えっ? 彼女の浮気現場に遭遇したらストーカーだと言われたんだけど嘘でしょ?
完結済みです。
あれって……もしかして僕の彼女の詩乃だろうか?
僕が住んでいる家の岡石駅から三つ離れた駅前のオシャレな喫茶店で彼女の詩乃が知らない男と、とても楽しそうにお茶をしていた。
僕の前であんな笑顔になっていたのはいつだろうか。あまり記憶にない。
どうしよう。もしかして浮気だろうか?
いや、そんなことはあるわけない。僕の彼女に限ってそんなことない。
神様にだって誓える。絶対にない。
だけど……よけいなことだとわかっていながらも聞かずにはいられなかった。
僕はスマホの無料連絡アプリのロインで彼女へ連絡してみた。
『今何してる? 家の近くまで来たんだけど家に寄ってもいい?』
『ごめんっ! ちょっと今大学の頃の友達とごはん来てるんだ』
『あっごめんね! それってもちろん男じゃないよね(笑)?』
僕は冗談交じりに聞いてみた。できれば素直に男って言ってくれた方が安心する。
『えっ? 私のこと疑ってるってこと? 女の子だよ! マキっていうすごく可愛い子。写真を送ってあげるね!』
僕が見ている喫茶店には僕と違って筋肉ムキムキで色黒の爽やかイケメンが見える。
髪の毛は短髪で少し茶色がかっていて、爽やかな水色のシャツを着ている。
中世的な女性だと言われればそう見えなくもない。
決して可愛い分類には入らなさそうだが、女性と男性では可愛いの基準が違うのは仕方がない。
決して僕が無理にそう思っているからってわけではないと思いたい。
ただ、どうしてだろう。スマホを握る手が震えている。
スマホを握りしめてそんなことを考えていると彼女からメッセージが届く。
『マキとごはん食べてるの。この子だよ! めっちゃ可愛くない!?』
送られてきた写真には確かに可愛い女の子が写っていた。
なるほど。僕が見ている女の子が彼女に似ているだけで、きっとあの子は彼女じゃないんだな。それか、双子の姉とか……いや、一人っ子って言っていた覚えがある。
それじゃあ生き別れだろうか?
でも、僕が買ってあげた服を着ているなんてことはあるだろうか。
僕は彼女が送ってくれた写真の撮影情報を確認してみる。
そう、みんなが何気なく送っている写真にはその撮影情報などが残っていることがあるのだ。だから今撮影されたのか、何日に撮影されたのかがわかる。
僕は本当であって欲しいと思い写真の撮影情報を見てみる。
うっ……それは1カ月以上前の撮影日だった。
そりゃそうだ。夏も終わりかけの少し肌寒い日に半袖で出歩いている女の子なんているわけがない。
こんな可愛い間違いをしてしまう詩乃は本当にお茶目さんなんだから……動揺しすぎて思考がめちゃくちゃになっている。
なんだお茶目さんって。そんなこと言ってる人最近見たことがない。
でも、これで確信を持てた。少なくとも、彼女は今マキさんという女の子とは会ってはいないようだ。
僕はそっとスマホを鞄の中にしまった。
そう、見なかったことにすればそれですむ。別に浮気って決まったわけではない。彼女はたまたま大学の友達と会って、お茶をしていただけなんだ。
そう、すべてを知らせるのが時にいいとは限らないって言うじゃないか。
さて、どうしようかな?
今日はこのまま家に帰って布団の中にでも潜って寝ようかな。
僕がその場からそっと離れようとすると、喫茶店から詩乃がこっちに走ってくる。
どうやら、詩乃は僕のことを見つけてしまったらしい。
どうしよう。今から他人のフリをすれば騙せるだろうか。
僕は、視線を外してそのまま駅の方へ歩き出すと後ろから声をかけられる。
「なんで……なんでいるの? まじで最低なんだけど」
あっ完全に僕だってバレている。もう逃げられない。ここで黙って逃げると悲惨な未来しか見えない。僕は詩乃のことが好きなんだから。
「いや、たまたま仕事でこっちに来てて、他人の空似かと思ってたんだよ。ほら写真のマキちゃんも1カ月前の送ってくれていたし。きっと心配させたくないのかと思って」
僕は慌てて余計なことまで言ってしまった。こういう余計なことが彼女を怒らせる。僕のコミュニケーション能力をもっとあげたい。できれば今すぐにでも。
「はぁ? まじでありえない」
「詩乃どうしたんだよ?」
どうみてもマキちゃんじゃない太い声をしたイケメンが詩乃を追いかけてやってきた。
見ればわかるだろ。修羅場中なんだからお前、少し空気を読め!
なんて思ったところで言えるわけがない。
「たーあちゃん聞いて、この変態ストーカーが私のことをずっとつけまわしてくるの。本当に気持ち悪くて」
「えっ? 何を言ってるんだよ」
「お前、俺が好きな詩乃になんてことしてくれてるんだよ!」
僕は、そのまま顔面にすごい衝撃を受け、一瞬でそのまま空を見上げることになった。
バリッと背中に入ってたPCが壊れる嫌な音がする。きっと画面あたりがいってしまったんだろうな。ビルの隙間から見える青い空がきれいだ
「次、その顔を詩乃の前に見せたらただじゃおかないからな」
そんな捨て台詞を言われなくても、もう二度と顔なんて見ることはできない。
だって僕は詩乃のことが大好きだったんだから。
浮気されていたって、心の中はぐちゃぐちゃで今にも吐きそうなくらい辛かったけど、詩乃の嘘を暴いてしまったけど、それでも信じようとしてしまうくらい頭の中がごちゃごちゃでどうしようもないのに。
僕は駅前の広場でそのまま空を見続けて泣き続けた。
この世界から見れば僕の不幸なんてたいしたことではないってわかっているけど、それでも悲しくて仕方がなかった。
そして翌日僕が会社に行くと僕は彼女からの通報でストーカー男となっていて会社をクビになった。
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