作品を開いていただき、ありがとうございます。

本日は少し鬱展開となります。

どうぞ、お読みくださいませ。

「ミルコさんが……」


 勇名はレーダーを抱えるようにして見ながら、仲間の反応が消えたのを、何かの間違いではないかと思っていた。


「永遠、ミルコさんの反応が……どうなってるか分かるか」

「お兄ちゃん、機体反応が消えて、SOS信号もない。多分、やられちゃったんだよ……」

「そんな……」


 勇名は陽気で女好きの仲間が戦場で命を落としたであろう現実を受け止め切れない。


管制塔Cコントロールチャーリーより羽佐間機(アルファツー)、出撃許可が下りた。直ちに出撃せよ」

羽佐間機(アルファツー)了解」


 勇名は目の前にあるカタパルトに六式の足を乗せる。計器の最終チェックと安全確認を済ませる。


羽佐間機(アルファツー)、滑空準備よろし」

管制塔Cコントロールチャーリーより羽佐間機(アルファツー)、滑空を許可する」

羽佐間機(アルファツー)、出ます!」


 カタパルトで加速、滑空すると、水平線ぎりぎりのところで敵味方が戦っている様子が見える。実際の戦況とレーダーを見比べながら、海面に着水する。


羽佐間機(アルファツー)、着水に成功」

ご武運を(グッドラック)


 六式は姿勢を低くして、機甲神骸(アーミス)同士の交戦海域に向かいつつ、レーダーで敵機甲神骸(アーミス)をロックオンする。


「ブレット発射準備よろし」

「永遠! 撃て」

「了解!」


 背部汎用MLS*から6本のブレットが発射される。同時に、前方の視界とレーダーの情報を重ねながら、右肩部無反動砲での砲撃を始める。


「お兄ちゃん、このままだとジョージ機(アルファシックス)が孤立しそう」

「援護に向かう」

「了解」


 他の仲間の戦闘海域から、外へ追い詰められつつあるジョージ機(アルファシックス)を目標に、最大戦速で接近していく。


「後ろを取られかけてる……永遠、目標はEnm-4(エネミーフォー)、ブレット行くぞ」

「ブレット発射準備よろし」

「撃てぇ!」

「ブレット発射」


 ブレットが一気に高度を上げ、滑空するように敵に向かっていく。的に近付き、四つのミサイルに分裂する。それに対して、敵がフレア*を放ち、ミサイル3本がそれにつられていく。


 勇名は、右肩部無反動砲をミサイルから逃げそうな方向へむけて発射する。砲弾は見事Enm-4(エネミーフォー)に命中した。右肩部を吹き飛ばされたEnm-4は方向を変え、撤退を始めたように見える。


「ジョージさん、大丈夫ですか?」


 勇名はジョージ機に向けて専用回線で話しかける。


「ああ、おかげで助かった……うわぁぁぁ」


 ジョージの悲鳴と共に、海面が大きく盛り上がり、爆発する。A-8Sが爆散して、手や足が舞い上がる。


「ジョージさん? ジョージさん!」

「お兄ちゃん、潜行型だよ」

「……分かってる」


 潜行型機甲神骸(アーミス)。レーダーを通さない海中を移動するため、非常に厄介な相手だ。せっかく助けたと思ったジョージの死が、勇名を動揺させた。


「ジョージさんの(かたき)……永遠、対潜装備は?」

「対空、対水上装備しかないよ。今回の出撃では潜行型の存在は想定されてなかったから」

「そんな。ソノブイ*の1個もないのかよ」

「お兄ちゃん、まずは皆に危険を知らせないと」


「くっ、そうだな。羽佐間機(アルファツー)よりA部隊(チームアルファ)、及び管制塔Cコントロールチャーリー、潜行型の魚雷攻撃を確認」

A部隊(チームアルファ)了解」

管制塔Cコントロールチャーリー了解」


早ヶ瀬機(アルファリーダー)よりA部隊(チームアルファ)各員、不規則蛇行を開始。戦闘より魚雷回避を優先しろ」

「了解」

管制塔Cコントロールチャーリーより早ヶ瀬機(アルファリーダー)、対潜作戦は本艦と航空機で行う」

早ヶ瀬機(アルファリーダー)了解」


 勇名はやり取りを聞いて腹を立てる。


「クソッ、仇をとれないなんて……」

「対潜装備をしてないから仕方ないよ」

「分かってる、分かってるけど」


 勇名はそう言いながら、残っている敵に照準を合わせた。右操縦桿にある携行型無反動砲の引き金を引く。すぐに放たれた砲弾はEnm-6に命中し、背部ジェットエンジンの誘爆を起こさせる。


「あと4機……永遠、全部ロックオンしてブレットだ」

「了解……ロックオン。ブレット発射準備よろし」

「撃て」


 セラ機(アルファスリー)とドッグファイトを展開しているEnm-3に、またミサイルを放つ。勇名はさらに、追いつ追われつ交互に位置が変わっていく敵味方の動きを予測しながら右肩部無反動砲を連射する。


「当たれ、当たれぇ!」


Enm-3の右足に砲弾が命中し、足がちぎれ、敵が水面を転がりながら大破していく。


「イサナ君、今のはちょっと怖かったわ」


 クレール=セラ三尉が戸惑うように声を上げる。


「羽佐間、今のはフレンドリーファイア*ぎりぎりだったぞ。少し落ち着け」


 早ヶ瀬機からのホットラインに、勇名は少し冷静になる。


「すみません」

「味方がやられて気持ちがはやるのは分かる。でも、お前の砲弾で味方が死んだら意味がないだろう」

「はい、すみません」

「敵は間もなく撤退を始めるだろうが、深追いはするな」

「はい」


 早ヶ瀬三尉の読み通り、敵は撤退していく。勇名は追いかけたい気持ちがあるが、早ヶ瀬三尉の言葉を思い出し、こらえる。

 わだつみに帰投してパイロットスーツを脱いだばかりの勇名は、シャワーを浴びかけて蛇口を止める。

 サイドパイプの音が響く。


「わだつみ戦闘指揮所(CIC)よりわだつみ全部隊長、新体制についての説明を行う。速やかに統合幕僚監部まで出頭すること」

「新体制?」


 勇名は、新体制という言葉を心の中で何度も復唱する。


*MLS……ミサイル位置指示システムと、それに制御されるミサイルポッドやミサイルのこと。

*フレア……ミサイルをおびき寄せるための囮の光のこと。

*ソノブイ……海面に浮かせて使うソナー。主に潜水艦や潜行型機甲神骸を探すために用いられる。

*フレンドリーファイア……誤って味方を攻撃してしまうこと。


今回もお読みいただき、ありがとうございます!

仲間を守れなかった勇名の心情は伝わりましたでしょうか。

この作品をより多くの方に届けたいので、ブックマーク登録や☆評価へのご協力をよろしくお願いします。

また、「小説家になろう勝手にランキング」様にも参加しています。リンクを踏んでいただけたら嬉しいです。

これからも本作をよろしくお願いいたします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ