孤独な幽霊は僕に話しかけてきた。でも僕は彼女にひどい言葉をなげかけた
僕は一度現実を受け入れるためにゆっくりと扉を閉め深呼吸をする。
何かの見間違いだ。可愛い女の子がいたらいいなんて思っていたからきっとカーテンか何かを見間違ったに違いない。
僕は閉めた扉をゆっーくりと開けてみる。
そこにはカーテンもなければ女の子もいなかった。
「はぁ、疲れているとは言え誰もいない部屋に女の子が見えるなんて、早く寝た方がいいな」
「私が……見えるんですか?」
どこからか声が聞こえる……僕が見ていた方とは逆側だ。ゆっくりと振り返るとそこには半透明の女の子が座っていた。ここまではっきり見えるともはや立体映像だろうか?と思ってしまう。
もしくは風船とか。
今流行の電装をつかったオーナーのいたずらとか。
僕の頭の中にある知識を総動員しても、答え何てでるわけはなかった。
また、扉をゆっくりと閉めてどうするかを考える。あのまま彼女が何もしないのであればこの部屋を貸し出してもいい。
どうせ一人暮らしなのだから、こんなに広い家は必要ない。
だけど……もし話せるなら……。
もう一度、ゆっくりと開ける。彼女はとても可愛く、一瞬ドキッとしてしまう。
相手は幽霊だというのに僕は何を考えているのだろうか。
だけど、彼女の顔を見た時から……いや、これはきっと幽霊を見たドキドキだ。恋のドキドキと恐怖のドキドキを一緒にしちゃダメだ。
吊り橋効果ときっと同じことだろう。
女の子と同じドキドキを共有すると恋に落ちやすいというのがあるが、これはきっとそれの一種に違いない。
僕は思いきって部屋の中に入る。
女の子は僕に興味がないのか、僕の方をちらりとも見ない。
そのまま部屋の中に入って、彼女から一番遠いカーテンと窓をあけていく。彼女はまったく反応をしない。それにしても本当に幽霊が見えるとは思わなかった。
おかしな話だが、ビックリするくらい半透明だ。
そして、彼女の前を通ってカーテンと窓を開ける。彼女は僕に興味がないようだったが、僕は一瞬彼女の方に視線を落としてしまった。
正面から見つめる彼女もやっぱりとても可愛かった。
僕の動きは不自然に固まってしまう。
「もしかして、私のこと見えるんですか?」
また彼女から話しかけてきた。どうすれば正解なのだろうか。反応しない方がいいのだろうか? いやでも……。そして僕からでた言葉はとんでもない言葉だった。
「ここから出て行ってもらってもいいですか?」
「わかりました」
彼女は理由も何も聞かずに本当に部屋からでて行ってしまった。
これで除霊が完了してしまったのだろうか。
「えっ? 本当にでていってくれるの?」
誰もいなくなった部屋を見回し、誰に伝えるわけでもなく言葉だけが部屋の中に響く。
彼女が家からでると、ちょうど雨がポツリ、ポツリと降り出した。
僕は彼女を一端忘れて急いですべての窓を閉めていく。
雨はやがてザーッと音をだして降り出した。
僕が1階へ織で窓を閉めていると、家から見える自販機のところに数人女子高生らしき集団が来た。いきなりの雨でいったん雨宿りをしているようだ。自販機の横には彼女が体育座りをしている。もちろん雨には濡れてはいないが、誰にも彼女は見えていないようだった。
本当に僕以外誰にも見えていないらしい。