表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
24/52

保険のあいがたみを知った異界での診療料金

「この雷象はどうやら群れから追い出されたようなんだ。本来雷象は単独へ生きられない魔物でな、この子も放っておけば、あと数日の命だろう」

「なんでそんな群れから追い出されたんですか?」


「まぁ人間と同じようなものだ。人も生活習慣や見た目が違うというだけ全員とは言わないが差別をするだろ? この雷象というのは本来綺麗な黄色と黒の魔物なんだよ。それにこんなに大きな羽はない。ある種の突然変異なんだろうな。あれをとってくれるか?」


 ドクターガッツは1冊の本を指さした。背表紙には何か文字のようなものが書かれているが、さすがに読むことはできなかった。

 僕が本を渡すと、ドクターガッツはその本をめくっていく。

 古びた白黒の内容かと思っていたら、中は意外とカラーで書かれていた。

 そしてあるページをひらく。


「これだな。ここを見てくれ」

 ドクターガッツがしめしたところには黄色と黒のまだら模様の羽の生えた象の姿があった。

 ここにいる雷象とは似ても似つかない。


「突然変異っていうのはどうしても避けられてしまうものなんだよ。もちろん、上手くいく時もあるけどな。この子は適応できなかった」

「それで僕は何をすればこの子を助けてあげることができるんですか?」


「君がどこまでこの狭間の世界を理解しているかはわからないんだが、この狭間の世界というのは非常に不安定な世界なんだ。だから、いろいろなものに繋がりを求める。少し難しい話だがこの世界は誰からも認識されなくなった時に本当の死を迎えるんだ」

 認識されなかったとき……ゆかなどはもうすでに死んでいる。幽霊でしかないのは間違いない。ゆかの場合は霊力を龍脈からとっているため現実の世界にいられるといっていた。

 じゃあ他の魔物たちは……? それが、今言っていた認識ってことなのだろか?


「まぁ難しいことは考えなくていい。この狭間の世界では死という概念が複数あるということだ。肉体的な死だけではなく、精神的な死や、まわりから忘れられることで死ぬこともあるってことだ。この子の場合まだ生まれたばかりなのに、誰からも認識されなくなっている。その認識されるというのも誰でもいいわけではないんだ。繋がりが強くなければいけない」


「それは結局僕にどうしろっていうんですか?」

 話を聞いては見たがいまいち要領を得ない解答だった。

「率直に言おう。この子を助けたければこの子を君の眷属にしてやって欲しいんだ」

「眷属……ですか?」

 眷属と言われてもぱっとなにもでてこない。なんか主従関係みたいなことってことだとは思うけど。


「この子が眷属になるってことは、こっちの世界に君の魂が近づくってことだ。まぁもうここに来れるっていうだけで強い魂があるのは間違いないけどね」

「それ以外に何かデメリットはないんですか?」

「うーん。あるとするなら……」


「あるとするなら?」

「つながりが強くなるくらいだな。君はこの子が死ぬまで面倒をみなければいけない。途中で投げ出すとかはできない。とはいえ、人間界ではこの子を見ることができる奴なんてほとんどいないだろうけどな。まぁ幸いには君には他に仲間がいるから君とつながりが強くなれば、結果的に君が死ぬ頃には他の仲間とも繋がりが強くなってこの子も長生きできるようになっているだろう」


「わかりました。それでどうすれば助けられるんですか?」

「君の血をこの子にあげて欲しい」

「いいですよ。ナイフとかで切ってあげるだけでいいですかね?」


「ナイフならそこに」

 僕はドクターガッツ指さしたナイフを受け取ると人差し指にナイフを走らせる。ナイフの触れた場所から赤い血が広がっていく。

「血をそこの器へ」

 僕が器に血を入れると、そこから波が広がるように部屋に黄金の光が広がる。


「なんてこった。こんなに力を持った人間もいるんだな。いいものが見れた」

 何をいっているのかわからないが。ドクターガッツは部屋に満ちる金色の光に見とれていた。

「血を皿にうつしたのはいいけど、そのあとは?」


「あっ……悪い。もう大丈夫だ。その器の水を雷象に飲ませてやってくれ」

 器の中には血を入れたはずだったが中には黄金色の水が輝いていた。

 僕は言われたまま雷象を起こして口に含ませる。雷象の身体が金色に光、そしてゆっくりと目を覚ました。


「大丈夫か?」

「ぞう」

 まさかの変な鳴き声だった。パォーンとかをイメージしていたら拍子抜けしてしまった。だけど、先ほどまでぐったりとしていたのが嘘のように元気になり自分で身体を起こすことができている。


 器を僕が下に置くと、そこに織鬼、マシロ、テンマがその水に分け合いながら口に含む。

「お前らまでそんなの飲んで大丈夫なのか? 腹を壊すなよ」

 マシロは僕の方を見ながら優しく微笑み、そして一気に飲み干した。

 みんなの身体が一瞬光る。


「すごいな。この子たちは君と相性がいいらしい。さて、それじゃあ治療費の方を頂こうか」

 僕はそこで今日一番の値段を請求され一度人間界にお金をおろしにいった。

 保険のきかない異界の治療費は馬鹿にできない金額っていうことだけは間違いなかった。

 二度と異界の病院にはかかりたくない。

もっくん「治療費がやばい」

ゆか「あの値段はひいたわね」

もっくん「電気代で回収は……」

ふと本末転倒という言葉が頭をよぎったがそれは言うのをやめた。

少し大人になったもっくんだった。

少しでも面白ければブックマークと評価よろしくお願いします

★★★★★


同作者作品大絶賛発売中です。近くの本屋でぜひ手に取って頂ければと思います。

『幼馴染のS級パーティーから追放された聖獣使い。万能支援魔法と仲間を増やして最強へ!』


絵転さん

挿絵(By みてみん)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ