ベアの家に遊びに行ったらそのまま雪山送りにされた。責任者気絶中
「ケルはしゃぎすぎないようにね」
「わうっ!」
僕たちは今ベアの魔法の家にやってきていた。
ゆかのために魔法の服を作ってあげたが、ゆかがベアにもおそろいの服をプレゼントしたいといいだしたのだ。
アヤにベアの服をお願いしたいというとすぐに作ってくれ、そして今日の訪問になった。
ついでに、ゆかが新しく仲間になった子たちもベアに紹介しようということで今日は全員で遊びにきている。
ちょっと予想外だったのだが、ベアのところのケルとマシロがかなり仲良くなっていた。
といっても、ケルベロスの頭の一つで氷を操る頭だけだったけど。
同じ氷属性同士なにか通じるものがあるのだろう。
ケルの頭は炎と氷と風を操ることができるらしい。
水じゃないのかと思ったら、水も炎と氷のケルベロスが協力することでできるみたいだ。
なんとも便利な魔物だ。
マシロとケルは氷の円盤を使って一緒に遊んでいる。ケルはかなりの長距離を走り、マシロは氷の魔法で円盤を作って遠くに打ち込んでいる。
「マシロも本気になって遊ぶのはいいけど、気を付けてくれな」
マシロは大きく頷いているが本当にわかっているのか? と思ってしまうくらい張り切っている。
他の女性陣は女性陣で楽しそうに服をアヤにお願いしてどんどん作ってもらっている。
もうアヤの即席の服販売所といってもいい。
どうやら作って持ってきた服だけでは足りないらしい。
こないだ優勝賞品としてもらった魔法の生糸は魔力があればどんどん品物を作れる優れものだった。アヤはかなり魔力があるようで相性抜群の道具だった。
まぁゆかとベアが楽しそうならいいことだ。
僕はというと……新しい仲間を紹介してからといって特にやることはない。
ハクビが僕の膝の上に座って美味しそうに紅茶を飲んでいる。ライガとテンマは思いっきり飛べるベアの家が気に入ったのか空高くまで飛び上がっている。こっちからは見えないが、呼べばきっと戻ってきてくれるに違いない。
「ちょっと、もっくんどっちが可愛いかちゃんと見ていてくださいよ」
「いや、ゆかにはこっちだって」
ベアは俺に見せることよりも、自分がゆかのコーディネートをしたいタイプらしい。
「でも、もっくんがこないだ緑色も似合うって言ってくれたんですよ」
「こいつのセンスなんてあてにならないって。ほらこの青をいれるとすごい爽やかになる」
ここで適当な返事をしてひんしゅくを買いたくないため、できるだけ空気に徹しながらも話を聞いてますアピールをする。
平和なのはいいことだ。
「うーん。ちょっとこれじゃあ足りないわね」
ベアは何か足りないといっては首をひねっている。
それにしても……なんかここの空間が寒くなってきている気がする。
冷房かけすぎじゃないだろうか。
「コーン」
ハクビが狐火を使って僕のまわりを温めだしてくれた。よく気が利く子だ。でもなんで……僕がまわりを見渡すと、ベアのいちめんの花の世界が少しずつ氷漬けになっていた。
「なによこれ!」
ベアも異変に気が付いたようだ。
ベアの怒鳴り声にケルとマシロが視線をそらす。二人が遊んでいた雪魔法がどんどんと室内を凍らせたらしい。それにしてもこれはやりすぎだろう。
どれだけ二人は魔力があまっているというのだろう。
「あんたたち……私がせっかく植えた花を全部氷漬けにして……許さないんだから! マジカルゲート!」
ベアの目の前に空間の裂け目ができる。
「これではんしぇい……えっちょっと……なんで!?」
ベアが作った空間の裂け目にベアが吸い込まれていく。どういうことだ? 自分で作った魔法に自分で吸い込まれるって。
その吸引力は段々とあがっていき、僕は逃げようと立ち上がったところで思いっきりハクビと吸い込まれた。ベアの近くにいたアヤが巻き込まれ、マシロは僕が吸い込まれるとほぼ同時に猛ダッシュして躊躇せずに穴の中に飛び込んできた。
「イテテっ……寒っ! なんだここ!?」
そこは辺り一面、雪で覆われ風は荒れ狂い吹雪いていた。
先に飛ばされたベアは飛んだ瞬間頭でも打ったのか意識がない。アヤとマシロ、それにハクビには怪我はないようだ。
「急いで避難しないと全滅だ。どこか洞窟か、もしくは雪に穴を掘って風と寒さから避難しよう!」
「コーン!」
ハクビが大きな声で鳴く。その音の反響などを聞いてから狐火をだして尻尾で進む方向を指し示す。そしてゆっくりと歩き出した。どうやらついてこいといっているようだ。
僕のまわりに狐火を飛ばしてくれているため少しだけ暖かいが、寒さを完全にガードできるわけもなく、長くいれば死ぬ。
僕は意識のないベアをおんぶしていく。
吹雪で全然方向がわからない。時間的感覚も段々とうすれていく。
この世界にきてどれくらいたったのだろうか。とにかくハクビについていくしかない。
苦痛の中で意識が朦朧とし思考が停止する。
目の前のことにとにかく集中する。
ハクビの炎についていく。
そしてしばらく歩いたところに洞窟があった。
中は結構広い。とりあえずこの風を避けるのにちょうどいい。
「ハクビ、ナイスだ」
吹雪にさらされていたせいで身体の震えが止まらない。ハクビが狐火を使って温めてくれるが全然寒さがおさまらない。
これはまずい。ベアの唇も紫色に変わっている。
なんとかしないと。
「マシロ、悪いんだけど、入口を少し風が入ってこない程度に氷で閉じられるか?」
マシロは頷き、一瞬で氷魔法を使って入口を塞ぐ。
これでかなり楽にはなった。あとは何か燃やすものでもあれば……。洞窟の中を見回してみると焦っていたのでよく見えなかったが中には結構草や枝などがあった。
一酸化炭素中毒には気をつけなきゃいけないが、とりあえず暖はとれそうだ。
「ハクビここに火をつけてくれ」
ハクビの魔力がどれくらい使えるかわからないが、節約しておいた方がいいのは間違いない。
「コーン」
少し太めの木に火が移り、少しずつ温かさがでてくる。あとは……。
アヤに何かを作ってもらおうと思っていると、アヤはすでにテントと寝袋のようなものを作ってくれていた。こないだ優勝賞品としてもらった魔法の生糸がさっそく役にたったようだ。
「おりっ!」
アヤは地面の下に敷くかなり厚手のカーペットを作り、身体に羽織るタオルケットにマフラーも作ってくれた。しかもかなり温かい。
普通だったら絶対に乗り越えられなかったが、なんとかなりそうな気分になって来ていたが僕だったが、実際は思った以上に大変だった。




