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アヤの潜在能力と大会への出場

「こうやって改めてアヤちゃんの裁縫の仕方を見ると独特な服の作り方をしますよね」

 ゆかはそう言いながらアヤが服を作っているのも見ている。


「そうなのか?」

「そうですよ。普通はもっとゆっくりですし、こんな風に空中で裁断することなんてできないんですから」


「だって、すごいなアヤ。褒められているぞ」

 アヤは少し照れているように頭をかき、さらに高速で裁断していく。

「本当にすごいですね。あっ……」


 あまりに調子に乗せすぎたのか、スピードを出しすぎたのか机に横一文字の大きな傷がつく。

 アヤが間違って傷をつけた次の瞬間には両足を折り、そのままジャンプをして頭を地面に叩きつけていた。かなり派手な音が鳴る。僕はその流れるような姿を見ていた。

 ジャンピング土下座だ。


 あれは通常の人がやると膝を強打してしばらくは立ち上がれなくなる奴だ。

 僕は慌ててアヤを起こし、膝をなでてあげる。

 人形だから痛みは感じないのかもしれないけど、感じていたらめちゃくちゃ痛そうな音がしたからだ。


「大丈夫だよ。もう、土下座なんて一体どこで覚えたんだい? それよりも怪我はない?」

 僕が優しく声をかけたのでアヤは安心したのかゆっくりと頷く。

「ここの机とかも前の人が置きっぱなしにしていったものだから、傷つけても大丈夫だよ。もちろん、もったいないから無理に傷をつける必要はないけどね」


 アヤは何度も僕に頭を下げてくるが、怪我さえなければ傷がつくぐらい問題はない。

「おりっ」

 次は気をつけますといったのか、もう一度僕たちに頭を下げる。


「ゆかも大丈夫?」

「私はもともと霊体ですから大丈夫ですよ」

「霊体なのは知ってるいけど、服はアヤが作ったものだからね。アヤなら触れるわけだし」


「たしかにそうですね。でも、見た感じどこも切れてなさそうなので安心してください」

 ゆかは自分の身体を一周みてまわる。

 本当なら鏡などを見ればいいのだろうけど、残念ながらゆかの姿は鏡にはうつらない。

 やろうと思えばできるってはなしだが、無駄に霊力を使うとのことだった。


「それにしてもアヤはすごいよな。他の織鬼にも負けてないと思うんだけど」

「そうですね。負けていないと思いますよ。負けていないどころかむしろ上位の方だと思います。この生地魔力が上がっているので、ここだけの生地でパワースポットになりそうですもん。これだけ力があれば、織鬼の刺繍大会にでても上位入賞狙えるんじゃないですかね」


「えっ織鬼の大会があるの?」

「ありますよ! 霊界は娯楽が少ないですからね! 色々な大会があります。それに優勝したり入賞すると面白いお宝がもらえたりしますよ。ちょうど今度の週末にあったような気がします」

「週末に!? それじゃあ出てみるか?」

「おりっ!!」


 アヤはやる気十分だといった感じでシャドウボクシングのようなことをやっている。

「順位は気にしなくていいからね。でも今自分がどれくらいのレベルなのかを知るのは大事なことだからチャレンジすることに意味があると思うよ。織鬼の技術をあげるにはどうしたらいいの?」


「技術をあげるためには……どうすればいいですかね? 元々織鬼には裁縫をする才能があるみたいですけど、それを高めるにはやっぱりひたすら裁縫でしょうか?」


 ゆかにもどうやれば技術があがるのかまではわからなかった。

 でも、それなら現代人としてのアドバンテージを使おう。

「僕にいい考えがあるよ」

 僕はスマホを取り出し、動画サイトで裁縫と入力する。そこには大量の裁縫動画があった。


「妖怪で動画教材を使って勉強している奴なんていないだろうからね。これで一緒に勉強しようか」

 アヤはがぜんやる気がでているようだった。僕はアヤの前にスマホを置いて使い方を教えてあげる。


 アヤは時々止めては再生ボタンを押し、自分でイメージトレーニングをしているのかよくわからない動きをしている。

 実際に目の前でやってもらってもどうやって動いているのかわからないため、アヤの頭の中のイメージ理解しようとしても難しい。


 だけど、アヤのやる気が十分あるというのはわかる。

 織鬼は身体が大きい方が裁縫の技術は高いと言われていた。

 技の技術をあげてくたびに身体も大きくなるらしい。


 ただ、彼女は織鬼の中でも身体が一番小さくて売れ残りとしてずっと置かれていた織鬼だった。

 アヤには生地を幽霊横丁で安く買ってきてから、家の中の絨毯やカーテンなども作ってもらっている。


 床の絨毯はまるでペルシャ絨毯のような手織りで作られた綺麗な模様で作られている。最初は服だけかと思っていたが、段々と難しいものでも作ることができている。

 難しい刺繍などもあっという間に完成させるアヤの技術はすごくて見る人を感動させる力がある。


 ここの龍脈の力をそんなことに使っていていいのかわからないが、彼らにとってほぼ無限にエネルギー最高の場所らしい。

 どれくらい経験を積めば大きくなるのかはわからないが、アヤの身体は全く大きくならなかった。もしかしたら成長しているのかもしれないけど、あまり身長は変わってはいない。


 まぁ成長しない以上は気長に待つしかないんだけど。

 それからアヤはほぼずっと動画での勉強と実践を繰り返していた。最後の方では動画を4倍速にして確認している姿はもはや熟練の職人のようだった。


 そして、週末になり織鬼の大会に参加することになった。

 ちなみに、僕はその間就職活動を毎日していたが、全部の会社からお祈りメールが届いていた。アヤよりも僕の心が先に折れそうになっていたのは秘密だ。

もっくん「就職活動が上手くいかない」

ゆか「大丈夫よ。もしもの時はアヤの作った作品を売って生活すればいいの」

もっくん「いや、だって」

ゆか「いやとかだってって言うなら就職決めてくれる? うちにはこんなにペットがいるのに……」

就職落ちすぎて嫌な夢を見たもっくんだった。


少しでも面白ければブックマークと評価よろしくお願いします

★★★★★


同作者作品大絶賛発売中です。近くの本屋でぜひ手に取って頂ければと思います。

『幼馴染のS級パーティーから追放された聖獣使い。万能支援魔法と仲間を増やして最強へ!』


絵転さん

挿絵(By みてみん)

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