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番外編 元恋人詩乃と浮気相手の末路

 ふふふっ私は世界一の幸せ者だ。

 今の彼は、高級外車に乗っているイケメンだ。


 前の彼は悪くはなかったけど、いいとは言えない冴えない男だった。


 だから、繋ぎとして使ってやっていたら、ある日ストーカーみたいなことをしだしたので、そいつの会社にストーカーだと言って通報してやった。


 まじで笑える。

 あんなのが彼氏だったとか恥ずかしくで一生墓場まで持っていくしかない。


 それにしてももう、待ち合わせ時間なのに……・

 約束の時間からはすでに30分が過ぎている。


「悪い、遅くなった」

 そこにあらわれたのは国産でもトップクラスの車だった。

「いいの。私も少し遅れちゃって今来たところだから」

 少し待ったくらいで不機嫌になんてならない。


 お金持ちゲットのためには少しくらいの我慢は必要なのだ。

「それじゃ俺の家行くか」

「うん。翔くんの家すごく楽しみ」

「あまり期待するなよ」

「大丈夫だよ。男の子の一人暮らしって汚れちゃうもんだもん」


 これくらい言っておけばいいだろう。

 彼の車に乗り込むとセンスのない洋楽と甘ったるい芳香剤の臭いがする。

 洋楽をかければカッコいいとか思うなよ。

 それにこの芳香剤臭すぎる。


 思わず舌打ちしたくなるが、もちろん頬を無理矢理あげる。


 あいつ別れてから二か月。

 やっと5回目で彼の家に行くことになったのだ。

 このチャンスをものにするために我慢だ。


 駅前で待ち合わせをして、彼の家に向かっているはずなのに段々と郊外の自然の多い……いや森の中へと入っていく。

 わざと遠回りして景色のいいとこを見せてくれるような男ではないのはたしかだ。


「結構駅から離れているのね」

「自然が多い方が目にいいだろ?」


 意味のわからない返答にとりあえず愛想笑いをして返しておく。

 それからさらに10分、小さな集落の中にあるボロボロの家へとたどりついた。


「ここは……」

「俺の家だよ。いいだろ。裏には川も流れているんだぜ」

 スマホを見ると電波がきていなかった。

 ド田舎の今にも潰れそうな家とそれに似合わない高級車。


 なるほど。きっと家の中には最新家電とか……。

「まぁあがってくれよ」

「おじゃまします」


「あっそこ床抜けてるから気を付けてくれよな」

「えっ?」


 あがった瞬間ぐにゃっと柔らかい感触とともに床を踏み抜いた。

 よく見ると、小さな虫がわさわさと動いている。

「ヒッ」

「あぁこのあたりにはよくでるんだよ」


 私の思考は停止したまま彼へとついていくと、そこには映画などでみる昭和の世界が広がっていた。テレビなども薄型ではなくブラウン管のものを使用し、エアコンはカチャカチャとリモコンを手で回すタイプのものだった。


「ごめん、なんか急に体調悪くなったみたい。駅まで送ってくれる?」

「うちで休んで行けばいいじゃん」


 こんなお化け屋敷1秒だっていたくない。

 廊下に戻ると、着物姿の女の子が歩いていた。

 彼の妹だろうか。浮気相手にしてはずいぶん若く見える。 


「こんにちは、今日は寒いですね」

「こんにちは、夏にしては涼しいとは思うけど……」

「誰と話してるんだ?」

「あなたの妹さん?」

「はぁ? 前にも言ったが俺は一人暮らしだぞ」


 私は思わず家を飛び出した。

 玄関で靴を履き外にでる、何かに足をとられ思いっきり尻もちをつく。

「痛い! なによ!」

 なぜか玄関前には氷がはられており、それに足をとられたようだった。

 いくら山が涼しいからと言って氷がはるなんておかしい。


 ふと、屋根の上を見上げると小さな女の子がこっちを覗いていた。

「きゃぁーーーーー!」

 もう無理だ。1秒だっていたくない。


「帰る。こんなお化け屋敷いたくない!」

「お前、人の家をお化け屋敷とかふざけるなよ」

「なんで夏なのに氷がはってるのよ」

「どこに?」

「そこよ!」


 私が指差すとそこには普通の地面があるだけだった。

「あれ? だって氷で滑って」

「夏の時期に氷なんてはるわけないだろ。はぁ、まあいいや乗れ送ってやるから」


 彼は渋々運転席へと乗り、私も無言のまま助手席へと乗り込んだ。

 こんなんなら前の男の方がましだ。

 急に前の男と別れたことを後悔してきた。


 久しぶりに連絡をとってやってもいい。

 

 無言のまま走りだすとポツポツと雨が降り出し、すぐに土砂降りへと変わった。

 山の天気は変わりやすいなんていわれるが急激すぎるだろ。

 雷まで鳴りだし、彼は終始舌打ちをはじめた。


 怒りたいのは私の方だ。

 険悪な空気のまま車が山道をくだっていくと、眩しい雷の光と共に道路わきの大木に雷が落ちた。

 

 そして、そのまま私たちは崖の下へと転落してしまった。

 幸いにも命に別状はなかったが、彼の車は大破し、保険に入っていなかったことで残ったのは借金だけだった。


 そして私の方は、片足を失いながらもなんとか生き延びることができた。

「詩乃さん本当に奇跡ですよ。普通なら即死してもおかしくないですから」

「もう絶望しかありません。これからどうやって生きていけば……」

「何をおしゃっているんですか。これからお母さんになるのに」


「はい?」

「妊娠してますよ。2カ月です」


 私の転落はここから始まった。 

最後までお読み頂きありがとうございました。

かなりつ先生の次回作はカクヨムでの投稿予定です。

ぜひそちらもご覧ください。

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